人は、「自分自身の得た実感」に非常にこだわってしまう時がある。
例えばある会社の経営者は、アンケートや売上のデータなどの分析から、顧客の嗜好が明らかに3年前から変化していることが分かったにもかかわらず、頑に商品の仕様変更を拒んだ。
その経営者は「オレがお客さんのところに行って見た実感からすると、今の路線は正しい。変更の必要はない」と言っていた。
アンケートや売上のデータが、経営者の間違いを示していたとしても、彼は
「アンケートや市場調査なんて、本当のところはわからない。自分の現場での実感を大切にしなければダメだ。」
といって聞き入れようとしない。
結果的に、その後の業績低迷により社長交代が起き、ようやくこの会社は持ち直した。
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・実感を大切にしよう
・直接見聞きした話でなければ、信じられない
・データよりも現場感だ
という言葉を、なぜ無批判に受け入れてはならないのか。
例えば、
「太陽は地球のまわりを回っている」といっている人が隣にいると想像して欲しい。
彼は「データがいくら示そうと、オレの「実感」はやはり、太陽が地球の周りを回っている」と言う。
この場合、実感が正しくないことは明らかだ。
だが、朝日新聞が調査したところでは、公立小の4年生から6年生348人のうち、42%が「太陽は地球のまわりを回っている」と答えたそうだ。*1
もちろん子どもたちは地球が太陽の周りを回っていることを知識として習った上での解答である。しかし一部の子供は素直に実感を重視してしまうのである。
むろん、大人でも「実感」は大きな影響力を持つ。例えば、次の問題だ。
バットとボールは併せて1ドル10セントです。
バットはボールより1ドル高いです。
では、ボールはいくらでしょう?
すぐにひらめいた数字は誰でも10セントだろう。それが人間である。だが、それはもちろん間違いで、正解は5セントだ。
しかし、間違えても恥ずかしがることはない。なにせ、この問題に答えたハーバード大、マサチューセッツ工科大、プリンストン大の学生の50%が間違った答えを出しているのだから。*2
これは、頭の善し悪しの話ではない。
人間とは、感覚にしたがって思い込んでしまう生き物なのだ。
もちろん、実感は正しい時もある。だが実際には、どんなに賢い人のそれであったとしても、それほど無条件に信用に値するものではない。
これらの事実を踏まえて考えると、明晰な思考に何より必要なのは、「自分自身の実感」の否定である。
「自分の実感とは逆の仮説を立てる人」
「自分の馴染みのある考え方とは逆の結果を示すデータ」
「自分の意図したこととは別のことが起きている事象」
こういったことに着目しなくてはならない。「反証」を探ることが、真実にたどり着く道である。
米ゼネラル・モーターズの偉大なCEO、アルフレッド・スローンは最高レベルの会議において、出席者全員の意見が一致していると、こう述べたという。
それでは、この問題について異なる見解を引き出し、この決定がいかなる意味を持つかについてもっと理解するための時間が必要と思われるのでさらに検討することを提案したい
ピーター・ドラッカーはこの発言を見聞きし、スローンについて次のように述べている。*3
スローンは直観で決定を行う人ではなかった。意見は事実によって検証すべきことを強調していた。
しかも結論からスタートしそれを裏付ける事実を探すようなことは、絶対に行ってはならないとしていた。その彼が、正しい決定には適切な意見の不一致が費用であるとしていた。
だが、現実的には多くの会社でおこなわれているのは逆のこと、すなわち
「自分の意見を強化する意見」ばかりを集め、
「自分に有利なデータ」ばかりを見て、
「自分に賛同してくれる人だけ」に会いに行く。
その結果、「実感」は強化され、いつの間にかそれが正解となる。
だが、残念ながらこれでは質の高い思考はできない。
自分の実感ときちんと距離を取り、時に否定もできなければ、ブレークスルーはない。でなければ、「太陽が地球の周りを回っている」という小学生と変わらない。
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*2
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