ある友人が上司の会議の進め方についてこんな愚痴をこぼしていました。

 

「うちの上司さ、とにかく会議が好きなんだよね。「ミーティングしたいんだけど、ちょっといい?すぐ終わるから」とか言ってチームのメンバー集めるんだけど、ちょっとで終わった試しがない。」

 

私は会社員時代を振り返りながら、”上司の気まぐれミーティング”に巻き込まれ、よく業務が中断されたなぁと懐かしく思い出していました。

 

「いきなり「今月沢山起きてるクレームについて、どう思う?」とか聞かれてさ。別に考えてないわけじゃないけど、突然そんなこと聞かれても急に答えられないよね。

とりあえずみんなその場で思いつくことを言うんだけど、なんか、途中でよくわかんなくなっちゃうんだよね。で、みんながワーワー喋るから話がとっちらかっちゃって、最後は上司が強引に自分の結論に持っていく。」

 

確かに、そんな感じの会議に何度か出くわしたことがあります。

というよりファシリテーションが下手な上司の会議は、いつもそんな感じでした。一応こちらの意見を求めてくるのですが、基本的には受け入れない。本人の中ですでに結論は出ており、最後はそれをみんなで黙って聞く。メンバーは「ハイ、わかりました」と渋々頷き、無理やり会議が終了する…。

こういった会議の後は、いつもどこか腑に落ちず、モヤモヤした気分になっていました。半分は上司の強引な進め方に対する不満で、もう半分は「なぜ話がかみ合わずに、議論がとっちらかっちゃったんだろう」という疑問からくるモヤモヤです。

 

会議をうまく進めるコツは論点を見つけること

会議を回すのが下手なひとがいる一方で、ファシリテートが上手いどころか、会議を使って部下を育成までしちゃうすごい上司もいます。

私がコンサル会社に勤めていた時のAさんも、そんな一人です。

他の上司のミーティングは、たいてい成績の悪い営業パーソンを数字とロジックで激づめし、「お前らもこうなりたくなければちゃんとやれよ」という公開処刑スタイルでした。会議後に残るのはとてつもない疲労感とモチベーションの低下です。

 

しかしAさんが開くミーティングの後は、なぜか爽快感が残ります。

「しっかり議論したぞ。あの人の意見は目から鱗だったな。チームの課題がわかったぞ。次にやることが見えてきた!」みたいな感じで、ヤル気もみなぎり、少しパワーアップした感覚になります。

あまりに実のある会議なので、ある時会議のコツは何かと聞いてみました。すると彼は「論点を明らかにすることだ」と言いました。

確かにAさんは、定例会議の冒頭で必ず論点を明確にしていました。途中で話がごちゃごちゃしてくると、いつも誰か(たいてい傍観している新人)を名指しして「この会議の論点はなんだ?」と突然質問するのです。

口頭だけで共有できない場合は、ホワイトボードに論点を書き出させます。そうやってその場にいる全員が、常に論点に沿った議論ができるように軌道修正をかけていました。

 

「論点がずれているから話がまとまらないんだよ。」

確かにおっしゃる通りだけれど、この論点を見つけて明らかにするという行為は、誰もが簡単に出来ることなのでしょうか。

 

論点とテーマをごちゃごちゃにしない

そもそも論点とは一体何なのでしょう。

 

経営コンサルタントで『論点思考』の著者である内田和成氏は、論点を「解くべき問題」と定義しています。解くべき問題は一体何か。言い換えれば、我々がどのような問題意識を持っているか、ということです。

例えば会議のテーマが”売り上げアップ”だったとします。売り上げアップはあくまでテーマであって、この時点ではまだ論点ではありません。このテーマに問題意識が加わることで、論点となります。

営業会議の場で、ある人が「売り上げを上げるためには、他社との差別化を図った新たな商品を開発すべきだと思います」と発言したとします。そしてもう一人が「いや、新規顧客を開拓するためには、顧客に響くような広告を打つべきだと思います」と発言します。

 

さて、二人の論点は合っているでしょうか、それともずれているのでしょうか。

 

この二つの意見は、大枠で言えば売上アップという同じテーマで議論をしているのですが、発言者の問題意識は異なっています。

前者は「今の商品では競合に勝てないので、そのためにどうすれば良いのか」という問いから始まっているのに対して、後者は「商品自体に問題はないが、今の広告の打ち方では商品の魅力を十分に伝えられていない」という問題意識を抱えています。

このように「〜について」という曖昧なテーマの中で議論を始めてしまうと、論点がずれているのに気づかないまま、議論を進めてしまうことがあります。

解決すべき問題、つまり論点が正しく設定されていないうちに、正しい答えは出てきません。論点の設定の仕方こそ、議長の力量が問われるところです。

 

どうすれば問題意識を持って会議に臨めるか

さて、そんな風に話すと「上司(議長)のプレッシャー半端ないな」と感じて、誰も会議をファシリテートしたくなくなっちゃうかもしれません。

しかし、会議は参加者全員の共同作業。問いの設定を議長に丸投げするのではなく、参加者自身も「解くべき問題は何なのか」を意識することが重要だなーと、自省も込めて感じます。

って言われたって、論点なんか見えてこないよという人は、日頃の問題意識が低いか足りないかのどちらかなんじゃないかと思います。

問題意識が低いというのは、目線が低いということ。

営業パーソンはせいぜい目の前の売り上げをどうしようとか、凡ミスをどうリカバリーしようとか、自分の身の回りの問題だけに焦点が絞られてしまいます。こんなアリさん目線では、いつまでたっても上司との間に論点のズレが生じてしまいます。

私も新人の頃は、冒頭の上司に「で、結局論点は何なの」と毎回鋭く突っ込まれていました。その度に(間違った答えを言ったら自分の考えの浅はかさが露呈してしまう…)と冷や汗をかきながら答えていました。

でも、そうやって答え合わせをすることで、自分よりも上のポジションの人がどんな視点で物事を考えているのか、少しだけ想像できるようになりました。今となってはこのトレーニングのおかげで、論点を考える癖がちょっとはついたと感謝しています。

また問題意識が足りないという場合は、普段からその仕事に対して真剣に向き合えていない裏返しなのかもしれません。

何かに夢中になって本気で取り組むからこそ課題もたくさん見えてくる。なんだか精神論になっちゃいますが、結局目の前の仕事を自分ごととして捉えて真剣にやることが、論点思考を磨く大前提なのかもしれません。

 

もしあなたが会議に参加中「この議論はどこに向かうのだろう…」と感じることがあったなら、ぜひ論点を見極める練習をしてみてはいかがでしょうか。受け身の態度で嫌々参加するよりも、得るものは結構あると思いますよ。

 

 

 

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(2024/3/26更新)

 

−筆者−

大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールに渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在はフリーランスとして活動しながら、Books&Appsの編集にも携わる。

筆者Facebookアカウント http://www.facebook.com/rie.oshima.520

 

(photo by christina burbank