私の周りの経営者限定かもしれないので、まずそう断りを入れておく。

 

最近、スタートアップの経営者とお会いする機会がとても増えた。

スタートアップの経営者というのはちょっと変わった人たちで、仕事なり人生なりにちょっと一言持っている、要するに「面倒くさい人たち」だ。

彼らは皆、周囲に流されることや、命令されることを極端に嫌う。同調圧力も論外である。結果として、組織では不器用なので生きにくい人が多いのではと思う。

 

だが、一般的に能力は高い。

「成績優秀な人」は世の中で大して珍しくもないが、スタートアップの経営をする「能力の高い人」は極めて珍しい。

彼らは「大局観」や「概念」といった曖昧ながらも鋭い思考が必要とされる事柄に強い人が多く、いつも感心する。

 

また、彼らはほぼ自己顕示欲が人一倍強い。

だがそれは「すごい」と言われたい、褒められたい、という単純なものではなく、「自分の作ったプロダクトや会社の影響力」を発揮したいという欲求だ。

彼らの求めるものは純粋なパワーであり、思想である。

考えれて見れば、それは当たり前だ。彼らが目指す「イノベーション」は売上や会社の規模ではなく、アイデアの世の中への影響力が本質なのだ。

逆に彼らは会社の規模や売上がいかに大きくとも、守旧的なものについては「自分がわざわざやる必要はない」と一蹴する。

 

 

そんな偏屈な彼らであっても、「仲間は要らない」という人はあまりいない。

むしろ自己の目標達成のためであれば、人付き合いが多少苦手であってもわりきって仲間を集めるし、もともと「お山の大将」になってワイワイやるのが好きな人も多いので、ほとんどの起業家は少し商売が順調になってくると、仲間を集めだす。

 

そんな時、私は興味から「どんな人が欲しいのですか?」と聞いてみる。

もちろん、いろいろな回答がある。

「自分と合う人物」と、webサービスの経営者は言う。

「自分の欠点を補完できる人」と、ECサイトの経営者は言う。

「絶対的に信頼できる人物」と、メディアの運営をする経営者は言う。

 

そして、私は併せて「来てほしくない人は?」と聞く。

するとこちらは、面白いように答えが一致する。すなわち、

「お金が大好きな人」

である。

 

彼らの一人は言う。

「お金は大事だよ。当たり前だけど。もちろんこちらも十分な報酬を用意するので、ケチるつもりはないけど、「お金が大好きな人」がパートナーなのはちょっとね。」

「なぜですか?」

「そうだねー、例えばそれなりに会社がうまくいって、けっこう稼げたとする。で、お金が大好きな人って、そこで止まっちゃう人がいるんだよね。」

「止まるとは?」

「自分の欲が満たされてしまったから、あとは「カネの使いみち」にしか興味がなくなっちゃう人が、結構いる。本当はカネなんかじゃ究極の満足は手に入らないのにね。」

「ふーむ。」

「我々のサービスが世の中に影響をあたえること、より多くの人の生活が変わること、社会の中で不可欠な存在になること、そういったテーマって、カネよりも遥かに面白いし、価値がある。でも、お金が大好きな人って、所詮お金で手に入る程度の世界観しかないから、なんか器が小さいな、と感じてしまう。」

「なるほど」

「だから、途中まで一緒にやってても、途中でうまく行かなくなったりするし、よく聞くし、実際そういうことも起きた。それから、「お金が大好きな人」は敬遠してる。」

「……。」

「お金なんて、最低限にすぎないよ。稼ぐのは当たり前。そこで止まったら何のために起業したかわからないじゃない。」

「そうですね。」

「それならいいとこのサラリーマンやってたほうが絶対いいよ。ほんとうに面白いのは稼いだあとの、その先に見える世界だよ。」

 

彼らはそう言って、また会議を始めた。

それにしても、よく働く人たちだ。

 

 

Books&Appsで広報活動しませんか?

 

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

(Steven Zwerink)