日本の人口は現在約1億2千500万人、世界10位の人口を誇る。一方で国土面積は世界62位と、広くもなく、狭くもないといった具合である。

その日本で、「人口減少」が取り沙汰されるようになって暫く経つ。内閣府の予測では、2050年には1億人を割り込み、2060年には8600万人と、現在の3分の2ほどの人口となるという予測だ。

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人口も減って、GDPも中国やその他新興国に抜かれ、お先真っ暗・・・、と騒がれがちな人口減少だが、本当にそうなのだろうか?

 

実は、「一人あたりGDPの予測」はそうでもない。世界最大級の銀行であるHSBCの予測によれば、人口が5000万人以上の国々の中で、2050年時点での一人あたりGDPは日本が米国などを抑え、世界第一位である。

世界に冠たる無敵の「少子高齢化」日本経済〜英銀2050年世界経済規模ランキング予測検証(BLOGOS)

 

要は、人口の少なさを、労働生産性で補うことができる可能性がある、ということだ。

そう考えると、日本の土地の不足の問題も、都市の過密の問題も、人口が少なくなることにより解決されることが多くなるだろうから、あながち人口減少も悪いことではないと思える。というか、「何が問題なの?」と、真顔で聞いてもいいくらいだ。

 

経済産業省は、そのあたりは少し冷静であり、中小企業白書の中で

”総人口が減少した場合、それが国内総生産(GDP)全体に対し減少方向に寄与することは間違いないが、個々の国民や中小企業の立場に立てば、国民個々人の豊かさ(例えば1人当たりGDP)が維持されれば、人口減少社会も必ずしも悪いことではないと言える。
だが、少子高齢化社会の問題は、現状を放置すれば国民個々人の豊かさが十分に維持できない可能性があることである。少子高齢化に伴い総人口に占める生産年齢人口の比率が低下するため、生産年齢人口に対する労働力率が上昇しなければ、全人口に占める労働力率が低下してしまう。労働投入量が減少していく社会においては、労働者1人当たりの生産性を高めなければ、成果物としてのGDPが減少し個々の国民の豊かさが損なわれる恐れがある。”

と、人口減少は「必ずしも悪いことではない」と評している。しかし、多くのメディアはなぜこの問題を取りざたするのか。

 

実は、白書の引用の中にも触れられているが、問題は「人口減少」ではなく「少子高齢化に伴い総人口に占める生産年齢人口の比率が低下」の方である。

要は、「老人が増えると、働かない(あるいは働けない)人が増え、社会全体が貧しくなる」という問題のほうがむしろ核心である。

 

ズバリ、「あなたは、何歳まで働くか?」という問いに答えよ、と言われているのだ。

超高齢化社会では、60歳などむしろ若手である。今の豊かさをキープするためには、今30歳、40歳の人々は、おそらく70歳、場合によっては75歳程度まで働く必要がある。

 

もはや「定年」や「年金暮らし」など過去の遺物である。

ピーター・ドラッカーは言う。「肉体労働者であれば60歳まで働けば肉体的にも精神的にもボロボロだ。しかし、知識労働者はそうではない。」認識を改めなければいけないのは、「65歳で年金暮らし」を漫然と思い描いている今の働き盛りや若手だ。これからは、基本的に「一生働く」ことが社会から求められる。

 

「一生働き続けられる」ために、どんな準備が必要なのか。少なくとも、気楽にサラリーマンを60まで漫然と続けることはやめたほうが良いだろう。