電通の過労死問題を皮切りに残業規制が設けられることとなり、最終的に100時間を一応の上限とする事で残業規制が一応行われることとなった。

残業「100時間未満」規制、運送・建設業は5年間猶予へ 働き方改革実行計画を決定

政府は28日、働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)の最終会合を開き、残業時間の罰則付き上限規制などを盛り込んだ「働き方改革実行計画」を決定した。政府は今秋の臨時国会で関連法の改正案を成立させ、2019年度の施行をめざす。

 実行計画は、長時間労働の是正に向けた残業時間の上限規制と、非正社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」が2本柱。残業時間については、繁忙期も含めた年間の上限を「720時間(月平均60時間)」、きわめて忙しい1カ月の上限を「100時間未満」とすることなどを盛り込み、事実上青天井となっている残業時間に初めて法的な強制力がある規制を設ける。

(ハフィントン・ポスト)

だけど、あの報道をみてほとんどの人はこう思ったはずだ。

「100時間?どう考えても過労死ラインでしょ」

 

なんでこんなに微妙な基準ができあがってしまったのだろうか?実は世間にはそもそも自ら進んで残業がしたい人間が結構な割合で存在するのである。

1万人に聞いた「残業する理由」、1位は「残業代がほしいから」 – ITmedia ヘルスケア

エンジニア情報サイト「fabcross for エンジニア」は3月2日、会社員・公務員1万145人を対象にした「残業に関するアンケート」の調査結果を発表した。調査期間は2017年1月12~19日。

 調査によると、「残業する主な要因」として最も多かった回答は「残業費をもらって生活費を増やしたいから」で、「非常に当てはまる」「やや当てはまる」の合計が34.6%だった。次いで「担当業務でより多くの成果を出したいから」(29.2%)、「上司からの指示」(28.9%)、「自分の能力不足によるもの」(28.9%)という結果になった。

実はこの問題は微妙に世代間格差も含まれており、キチンと分析しておくと今後の人生戦略に非常に役立つ。というわけで今回は残業問題の本質についてを書いていくことにする。

 

残業はある種の副業である.

残業というと未払いだとか過労死だとかいうネガティブなワードが飛び出すことが多いが、上に書いたように残業を好んで行う人は実は結構いる。

 

残業代がそもそももらえないような人間からすれば夢のような話だけど、実は世間にはビックリするぐらい残業代の支払いがよい企業も存在したりする。

会社でネットサーフィンして数時間潰して、お小遣いを稼いでいるような人間も世の中にはいるのである。

 

こういう人間にとって、残業とはある種の副業みたいなものである。

普通のサラリーマンの平均の基本給はせいぜいいいとこ手取りで20万程度が関の山だ。この金額だと生活するのも結構カツカツである。家賃で10万位は簡単に吹き飛ぶし、食費等の生活費を払うとほとんど手元には残らない。

こういう経済状況の人にとって、残業は極めて魅力的なお金を稼ぐための手法だ。

会社にいさえすればお金が自動的に銀行口座に振り込まれる、夢のような話である。

 

例えばとある人の時給が2500円ぐらいだとして、この人が月に40時間程度の残業を行うと副収入として10万円ほどのお金を手にすることが出来る(厳密にはここから多少の税金がひかれるけど)

普通に暮らす庶民からすれば10万円は結構大きな金額だ。月収20万では車を買ったり住宅ローンを組んだりなんて夢のまた夢だけど、これに10万程度の収入があればちょっと無理すればなんとかならなくもない。

 

こう書くと残業は多くの人にとって非常に魅力的な選択肢だということがわかるはずだ。残業は簡単にいうと、サルでもできる副業なのだ。

 

となると不思議なのが、最近になって残業を嫌うタイプの若者の声が大きくなってきた事だ。

実はそこには巧妙な世代間格差が隠れている。

 

最近の若者はある意味では非常に恵まれている

お金を稼ぐのは難しい。ほとんどの人には自力でこれを行うのは不可能といっても過言ではない(だから多くの人がサラリーマンをやるわけだ)

こんなにも難しいお金の稼ぎ方だけど、個人がマイクロに行える方法は大雑把に分類すると実はたったの2つしかない。

 

1つ目は商品を誰かに売ることである。個人にできる方法だと、例えばコミケで同人誌を売るだとかがそうだし、最近だとスマホアプリを制作してストアで販売するだなんて方法もある。

 

この方法の難しい点は、良い商品を作ること、ならびにモノを販売する営業ルートの確立にある。

あたりまえだけど人は欲しくないものにはお金を出さないし、本当によいものもきちんとした宣伝がなされないと誰にも見向きもされない。

 

だけど当たると非常にでかい。

もし機会があるのなら、コミケ会場に行って壁サークルといわれている存在をみてみるとよいだろう。

そこでは札束がまさにモノ扱いでダンボールに無造作に詰められるという奇妙な光景が広がっている(ちなみにこの方法を悪用して荒稼ぎをしているのが、いわゆるねずみ講やネットワークビジネスである)

 

2つ目は広告や紹介量で儲ける手法だ。最近ならGoogleアドセンスなんかやアフィリエイトなんかがこれに該当する。

この方法の良い点は,無料戦略が採用できることだ(少し前にFreeという本という本が流行った事を覚えている人もいるかもしれない)

 

300円の雑誌を一冊買うのすら躊躇するような人でも、タダなら比較的容易に手を出してくれる事が多い。

タダを餌に人をある程度集める事ができれば、人数に応じてそこそこのお金を稼ぎ出すことができる。

ちなみにこの手法で稼いでいるのがまとめサイトや個人ブロガー、Youtuberである。こちらもヒットすると物凄い金額が稼ぎ出せたりする。

 

こうしてまとめてみればわかるけど、最近の若者は非常に恵まれている。インターネットにより自宅にいながらにして、容易に経済行為にアクセスする環境が出来上がっているのである。

 

当然だけど今の40代50代が若かった頃はこんな都合のよい環境なんて存在しなかった。

多くの場合において世代間格差は若者不利という立場で語られる事が多いが、こと副業に関していえばこの条件は当てはまらない。

デジタルネイティブ世代の唯一といってもいいアドバンテージが、アクセスが容易な副業環境である事は否定しようのない事実である。

 

こうなると最近の若者の中に残業を嫌がるタイプの人間が出てき始めるのは非常に理にかなった現象である。

残業なんて面白くもなんともない作業でお金をわざわざ稼がなくても、自宅でブログを書いたり大好きなゲームでも実況中継していればお金が稼げるのなら、どう考えたってみんなそっちの方がいいに決まっている。

 

実際のところ、インターネットで残業撤廃を声高に叫ぶ多くの人は副業的な稼ぎ方に結構精通していそうな人たちばかりである。

 

こうなるとつまらないのが中年以降の人たちだろう。

彼らからすれば、残業以外に副業的にお金を稼ぐ方法がないし、今更若者がやってるようなネットでのビジネス行為に参画したところで不慣れなフィールドで若者にもかなうはずがない。

 

残業時間の上限が100時間に規制されたのは、残業時間以外にお金を稼ぎ出すすべのない中高齢者と、残業なんかより自宅で副業をしたい若者、ならびに残業代がそもそも支払われないから残業をしたくない若者の利害が折り合った丁度いい感じの時間だというのが筆者の認識である。

 

今後どうなるか

さて残業問題がエレガントに解決しない本当の理由は上記のとおりだが、今後どうなるのかについても少しだけ書くことにしよう。

 

そもそも現行の制度は非常に奇怪なものだ。会社にいるだけで時給が発生するだなんて制度が存在していた事自体が奇跡である。

景気が良かった頃はある種の福利厚生的な意味でこういうザルみたいな制度も存在しえたかもしれないけど、残念ながら今は不況である。

生産人口の数がガンガン下がりつつある今の日本において、何も生産しないで会社にいるだけで時給が発生するだなんて不思議な制度がいつまでも存続するだなんて到底思えない。

 

残業はある意味では非常に万人に平等な原理だ。

けれど仕事ができる定時退社が可能な優秀な人間には極めて不利な制度であり、これがずっと是正され続けるとはとても考えにくい。

ただ、だからといって残業が完全に全面禁止となってしまい基本給のみしか支給されないようになってしまったら、多くの人は生きていけないというのもまた事実である。

 

最終的にはブルーカラーやバックオフィスの人達に関しては、現行の制度がそのまま用いられ、ホワイトカラーに関してはみなし残業代が基本給に組み込まれた年棒制の導入と、成果主義的による給与の上昇がインセンティブとして繰り込まれた給与方式に落ち着くんじゃないかというのが筆者の予想である。

 

というわけでサルでもできる副業である「残業」で稼げる金額が今後どんどん下がることが予測されるという事もあり、これを読んでいる皆様におかれましては一刻も早く副業につながる何かを始める事をオススメします。

 

ブログを書くも良し、絵を書くもよし、アプリを作るのもよし。なんでもいいからまずはモノを作ることから始めましょう。人に売り込めるような技能さえあれば、まあ結構人生の見通しも明るいもんです。

 

ともに頑張ってこの先行き不安な社会を生き残ろうではありませんか。

 

 

【プロフィール】

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高須賀 

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

(Photo:Lena Vasiljeva)