つい先日転職をしたばかりの知人が、また転職を決めた。

といっても、彼は転職を繰り返す人「ジョブホッパー」ではない。

前々職は大手で7,8年とそれなりに長いこと在籍しており、成果もあげていた。

 

ところが一昨年「チャレンジしたい」と、スタートアップへ転職をした。

だが、残念ながら今回のスタートアップでは1年を待たずして「この会社は合わない」という理由で転職を決めた。

 

私は訪ねた。

「なんで合わないと感じたのですか?」

「色々とあるんだけど、なんとなくだらしない雰囲気。」

「具体的には?」

「まず仕事の締め切りに甘い。無責任というか。社長に言っても「それほど気になる?」って、取り合ってもらえない。その割には成果に対してはやたら厳しい。数字は?数字は?って。こっちからすると、仕事の締め切りを守らないからじゃないか、と言いたくなる。」

「なるほど。」

「入社前に言っていた「給料は成果さえ出せばいくらでも」は実際には入社した順に高くなる。評価がきちんとされない。」

 

知人の言うことがどこまで事実なのかは、正直よくわからない。

だが、会社に対して「合わない」と感じていたことは事実である。

 

入社してから「合わない」と感じるのは、お互いに不幸な結果となるのは目に見えている。

聞くと知人は、

「社長は人間的には気が合うと感じた。ただ、入社してみると組織の方針に関しては、合うところはあまりなかった。」という。

 

*****

 

ソウルドアウト社代表の荻原氏は

「採用時、能力だけではなく、組織風土に合うかを見ることは重要」と言う。

荻原氏:

私が参考としているものの一つがキム・キャメロンとロバート・クインの提唱した組織文化に関するフレームワークです。

 

このフレームワークは、一つの軸を「柔軟性」⇔「統制」とし、もう一つの軸を「外向き」⇔「内向き」とし、以下の4つの代表的な組織文化を定義しています。

・イノベーション文化

・家族文化

・官僚文化

・マーケット文化

もちろんそれぞれに「良し悪し」はありません。考え方のちがいです。

しかしこの些細な「考え方のちがい」は、様々な軋轢を生みます。

 

実際、組織文化に起因するトラブルは「些細なことが積み重なって、大きな違和感になる」という性質があるのではないでしょうか。

「職場の雰囲気が合わない」という発言は、単なるワガママではありません。

時には組織の分裂にも至り、仕事の指針や価値観に影響を及ぼす、重大なことです。

 

以下の点は、フレームワークから一歩踏み込んだ、会社において「違和感を感じやすい部分」の代表例です。

現在の組織に合う人かどうかを検証するのに使えると思います。

 

1.集権的か、分権的か

知人が、某メガベンチャー2社を比べた発言です。

・一社はオフィスを訪れると、全員が立ち上がって「こんにちは!」と挨拶する。ものすごく行き届いた雰囲気のある会社です。ただし、社長の出席する会議では、誰ひとりとして発言しません。

社員は皆、「社長の言うことを忠実に実行するオペレーター」で良いわけです。

・もう一社は、オフィスを訪れても「アンタ誰?」と言った目で見られます。挨拶なんて、だれもしません。でも会議は全ての人が活発に発言します。

社長が「今年の採用は今ひとつだった」と発言したら、社員の方が「あなたがいたからです」と言われてしまうくらいです。

挨拶なんて奨励しようものなら、間違いなく社員から「挨拶すると業績が変わるんですか?」と言われるでしょう。

 

この二社はいずれも大成功していますが、あう人とあわない人は、はっきりと分れるでしょう。

 

2.失敗が奨励される職場か、許されない職場か

「失敗への許容度」は、組織の文化に大きな影響を与えます。

例えば鉄道や航空、水道、電力などのインフラ系の会社では「失敗」は時に人の命に関わるため、失敗への許容度は必然的に低いでしょう。

「食品」「医療」などもこのカテゴリかもしれません。

 

逆にゲームやwebサービスなどは、「ミス」を怖れていては新しいことはできません。むしろミスをすることを推奨される、と言う組織も多いでしょう。

あるいは一つの会社の中でも、ミスが奨励される営業のような職場と、ミスが許されない工場のような職場と分かれるかもしれません。

 

3.お客さんの要望が先か、自分たちの発想が先か。

いわゆる、商品開発がマーケットインの発想か、プロダクトアウトの発想かの違いです。

 

私の古巣である「オプト」はどちらかと言えばマーケットインの発想を持つ会社でした。

グループ会社が何かを作っても、「クライアントが求めれば売りますよ」という人が多かったように記憶しています。

 

私見ですが、逆にオプトの競合である某社はむしろプロダクトアウト的な発想の会社ではないかと推測しています。

動画サイトや、次々に新サービスを打ち出してるのは、そのカルチャーゆえでしょう。まずは面白いと思うものを創ってみて、皆で売って、ダメだったら次を作る。

こう言ったカルチャーのちがいは、会社の風土に大きな影響があると思います。

 

4.時間に厳しいか、自由か

「時間に対して非常に厳しい会社」と「時間は個人の自由」という会社では、大きくカルチャーが異なります。

 

たしかに集団としての統率が重要な組織では、時間を皆で合わせることは死活的に重要です。

逆に個人のクリエイティビティを重視する組織では、皆で歩調を合わせることが「卓越した人材」の足を引っ張ることにもなりかねません。

「会社には最低でも10分前に来て、準備をすべき」と上司が言う会社と、「成果さえ出せば、勤怠は細かいことを言わなくてもべつに良いんじゃないの?」と上司が言う会社では、おのずとあう人、あわない人が分かれるでしょう。

 

5.整理整頓にうるさいか、無頓着か

デスクや職場の整理整頓にうるさいかどうかも、組織のカルチャーを大きく左右します。

例えば、「机はつねに整理整頓」「皆で職場を掃除」「机が汚い人は仕事ができない」という上司がいる職場と、

「机の整理と仕事の出来は無関係」「掃除のように生産性の低い仕事はさっさと外注せよ」という上司がいる職場では随分と雰囲気が違うでしょう。

 

個人的には、「プロフェッショナル・マネジャー」という本の著者、アメリカのコングロマリットの総帥だったハロルド・ジェニーンという経営者が「机の綺麗なマナジャーは仕事ができない」という意見に賛成しますが。

 

6.顔を合わせることにこだわるかどうか。

「大事なことは顔を合わせないと伝わらない」とFace to Faceにこだわる会社が結構あります。

逆に「電話でいいんじゃない?」「電話すら嫌だ、メールにせよ」「チャットサービスで十分」と、顔を合わせることに全く頓着がない会社も数多くあります。

 

最近では減りましたが、一昔前は「テレビ会議なんてもってのほか」という会社も数多くありました。

テクノロジーが発達し、今では細かい表情もモニターを通じてかなり把握できるようになってきていますが、それでもなお「直接会う」にこだわる会社はなくならないでしょう。

 

これも、組織が追求している成果に依存する話だと思いますが、カルチャーには大きな影響を与えます。

 

7.服装にうるさいか、自由か

「服装」もカルチャーに大きな影響を与えます。

Tシャツ、ジーンズでOKか、ビジネスカジュアルまでか、それともスーツでなければダメなのか。

 

「お客さんに合わせてます」とか「常識の範囲内で」という会社もありますが、それも「無難にする」という、一つのカルチャーです。

 

要するに、こう言った「統制」にかかる事項は、組織のケイパビリティをどこにおいているか、と言う話と不可分なのです。

「お客さんからのイメージを大事にしよう」とか「プロダクトが良ければ、あとは最低限で良い」とか、そう言った思想が最もよく出るのが、服装です。

 

8.社内の飲み会が多いか、少ない(または無い)か。

社内の飲み会も、最近では「出席したくない」とか「夜やるなら残業代を出せ」などの物議を醸すことが多いようです。

これも間違いなく「カルチャー」を色濃く反映することの一つでしょう。

 

その影響もあってか「若手は飲み会が嫌い」という偏見を持つ人も増えましたが、いつの時代も、こういった集まりが好きな人は好き、嫌いな人は嫌いです。実際、「社内の飲み会が好き」という人も結構いるのです。

 

*****

 

繰り返しになりますが、組織カルチャーは、「良い」「悪い」ではありません。

純粋に「合う」か「合わない」か。もっと言えば、好き嫌いの話です。

 

自分の好きなカルチャー、上司がいる会社で働くのは、ストレスを減らし、仕事が少々つらくても「頑張ろう」という気になるでしょう。

逆に、自分の嫌いなカルチャーの会社で働いていれば、「机を整理しろよ」程度の小言でも大きなストレスを感じるでしょうし、給与が上がったとしても幸せを感じにくいかもしれません。

 

「組織風土の悪化」は、本業に比べてついつい、優先度が落とされてしまいますが、本来はマネジメントの中核に据えても良いくらい、重要なことではないでしょうか。

 

 

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(Photo:tokyoform)