ちょっと前からビットコインについて色々書いてきたけど、今回はビットコインというよりも暗号通貨が私達の社会にどのような変革をもたらすのかについて記述していこうと思う。

 

仮想通貨には本当に価値がないのだろうか?

よくビットコインを始めとする仮想通貨は価値の裏付けがない幻想の上に成り立つ通貨だから、いつか絶対に価値が消失するという人がいる。

でも実際のところ、どうなんだろう?

仮想通貨には本当に価値がないのだろうか?

 

実のところ僕も最初はビットコインの価値が正直よくわからなかった。

国際送金に役に立つとか言われても、そもそも国際送金なんてした事はこれまで生活してきて殆どなかったし、今後も恐らくない。

そんなごくごく一部の人達の需要にしか使われないものに、果たして価値を見いだせるかというと、正直僕には難しかった。

 

あるいはビットコインはデジタルゴールドになりうると言っていた人もいた。

これについても相当真剣に考えたのだけど、正直実態が全く無いビットコインがゴールドのようなものになりえるという現実がどうしても想像できなかった。

 

結局、頭で考えても理解するには限界があると思った僕は、12月とやや遅れてではあるけどもビットコインを実際に自分で買って色々と遊んでみることにした。

やっぱし自分で実際に色々やってみないと、この謎の新技術については理解できないだろうと思ったのだ。

 

その結果は先に書いたいくつかの記事にも書いたけど、ビットコインは僕に様々な着想を与えてくれた。

ビットコイン・バブルが永遠に続いたらどうなるのかという事についての妄想を巡らせる事ができたし、あるいは相場をデカく張ってみて一世一代の大勝負にかけてみる事でギャンブル依存症の恐ろしさを僕にリアルな実感と共に与えてくれた。

 

このように僕にとってビットコインは、色々な学びを与えてくれた。

けどあれらの記事を書きおえてた後に思い返してみたのだけど、僕は当初の目的である”ビットコインの価値ってそもそもなんなんだろう?”という事に自分の中で全く回答を出してない事に気がついてしまった。

当初の目的を全く果たしていない事に気がついた僕は、再び死地へと赴く事にした。本当に懲りない奴である。

 

ビットコインは「破壊的イノベーション」だった。

暗号通貨というと殆どの人はビットコインしか知らないと思うけど、実はその数は数千とも言われている。

ちょっとググってみて貰えばわかると思うのだけど、暗号通貨の時価総額ランキングをみてみると、日本では全く取り扱われていない様々なものが沢山ある。例えばエニグマなんてコイン、一体何人が知ってるのだろうか?

結局、国内で取り扱われているものだけで暗号通貨市場で何が起きているのかが全くわからなかったので、僕はとりあえず上にあるものから順に、自分で色々と調べてみることにした。

 

と、ここまで至ってようやく僕は理解したのだけど、現在の暗号通貨界隈で起きているのは、まさにハーバードMBAのクリステンセン教授が書いたイノベーションのジレンマに書かれている事そのまんまであった。

ビットコインはまさに破壊的イノベーションである。

どういう事かわからない人も多いだろうから、以下に順を追って説明していこう。

 

ビットコインとアルトコイン

さっきも書いたけど、ビットコインは当初はデジタルゴールドや国際送金を主眼に開発された商品だ。

P2Pという技術を用いた分散型合意システムを導入することで、ビットコインはインターネットというものがこの世に存在し続ける限り、永遠に稼働し続けるという極めてAntifragile(反脆弱性)な性質を手にすることに成功した。

 

ただ、この時点でのビットコインには正直な事をいうと価値はそこまではない。

ビットコインの本当の価値はこの後に続く、様々な亜種コイン(アルトコイン)により更に強固となっていく。

 

ビットコインそのものは、実のところただのお金の移動手段だ。

取引所というところを介在して、法定通貨とビットコインが一度関係を持つことで、ビットコインには金銭との交通ルートができあがる。

 

こうしてビットコインに一度金銭的な価値が付与された後に、ビットコインの後追い品である様々な類似商品が開発される事となった。

それらを総称してアルトコインというのだけど、後発品であるこれらはビットコインにはない様々なメリットや、ビットコインが持つデメリットが克服されている。

 

例えば二番目に時価総額が大きいイーサリアムというアルトコインは、それを利用することで様々なアプリケーションを開発する事ができたり、自動的な契約システムを組み込むことにより保険と類似したシステムを暗号通貨を介して含める事ができる。

ちなみに今イーサリアムで最も流行っているアプリケーションは猫を育てるゲームである。

理解できないかもしれないけど、本当にそうなのだ。

 

取引所を通じてビットコインに金銭的な価値が付与された事で、これらの優秀なアルトコインにも後追いで価値がつけられる事となった。

これを書いている現在、暗号通貨全体の時価総額は80兆円程度となっている。

 

これだけみるとメチャクチャに高く見えてしまうけど、暗号通貨ではなく暗号通貨企業として考えると、実のところそこまで馬鹿みたいな規模ではない。

例えば日本のIT企業関連企業の上位330社の時価総額は120兆円程度だ。世界の株まで広げると時価総額は7600兆円である。

暗号通貨なんて、高々世界株の1%程度の時価総額しかない。実は全体で考えれば、まだまだ超弱小界隈でしかないのが暗号通貨界隈の本当のところである。

 

暗号通貨は、通貨というより株のようなもの

この界隈はなんでもかんでも暗号通貨といわれるので多くの人が○○コインは通貨と認識しているようだけど、実のところ多くの○○コインは通貨というよりも、どっちかというと企業の株みたいなものとして認識した方がよい。

 

多くの暗号通貨は、ブロックチェーン技術を利用して現実世界に様々な確変をもたらそうとする技術者が背景におり、そういう人達がブロックチェーン技術を使って何らかのサービスを提供できないかと日々しのぎを削っているのが今だ。

 

さっきも書いたイーサリアムなんかはまさにそれに該当するし、実際イーサリアムの技術をベースとした様々なブロックチェーン技術を用いたサービスを提供する事を主眼にしたコインがたくさんある。

 

このようにしてブロックチェーン技術を応用して様々なサービスを提供する代わりに、コインを用いてお金を世界中の市場から集めるという手法が徐々に確立されていった。

これをICOというのだけど、この仕組がなかなかに凄いのである。以下、株と絡めてもう少し詳しく説明していこう。

 

ICO(Initial Coin Offering)とは

IPO(Initial Public Offering)という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない。

これは未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させる事であり、例えばつい昨年、我らが友であるはてな社はIPOを実行し株式を流通させた。

その株を担保に、はてな巨額の資金を手にすることに成功した。

 

けど当然ながら、モノには対価相応の価値の裏付けとなる何かが必要とされる。

株の価値の担保となってるのは経営権である。ライブドアがフジテレビの経営権を乗っ取ろうと、日本放送の株を買い付けに走った事を覚えている人も多いだろう。

株は、経営権をお金に変換する魔法の錬金術なのだ。

 

こうして株は、証券会社を通じて多額の資金を手にする事を可能にする一方で、会社の経営権を担保にしなくてはいけないというリスクが背景にある。

これは実のところ凄く経営者にとっては面倒くさい要素が多い。

 

実際のところ、お金だけ持っているよくわからない投資家に頭を下げて会社を経営する事にはデメリットしかないといい切る経営者もかなりいる。

そういう人は株式を絶対に上場させないと口を揃えていっており、株を安易に後悔するなど馬鹿のする事だといっているが、株の仕組みを考えればそれは当然の行為だ。

そういう会社は、上場なんてすべきではないのである。

 

このように株は、発行したらお金がただ入ってくるような魔法のチケットではなく、経営権をいつ知らない誰かに取られてもおかしくないというリスクを抱え込む面倒くさい産物だ。

ここまではわかっていただけると思う。

 

けどちょっと考えてみて欲しいのだけど、そもそも僕達のような庶民は経営権が欲しくて株を買うだろうか?

何か企業にものを申したくて株を買うというような人はほとんどいないのが実情だろう。

ただ儲かってくれればいい、あるいは配当が欲しい。そう思う人の方が圧倒的に大多数に違いない。

 

実のところ新興企業だってお金が欲しくないわけではない。

お金がなけりゃ、人も雇えないしモノも買えない。けど銀行にお金を貸してもらうにも担保がいるし、エンジェル投資家を巻き込むためにはエレベーター内で30秒プレゼンをして相手を説き伏せなくてはいけない。

けど経営権を相手に取られるのだけは、できたら避けたい。

 

こうしてただ儲けたい投資家と、お金は欲しいけどゴチャゴチャ面倒くさい事にはなりたくない起業家の双方のメリットが一致した結果、何が起きたか?それがICOという仕組みである。

このICOにインターネットがつながる全世界からアクセスできるという事に、暗号通貨の国際送金の最大のメリットが活きている。

 

ICOというのは、簡単に言えば経営権などといった価値の担保が全く無い株の発行である。

企業が今後提供するサービスを説明し、そこにビットコインやイーサリアムといった仮想通貨で全世界から小口投資家が投資をする事ができる。

 

企業は暗号通貨を送ってくれた人に向けて、トークンという一種の株によく似た仮想通貨を発行する。

このトークンの価値の担保はその企業が提供するサービスである。

 

ICOこそ、破壊的イノベーション

例えば、つい先日もSwissBorg(スイスボーグ)というスイスの会社がICOを行ったのだけど、ここはブロックチェーン技術を用いて資産運用をする事を目的とする企業である。

 

この時点ではトークン自体にはサービスの提供以外には何の価値もないのだけど、一度このトークンが暗号通貨を取り扱っている取引所に上場を決定すると、そこを窓口にして、今度はビットコインや法定通貨といった資産が流入する事になる。

すると、トークンの価値は何倍にもなったりする。

ちなみに先程書いたSwissBorg(スイスボーグ)は既に上場が決まっている。まさにITバブル時代の新興株そのものである。

 

実は調べてみればわかるけど、ICOに関する話はそこらじゅうで沢山みつける事ができる。

もちろんその多くはメチャクチャに胡散臭いものばかりで、正直マトモなものはごくごく少数だ。

けど、普通の人は仮想通貨は胡散臭い金融商品だと思っている事もあり、参入障壁がまだまだ高く、宝の山がそこらじゅうに転がっている。

 

このように実は現在、銀行も証券会社も水面下で暗号通貨による破壊的イノベーションによりかなりの打撃をうけている。

送金も株の取得も、暗号通貨の手にかかれば全て一本化可能である。銀行の口座を開く必要もないし、証券会社の口座も開く事無く、私達は取引所でビットコインを買って、全世界の気に入った企業に好きなように投資をする事ができる。

国際送金の本当のメリットは、実は投資にあったのだ。

 

これが現在、水面下で起きている仮想通貨関連企業による破壊的イノベーションである。

 

ビットコインは暗号通貨界のハブだから価値がある

ここまで書くと、ようやくビットコインの何が凄いのかがようやくわかってくる。

端的にいうと、ビットコインは暗号通貨界のハブ(中継地点)なのだ。だからビットコインにはすざまじい価値が付与される。

 

ハブについて知らない人もいるので簡単にいうと、ハブとはものの中心地点である。

例えば日本の空港ならば、羽田がハブに相当する。

 

空港自体に関して言えば、例えば新千歳空港とかの方が提供サービス内容も凄いし、実のところ羽田も空港そのもののポテンシャルは並だ。

だけど羽田は利用率に関して言えば、日本国内では圧倒的にNO.1だ。

なぜだろうか?それは羽田が日本の中心的空港だからだ。だから機能とかがいかに優れていても、僻地にある空港は利用者数で羽田に勝つことは絶対にできない。

 

利用者数に関して具体的に言うと、5位の新千歳空港は21,311,918人なのに対して、1位の羽田空港の乗降客数は80,121,680人と約5倍である。

5倍も利用者がいるにもかかわらず、羽田の機能面でのポテンシャルが新千歳空港の5倍もあるわけがない。

 

これがハブの強みだ。羽田空港と新千歳空港との間にある5倍もの利用差は、空港が優れているか否かではなく、単に羽田が都心から近いことによるハブであるということのみでもたらされる。仮に北海道に首都があったとしたら、この利用率は簡単に逆転するだろう。

それだけ、ハブであるか否かという事は大きいのだ。

 

ビットコインは紛れもなく暗号通貨界のハブである。

全世界の主要法定通貨と交換可能であり、全ての暗号通貨とも交換可能な暗号通貨は今までも、そしてこれからもずっと王者たるビットコインが担うだろう。

現在は送金問題や使用電力などといった問題で色々と揉めているけど、これらはいずれテクノロジーの進歩によって間違いなく解決する。

 

かつて日本でも公害病として水俣病やイタイイタイ病、四日市喘息などが問題となったり、車の排気ガスが問題になったりと様々な事が問題となった。

けど、これまで全ての技術の問題は技術の発達により解決してきた。

 

恐らく暗号通貨というテクノロジーも、似たような未来をたどる事は間違いなく、ビットコインにより始まった暗号通貨というテクノロジー関連企業が今後大成長を遂げていく事はもやは既定路線としかいいようがない。

 

先程も書いたけど、暗号通貨関連企業の時価総額は世界株の時価総額7600兆円のうち、まだ80兆円までしかたどり着けてない。

この世界を大きく変える破壊的イノベーション新技術が、世界の株の1%の時価総額でおさまるだなんてことが果たしてあり得るだろうか?

 

現在、アメリカのIT企業企業のTOP5社の時価総額は336兆円である。僕は最低でもこれぐらいは全然余裕で暗号通貨の時価総額はあがると思う。

今の2倍は最低でも硬いというのが僕の現在の認識だ。

 

多少の時間はかかるだろうけど、ビットコインの金額は今ですら全然安いし、いま乱発しているICO企業の中には未来のソフトバンクや楽天のような企業が隠れている事は間違いない。

まあこれが当たるか外れるかは数年後しかわからないけど、少なくとも捨てて良い金額ぐらいはビットコインを買うのは、そう悪い投資ではないだろう。

 

と、まあ長々といろいろ書きましたけど、暗号通貨って結構面白いので、各自色々と勉強してみるといいんじゃないでしょうか。

オススメ本をあえて一冊あげるとなると、デジタルゴールドがいいかと思います。暗号通貨の生誕記録が色々と分かって、大変興味深い本となっています。

 

暗号通貨、面白いですよ?

 

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

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(Photo:Antana)