「お客様は神様です。」

三波春夫が作り出したと言われているこのフレーズは、平成の世の中では賛否両論です。

特に「クレーマーには格好の言い分になっている」ということで、三波春夫のオフィシャルサイトでも「三波春夫の意図とは違った意味で使われている」と、わざわざ掲載されるほどです。

三波春夫といえば『お客様は神様です』というフレーズがすぐに思い浮かぶ方が少なくないようです。印象強くご記憶頂いていることを有り難く存じます。

ですが、このフレーズについては、三波本人の真意とは違う意味に捉えられたり使われたりしていることが多くございますので、ここにちょっとお伝えさせて頂きます。

三波春夫にとっての「お客様」とは、聴衆・オーディエンスのことです。客席にいらっしゃるお客様とステージに立つ演者、という形の中から生まれたフレーズなのです。

三波が言う「お客様」は、商店や飲食店などのお客様のことではないのですし、また、営業先のクライアントのことでもありません。

しかし、このフレーズが真意と離れて使われる時には、例えば買い物客が「お金を払う客なんだからもっと丁寧にしなさいよ。お客様は神様でしょ?」と、いう風になるようです。

そして、店員さんは「お客様は神様です、って言うからって、お客は何をしたって良いっていうんですか?」という具合。俗に言う“クレーマー”には恰好の言いわけ、言い分になってしまっているようです。

三波春夫オフィシャルサイト

実際にはもちろん顧客は「神様」ではありません。

企業と顧客はサービスを提供する側と、される側の存在であり、本来、対価によって対等な立ち位置になっているはずです。

そう考えれば「取引先」という言葉のほうが妥当でしょう。「取引」はお互いの合意に寄って成り立つものですから。

 

しかし世間には「取引する相手」として、不適切な人達がいるのもまた、事実です。

例えば、

・ろくに調べもせず、勝手に勘違いをする方々

・一方的な要求を突きつけてくるだけの方々

・考えるより先に手が出るラオウのようなタイプ。

(画像:北斗の拳15巻 電子書籍版)

そんな「ブラック顧客」と付き合ってしまうと、会社側には必ずと言っていいほど副作用が出ます。

ブラック顧客の副作用

✓ 話をきちんと聞かないので、勘違いが多く、無駄な対応が増える

✓ 価格に見合った要求ではないので、物理的なリソース不足になり、残業が増える

✓ 無駄な仕事が増え、スタッフのモチベーションが低下する

 

そして、個人的に、以下3点はブラック顧客の危険信号と考えています。

 

1.営業時間外の対応を要求してくるが、見合った対価を支払わない。

営業時間外でも平気で連絡してくる会社、ありますね。

でも、24時間365日の対応をするならばそれに見合った対価が必要です。

しかし残念ながら営業時間外の連絡を要求する人ほど、きちんと対価を支払わない。

「“下請けなんだから土日も働け”」と要求するということは、どういうことなのかをきちんと理解していないのです。

 

2.「緊急」が多い

担当者のスケジュールミスで「緊急対応」を出してくる会社があります。

自分の責任を下請けになすりつけよう、という担当者ですね。

こうなってしまうと、どこからどこまでが本音なのかわからなくなり、ひとつのプロジェクトを成功させる気なんてサッパリ無くなります。

 

3. 止まらない後出しジャンケン

事前の見積もり段階で、予め念入りに説明をしていたにも関わらず

「自分たちは素人なので、説明を理解できていなかった」

「これでは高いお金を払ってお願いしている意味がない」(でも、高いお金は払っていない)

「プロであれば、我々の要望より良くなる提案をすべきだ」

 

とかなんとか、要するに「後から後から要求を追加してくる」お客さんがいます。

 

もちろん我々はプロですから、暗黙の要求もできるだけ汲もうとします。

でもせめて「任せたから」と丸投げせずに、自分たちの要求を言語化する努力はしてほしいです。

 

これらのいつまでも無くならない理不尽さ対して、しみじみ思うのです。

こんな話があります。

吉田茂はなぜ、一流ホテルの洗面台を自分で拭いたのか?

かつて吉田茂元総理が「一流と言われる某ホテル」を訪れたときの話です。

吉田総理はホテルのトイレで手を洗ったあと、なんと洗面台のまわりにはねた水を自分のハンカチで拭こうとされたそうです。

それを目にしたホテルの従業員は、慌ててトイレの清掃担当者を呼ぼうとしました。

すると、吉田総理がこんなふうに仰ったといいます。

「洗面台の水はねを拭くために、いちいち担当者を呼んでいては仕事にならないでしょう。

一流ホテルが一流である証は、従業員の手によって、トイレがいつもきれいであることではありませんよ。

手を洗ったあとに、洗面台を自分で拭くのが当たり前だと思うお客様が常連であることが、本当の一流ホテルの証なのではないでしょうか」

(ダイヤモンド・オンライン)

つまり、そもそもの目線が違うわけです。

ブラック顧客が存在するのは、サービスを受ける側の問題でもあるが、それよりも与える側の問題だということ。

ブラック顧客を持ってしまう体質そのものが、結果として組織そのものをブラック企業の体質に近づけているということです。

つまりは「類は友を呼ぶ」ということ。

 

だからこそ、組織全体が一致団結して遂行する必要があるのです。

とは言え、結局は「顧客と自社の関係性を良好に保つこと」で解決できることばかり。

おそらくほとんどの方が、頭でも身体でも分かっていることだと思います。

しかし、プロジェクトの進行にあたり、このあたりを意識なく仕事をしていくと、顧客の「ブラック化」が減ることはないでしょう。

 

組織で働く人間にとって、以上のような話は「どちらでもいい」という話かもしれませんが、突き詰めていくと、国民全員が楽しく、豊かにあり続けるためには「ブラック顧客」を減らしていく必要もあると思うのです。

あなたの嫌いなブラック企業とブラック顧客は、意外に身近なところにあるのかもしれません。

 

【プロフィール】

名前:丸山享伸

会社に依存せず楽しく働きたい経営者。アイアンマン好きな2児の父です。

WEB制作会社(UNIONNET Inc.)の代表として「小さな会社の経営者の本音」をつぶやいたり・書いたりしてます。

twitter ▷ @maruyaman1984

note ▷https://maruyaman.net/

(Photo:Herry Lawford)