こんにちは。コワーキングスペース「Basis Point」の運営会社、Ascent Business Consulting代表の北村です。

最近「仕事における創造性」について、議論する機会がありました。

そこで、1つ興味深い議論があったので、共有したいと思います。

 

システム化、機械化の流れが、マニュアルワークの価値を下げていることは、多くの人がご存知でしょう。

かつて雇用の大きな吸収源であった、誰でもできる仕事としての事務職は、風前のともし火です。

参考:人手不足なのに給料が上がらないのは、経営者の強欲のせいではなく、仕事に要求される能力が高くなったから。

 

仕事は難しくなる一方で、ルーティンワークしかできない人は、豊かな生活を手にできない。

これが続けば、世の中はあまり健全な方向に向かわなくなってしまいます。

 

この状況に対して、有効な手立ては2つ、あります。

一つは社会保障を厚くして、再分配をもっと進めること。

最近ではベーシックインカムの前衛的な議論も見られます。

 

しかし、社会保障を手厚くするだけでは解決できないことがあります。

それは、社会的な承認の問題です。

人はパンのみで生きるわけではなく、お金の心配をしなくていいからといって、社会が認めてくれない状態は、本当に辛いものではないでしょうか。

現状の B Iのシステムでは根本的に解決できないある問題が存在する 。というより 、むしろ B Iではこの問題を解決するどころか余計に深刻化させてしまいかねない 。それがおそらくは B Iの致命的な欠点となるだろう

。仮に国家規模で恒久的な実施が決まったとしても 、中長期的な継続を困難にしてしまい 、最終的に B Iそのものを頓挫させてしまうのではないかと考えている 。(中略)

B Iによってもたらされる 「余暇 」には 、承認 (獲得手段の格差およびその結果 )の格差を拡大する機能があるともいえる 。

金銭的な飢えからは脱却できるかもしれないが 、 「社会的な存在としての肯定 」の飢えからは脱却できず 、むしろその飢餓の度合いを深めることになりかねないだろう 。

 

したがって、我々は二つ目の方法についても、検討する必要があります。

それは、「誰もが創造的に働くことができるようにする」という試みです。

 

絵空事でしょうか?

私はそうは思いません。人の適応力は、思った以上に高いのです。

 

例えば、人類の認知能力、すなわちIQは、ここ50年でかなり高くなっています。

キングス ・カレッジ ・ロンドンの研究チ ームは 、過去 6 4年間に 4 8カ国で実施された知能検査のデ ータを集めて分析し 、 1 9 5 0年から I Qの平均値が 2 0ポイントほど上昇していることを指摘しています 。

原因は様々な要因が絡んでいるでしょうが、人間が急に頭が良くなった、というより、現代の知識社会に、人間が適応していったと考えるのが適切でしょう。

人は農業から工業へ、工業からサービス業、情報産業へ素早く適応してきました。

移行期には若干の混乱がありつつも、つねに人類は適応を繰り返し、全体としてはうまく対処してきているように感じます。

 

とすれば、現代は創造性をすべての人が持てるように、適応を迫られていると考えても、何もおかしなことはありません。

 

 

ではどうすれば、誰もが創造的に働く世界を作ることができるのでしょう。

「だれもがイノベーターや、芸術家になれるわけじゃない」との反論もあると思います。

ですが、創造的という言葉には、世界で無二のものを生みだす、という意味だけではありません。

 

むしろ、仕事で創造的な、というところに限定をするのであれば、誰にとっても可能なことだと、私は考えます。

なぜならば、具体的には、創造的な仕事は、以下の条件を満たすものだからです。

1、仕事のやり方は決まっていない

2、課題を設定する

3、それを解決するために試行錯誤する

 

これさえ満たしていれば、その仕事は創造的といって差し支えないと思います。

これはドラッカーの言う知識労働の定義そのままです。

 

そして、ここでとりわけ重要なのは「試行錯誤」の部分でしょう。

創造的な仕事は、芸術、科学、スポーツなどと同じく、飽くなき試行から生まれます。

スタートアップなどでは「試せ、試せ、試せ」というフレーズが使われることがありますが、マニュアルワークではない仕事は、必ず「試すこと」が必要となります。

 

例えば、任天堂を今日のグローバル企業に押し上げた立役者の一人、「ゲームウォッチ」「ゲームボーイ」などを生み出した、横井軍平は、こんな事を言っている。

アイディアを出すというのは、簡単そうで難しい仕事だ。アイディアに富んだ人間を自負する人の赤には、ただその場の思いつきを、考えなしに話しているだけの人がいる。

これはアイディアとは呼べない。

浮かんできた思いつきを検証してみれば、1000のアイディアのうち999は使いものにならないことがわかるはずだ。

999のだめなアイディアをいかに早く没にして、残りの1に到達するか、これがアイディアを出せる人間だ。

横井軍平は、創造的な仕事の本質を早くから見抜いていました。

 

 

しかしながら、このような「試行錯誤」は、個人レベルでの取り組みだけではうまくいきません。

なぜなら、創造的な仕事を社員にやらせるためには、「試すことが奨励される」「失敗してもキャリアが損なわれない」などの企業風土が必要だからです。

 

例えば、Googleは、創造的な仕事をする上でチームのアウトプットが、心理的安全性に依存することを突き止めています。

「効果的なチームとは何か」を知る

Google のリサーチチームが発見した、チームの効果性が高いチームに固有の 5 つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性です。

リサーチ結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、Google からの離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多い、という特徴がありました。

これは、誰もがパフォーマンスを、高められる方法の一つとして、あらゆる会社に採用可能な方法論だと言えます。

 

また、奇しくも前述した横井軍平も、全く同じようなことを任天堂内で試みていました。

私は任天堂時代は、会議で新人の口を以下に開かせるかということをずいぶんと考えました。

若い人が「私なんかが発言したって……」と萎縮してしまったらもうおしまいですから。宴会みたいな会議をしてみたり、自分からあえてばかばかしいことを口にしてみたりとか、ずいぶんと工夫しました。

私の新入社員時代は、私みたいな若造の言うことを反対する人がいなかったわけですから、それと似た環境を上に立つ人間が作ってやらなければいけないんですね。

つまり、「創造的に人に働いてもらう」ための環境をあらゆる会社のマネジメント層が意識的に作り出せば、一部の天才だけではなく、「皆が創造的にはたらくこと」が可能になることが実現できるのではないでしょうか。

 

したがって、これから、企業は「一部の創造的な人物が、大量の無能な労働者を使う」のでは、絶対に競争に勝てません。

なぜなら「全員が創造的」である企業が100%、勝つからです。

 

皆様のお勤めの会社は、果たしてどうでしょうか?

 

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