久しぶりに『桃太郎電鉄』をプレイしました。

ニンテンドースイッチで2020年11月19日に発売されたばかり。

早期購入特典のファミコン版『SUPER桃太郎電鉄』が欲しかったので、ダウンロード版を予約購入していたのです。

 

『桃鉄』って、今さら遊んでみて面白いかなあ……けっこう時間かかるしなあ……なんて思いながら、とりあえず5年を選択。

対戦相手は、コンピュータが担当する、まめ鬼と餓鬼。

まあ、久しぶりの『桃鉄』だけど、このくらいの相手なら、軽くひねって気分良く眠れるだろう、と。

 

最初は順調でした。

目的地に連続して到着し、物件も順調に購入。

それにしても、まめ鬼、けっこう良いカード持っているのに使わないな、なんて思っていたのですが、3年目にいきなり出てきた仙人が餓鬼社長に16億円をプレゼント。

 

なんなんだそのゲームバランス破壊……20年くらいならいくらでもリカバリーできるというか、キングボンビー一撃で状況は一変するのですが、5年ってすぐ終わってしまう。

しかも、まめ鬼社長は貧乏神を連れて延々と東京近辺をウロウロしているので、餓鬼社長をボンビーで破滅させることもできない。

 

少しずつ追い上げるも、結局、16億円の効果は大きく、餓鬼社長に負けてしまいました。

なんなんだこの運ゲーは……と言いたいところなのですが、こういう理不尽さも『桃鉄』がボードゲーム、パーティゲームとして長く愛されてきた理由でもあるのです。

 

慣れている人、強い人が突然のアクシデントに遭い、初心者がイベントで一発逆転することもある。

それでも、総合的には、上手い人が勝つ可能性が高くなっている。

 

先日『モノポリー』を子どもたちと遊んでいたのですが、ボードゲームって、最後は「負けがほぼ確定している状況で、決定的に負けるまで辛抱してプレイする」という展開になりがちです。

『桃鉄』がこれだけ長い間愛されているのは、運と実力のバランスが絶妙だから、なのだよなあ。

 

それでも、餓鬼社長に負けたら、「俺の5年間を返せ!」みたいな気分に、少しなってしまいました。

実際に遊んだのは1時間程度なのですが。この「勝てるはずなのに勝てない悔しさ」も懐かしい。

 

グラフィックが変わってしまったのは、昔からやっていた人間としては寂しいけれど、令和になっても『桃鉄』はやっぱり面白い。

ただ、対人プレイはちょっと苦手ではあります。

 

 

『ゲームの企画書(1) どんな子供でも遊べなければならない』(電ファミニコゲーマー編集部著/角川新書)という本のなかで、『桃太郎電鉄』について、生みの親である、さくまあきらさんと桝田省治さんが語っておられる話が、すごく面白かったのです。

 

『桃鉄』って、これだけ長い間みんなが遊んでいて、『アメトーク』でもテーマになったくらいなのに、「すごろくの延長+キングボンビー」という感じで、その「ゲームデザインのすごさ」について、考えたことはありませんでした。

この本に収録されている対談を読んで、万人が遊んで楽しくなるようにするための工夫やバランス感覚、さくまさんの『週刊少年ジャンプ』での経験の積み重ねが、『桃鉄』を支えているということがわかったのです。

 

さくまさんは「全体を統括している」というか、おおまかな意見を述べるくらいで、「このゲームの象徴」みたいな立場で名前を出しているだけだと僕は思っていました。

でも、この本を読めば読むほど、さくまあきらという人がいなければ『桃鉄』は生まれなかったし、多くのメーカーからコンシューマーでのすごろくタイプのボードゲームの作品が出たにもかかわらず、いずれも『桃鉄』になることができなかったのは、さくまあきらがいなかったからなのだな、と痛感せざるをえないのです。

――桝田さんにとって、さくまさんから学んだことで印象深いことはありますか?

桝田:うーん、ちょっと誤解を招く言い方かもしれないけれど、「バカの愛し方」かな(笑)?
やっぱり、さっきも言ったけど、さくまさんは「普通の人」のことを本当によく知っているんですよ。ゲームなんて上手くないし、少なくともゲームを楽しんでいる間くらいは、難しいことなんて覚えたくないし、考えたくもない。

そういう人間は、世の中にはたくさんいるんです。その存在を頭で理解したと思うのは簡単なことだよ。でも、さくまさんは、「ジャンプ」の読者ページで毎週毎週、みかん箱に何箱とあるような――それこそ何千万通もの「普通」の子供らの葉書に向きあって、それを肌で体感してきたんだよ。

僕も最初に彼らの葉書を見せてもらったときには、ビックリしたんですよ。だって、「ジャンプ」の葉書コーナーに載せてほしいのに、ペンで書いてこないことだけでも驚くのに、消しゴムすら使わないんだから。彼らは、指でこすって消すんですよ。そして、JBS放送局のJを「し」と書いてたりね。

 

さくま:「頭がイイ人」には、彼らの気持ちがわからないんですよ。
あの子たちは、説明書を読まないとできないようじゃ、ダメなんです。だから、読まなくても進められるものを作りました。

サイコロを振って矢印の方向に進めばプレイできるのも、それが理由です。『桃鉄』を作るときには、考えるのが苦手な子でも遊べて、でも、戦略がある人はもっと上手くプレイできるというバランスで作るんです。とにかく、僕は説明書とか攻略本を買わなきゃいけないものにして、彼らが遊べない作品にはしたくないんですね。

そうか、『桃鉄』が「だれが遊んでも楽しめる」のは、さくまさんの経験にもとづく「哲学」によるものなのか……

「みんなが楽しく遊べるように」って言うのは簡単だけれど、ゲーム制作者は一流大学を出ていたり、ゲームが大好きで上手だったりと、自分では意識しないまま「難しいゲーム」をつくってしまいがちなのです。

 

正直なところ、僕もこうしてわかったようなことを書いているのですが、この「普通の子供たちの世界」を理解できている自信はありません。

あまりにも「普通に面白い」ために、僕がその背景にあるものに踏み込もうとしなかった『桃鉄』は、「すごいゲーム」だったのです。

 

今回のスイッチ版も、「やっぱり桃鉄」で、「普通に面白い」。

一時はシリーズ終了、なんて話も出ていたけれど、こうして令和になっても、『桃鉄』は愛されているのです。

 

ファミコン版の『SUPER桃太郎電鉄」を遊んでいた頃の僕と同じくらいの年齢に、僕の子どもがなってしまったのだな、というのも、感慨深いものがありますね。

 

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【著者プロフィール】

著者:fujipon

読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。

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