先日我が家で、食洗機を回すタイミングについてすったもんだあった。その結果

「報・連・相はむしろ上司が部下にすべきこと」

だと気づいたので、みなさんと共有したい。

 

部下に対して「報・連・相をしっかりな」と言っている管理職の方や、「あいつはもっと俺にいろいろと話すべきだ」と後輩に不満を抱えている先輩方に読んでいただければと思う。

 

我が家で起こった食洗機騒動

我が家には、「料理しなかった方が食器や調理器具を片付ける」という鉄の掟がある。

以前共同キッチンの学生寮で同棲していたとき、料理がめちゃくちゃ面倒くさかったので、「料理した人は片付け免除」ということで家事を分担していた。

 

引っ越した現在も、このルールは変わっていない。

これがないと、お互い「片付けが面倒だから料理したくない」と外食して出費が増えてしまうからだ。

というわけで、「料理したら片付けなくていい」という取り決めのもと、我が家の家事分担は成り立っている。

 

さて、ここからが本題。

日曜日のお昼はたいていわたしが料理をつくるから、食後、食器を下げて使い終わった調理器具を食洗機に入れるのは彼の仕事だ。

 

だがしかし、彼はなかなかそれをやってくれない。

なんどもなんども繰り返し「片付けて」と言っても、「ちゃんとやるから」と言って、夜までやらない。

夜ご飯をつくるとき「キッチン汚いじゃん! 料理できないよ!」という状態になってはじめて、重い腰をあげるのだ。

 

期待どおり片付けてくれない夫と、口うるさく催促する妻。

お互いいい気持ちになるわけがなく、どうしたものかと考えていた。

 

いやね、食洗機を回さないことが問題なんじゃないのよ。

午後に食洗機を回しておかないと、夜ご飯の時間までに、昼食に使ったお気に入りの食器や高性能のフライパンが洗い終わらない。

すると当然、夜ご飯をつくるときにそれらは使えない。

だから夜ご飯をつくる時に困る。

しかもドイツは騒音にうるさい国なので、夜はおいそれと食洗機を使えない。

 

夜になってから昼間使ったものを食洗機に入れる

→でも食洗機をつけられない→食洗機がいっぱいだから夜ご飯に使ったものを入れられない→キッチンに放置→そのまま就寝……となる。

 

朝起きて最初に見るのが汚れたキッチンというのが最高にイヤ。

だからわたしは口すっぱく、「早く食洗機を回してくれ」と言い続けていたのである。

 

食後すぐ食洗機をまわしてほしい理由を丁寧に伝えてみた

今月、彼が2週間ほど休暇を取っていたので、昼食を家でいっしょに食べる機会が増えた。

で、わたしがお昼ご飯をつくっても彼は食洗機を回さないので、夜ご飯をつくるときに調理器具が足りない。

そのうえキッチンが汚いまま寝ざるを得ず、朝起きると気分は最悪。

 

それが連日続き、イライラも最高潮。

彼としても、休暇中なのに妻に毎日「食洗機つけてよ」「まだやってないの」「もう夕方なんだけど」などと言われてうんざり。

これは良くないと、一度懇切丁寧に説明してみた。

 

「あのね? 『まだフライパンも食器もあるんだからあとで片付ければいいじゃん』って気持ちもわかるよ? でも夜ご飯のメニューによっては『この鍋が必要』とかってことがあって。だから夜ご飯前に、お昼使ったものは洗い終わっててほしいの。

夜になってから片付けたら、夜ご飯に使ったものを食洗機に入れられないから、キッチンが汚れたまま寝るよね。わたしはそれが気になって嫌な気持ちになる。

いつもわたしのほうが早く起きるから知らないだろうけど、毎朝起きて一番にするのがキッチンの片付けなんだよ。めっちゃ面倒くさいよ。でもそうしないと朝ご飯食べられないからしかたなくやってるわけ。

そっちがお昼ご飯作ってくれたときは、わたしはすぐに食洗機で全部洗うよね。そしたら夕方には洗い終わるから、夜ご飯作るときにまたフライパンとか使えるじゃん。

で、食べ終わったらすぐに食洗機に入れられるから、キッチンがきれいなまま朝を迎えられるでしょ。だからお昼ご飯終わったらすぐに食洗機を回してほしい。

それをやらないなら『料理をしたら片付け免除』ルールのメリットがわたしにはないから、料理する気がなくなる」と。

 

相手が期待通り動いてくれないのは自分の怠慢

もちろん、今までも似たようなことは伝えていた。

でもここまで事細かく言ったことはなかったかもしれない。

 

だって、「食洗機つけて」の一言で十分だと思ってたし。

「食洗機つけて」「OK」って会話が成立したんだから、やってくれればいいじゃん。そう思っていた。

 

しかし改めて彼と話すと、どうやらお互いの認識がちがっていたらしい。

わたしは、「食器や調理器具を次の食事までにふたたび使える状況にする」「キッチンをきれいに保つ」ことが目的で、そのための手段が「食洗機を食後すぐに回す」ことだと考えていた。

しかし彼は、「食器や調理器具を片付けて食洗機で洗うこと」が目的だと思っていたから、「食洗機をつけるのは午後1時でも5時でも変わらない」という認識だったのだ。

 

食器や調理器具なんてあるものを使えばいい、キッチンが汚れてても使うときに片付ければいい。

そういう価値観の彼が、わたしの「早く食洗機回してよ」というセリフに、「なんで『やる』って言ってるのに催促してくるんだ面倒くさい」と思うのも無理からぬことである。

 

相手に仕事をお願いするなら、「なぜ」「なにを」「どうやって」「なんのために」やるのかを、しっかり伝えておくべきだった。

それをせずに「自分の思惑通り動いてくれるだろう」と期待するのは、ちょっと自分勝手だ。反省。

 

報・連・相はまず、上司から部下に

これは、仕事でも同じことがいえる。

よく「報・連・相は社会人の基本」「マナーだからやって当たり前」「そんなこともできないやつは無能」なんて言葉を耳にする。

 

まぁ、気持ちはわかるよ。

でもなんで、「部下→上司」という矢印を前提に話しているんだろう。

むしろ、上司こそ、部下に報・連・相すべきじゃないんだろうか?

この食洗機騒動で、わたしはそれを痛感した。

 

もちろん、夫婦間に上下関係なんてない。

ただ家事はわたしがメインでやっているので、「仕事を振り分ける側」のわたしを「上司」、「仕事を振り分けられる側」として夫を「部下」に例えたい。

 

上司は部下に、「これをこうしておいてくれ」と言う。

そしたら部下は、「わかりました」とうなずく。

でも部下が必ずしも期待通りに働いてくれるわけではないので、「なんでちゃんとやってくれないんだ」という不満をもつ。

そこで、「問題があるならちゃんと言ってくれればいいのに」「わからないなら聞いてくれ」「もっと早く相談してくれれば」と、相手に報・連・相を求めるのだ。

 

でも本当は、順番が逆なんじゃないか?

まず上司が部下に、ちゃんと報・連・相すべきだったんじゃないか?

食洗機騒動では、わたしが「こういう理由で食後早めにキッチンを片付けて食洗機を回してほしい」と、彼にちゃんと連絡すればよかっただけの話だ。

 

16時すぎても食洗機がついていなかったら、「夜チキン南蛮を作るときにフライパンがひとつ足りなくなるんだけど……」と相談すればいい。

で、ちゃんとやってくれたら「これで夜ご飯作れる、ありがとう」と報告して円満解決。

 

「上司」であるわたしが「部下」である彼にちゃんと報・連・相しておけば、彼だって食後すぐに食洗機をつけてくれていたはずだし、イヤな思いをさせずに済んだと思う。

それを怠っておいて「期待通りにやってくれない!」というのは自己中だった。

休暇中にガミガミ口うるさく言ってごめんよ……。

 

理解してもらうための努力をしてはじめて、期待が許される

仕事を振り分ける側は、細々した説明をしなくても、「これやっといて」と言えば相手が自分の期待通りにやってくれると思いがちだ。

だって、「やって」って言ったんだから。やらないのなら相手が悪い。そう考えてしまう。

 

でもそれを言われた相手は、自分なりに「こうすればいいだろう」と解釈する。

そこには当然認識の差があるから、期待通りの結果にならないのもまた当然。

「それを防止するための報・連・相」というのもわかるけど、イチイチ部下が上司におうかがいをたてるのは効率が悪い。

最初から上司がちゃんと説明したほうがムダが少ないし、トラブルを減らすことができる。

 

相手に「報・連・相」を求めるのなら、まずは自分が相手に理解してもらうように務めること。

それをやってはじめて、「こうしてくれるだろう」と相手に期待することが許されるのだ。

 

まぁ、だからといって相手が必ずしもその通りにやってくれるわけではないんだけど。

それでも順番としては、仕事を頼む側がまず言葉を尽くすべきだと思うよ。

 

というわけで、無事においしいチキン南蛮がつくれました。

ごちそうさまです。

 

 

【お知らせ(PR)】

東京都産業労働局 からのご案内です。

東京都の公的サービス「デジナビ」が都内の中小・零細企業や個人事業主に対してIT導入補助金、デジタルツール導入助成金のご提案をお手伝いします


【都内中小企業向けデジタル技術導入促進ナビゲーター事業】
都内中小企業に対し1社につき1人専任の「ナビゲーター」がデジタル化のアドバイスを行い、経営課題の解決に向けた最大5回のサポートを無料でおこなうものです。


業種別デジタル化成功事例を公開中
<医療業>  クラウドストレージを導入し、業務に必要な情報を共有化
<運輸業>  デジタルとアナログの両輪体制による健康経営への道
<卸売業>  クラウドサービスの活用で全国の情報交換が円滑に
<建設業(建築)>  システム導入で本来の仕事に専念
<建設業(設備)>  ICTの活用で残業のない働き方を実現
<建設業(土木)> 設計から施工まで一気通貫でICTを導入
<製造業> デジタルサイネージで従業員との熱意をつなぐ
<不動産業> 効果的なICTを実現し、顧客視点の全員参加経営へ
<福祉業> 医療連携と最新のICTで利用者の健康を守る
<飲食業> POSレジとキャッシュレスツールで作業負担を軽減


詳細は東京都産業労働局サイト都内中小企業向けデジタル技術導入促進ナビゲーター事業をご覧ください。
お申込みフォーム→ 都内中小企業向けデジタル技術導入促進ナビゲーター事業 参加申込ページ

(2024/1/22更新)

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

Photo:Ria Baeck