こんな状況で、飲みに行くことも無理なので、相変わらず友人たちとオンラインゲームをやっている。

やり始めて大体1年程度が経過したのだが、たぶん私には根本的にゲームのセンスがないのか、一向にうまくならない。

相手プレーヤーからすれば、いいカモだろう。

 

それでも、友人たちとチャットしながらゲームをするのは、飲み会などと同じく、楽しいものだ。

 

マナーの悪いプレイヤーの存在

ところが、こうした楽しいゲームに水を差す「マナーの悪いプレーヤー」をちらほら見る。

例えば「死体撃ち」行為などだ。

 

死体撃ちというのは、キルした相手に対して、さらに銃弾を撃ち込む行為で、対戦型のゲームではよく見かける煽り行為なので、大半のプレーヤーに嫌われている。

悪質だと運営に通報され「荒らし行為」だと認定されれば、アカウント停止の処分を受けることもある。

対戦型のゲームは、本質的にはどれも「戦争ごっこ」なので、熱くなるのはわからないではない。

が、楽しむためのゲームの場で「マナーの悪い輩」は御免である。

 

子供がやっているのかと思ったら、大人もだった

そして、こうした煽り行為は、小中学生などの子供がやっているかというと、どうやら子供か大人かは関係ないらしく、

「大人でも、やる人はやる。煽るヤツは、ネット掲示板とかにたくさんいるでしょ。」

ということだった。

 

大人が「煽り行為」をやっているのを想像すると、得も言われぬ気分になるが、とにかく、そういうことだった。

 

だが、そういわれてみると、これは決して、ゲームの中、あるいはインターネットに限った話ではない。

思い起こせば、企業の中でも、実生活でも、「無礼なヤツ」は頻繁に見かける。

 

例えば、私が昔客先でみた営業の主任は、まさに「死体撃ち」をする奴だった。

とにかく営業成績が下位のプレーヤーを、皆の前でぶった切る。

「本人のため」という建前のようだったが、どう考えてもあればサディスティックな喜びを得たいがためにやっていたとしか思えない。

 

あるいは昔、飲み会で「年収は?」とか聞いてきた投資銀行勤めの人物。

「私は新卒の時すでに1500万だったwww、みんな給料安いねwww」

とマウントをとり、煽っていた。

 

たしかに、ゲームの中だけでも、子供だけでもない。

いい大人でも、やる人はやるのだ。

 

バッドマナーは、人を殺害する

煽ってくる人物が、赤の他人であれば、こうしたバッドマナーは「切り離せばよい」だけで、特に実害はない。

通報、ブロック、ブラックリストに入れ、あるいは、二度と遊ばなければいいだけの話だ。

 

ところが、会社やチームなど、「その人と付き合わざるを得ない」コミュニティの内部にこのような人物がいるのは、大きな問題だ。

なぜなら、上のような無礼な輩は、コミュニティの雰囲気を著しく悪化させ、周りのパフォーマンスを落とすからだ。

 

これは、調査研究からも示されている。

17の業界の800人の管理職、従業員を対象に、私が同僚のクリスティーン・ピアソンとともに実施した調査では、職場で誰かから無礼な態度を取られている人について次のようなことが言えるとわかった。

・48パーセントの人が、仕事にかける労力を意図的に減らしている。
・47パーセントの人が、仕事にかける時間を意図的に減らしている。
・38パーセントの人が、仕事の質を意図的に下げている。
・80パーセントの人が、無礼な態度を気に病んでしまい、そのせいで仕事に使うべき時間を奪われている……

出典:クリスティーン・ポラス 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である(東洋経済新報社)

たとえその人物がトップ営業であっても、これほどのデメリットは看過できない。

 

それだけではない。

バッドマナーは、関係者の「健康状態」をも、著しく悪化させ、人を殺するのだ。

テルアビブ大学のアリー・シロムらは、職業の様々に違う(金融機関で働く人もいれば、工場や医療機関に勤務する人もいた)820人の大人を20年にわたり、追跡調査した。(中略)

勤務時間の長さ、仕事の負荷、与えられている権限、裁量の大きさなどは、直接、寿命の長さには影響していなかった。重要だったのは、ともに働く人たちの態度が協力的、友好的かどうかだった。

また、職場に友好的でない人がいると、死亡リスクが高まることもわかった。たとえば、中年と呼べる年齢の会社員の場合、同僚が友好的でない人は、友好的な人に比べ調査期間だけで約2・4倍の人数が死亡している。
(太線は著者)

要するに、健全なコミュニティ運営のためには、コミュニティ中に存在する、無礼を、放置してはならない。

「自由でオープンなコミュニティ」とか「多様性が重要」とかそうした都合のいい言い訳に耳を傾けず、厳しく取り締まるのだ。

 

コミュニティの運営を「マナー」や「性善説」には頼れない

もちろん、そういう輩はごくごく一部だ。

大半の人間は礼儀だだしく、大人としてふるまう。

 

実際、「死体撃ち」をゲーム内で経験するのも、1日中やっていて、1度あるかないか、というくらい。

体感的には、ゲームでも会社の中でも、だいたい1/100くらいの割合だろうか。

コミュニティの性質にもよるが、もっと少ないかもしれない。

 

しかし、逆に言えば、1/100はそういう人間がいて、コミュニティを台無しにしてしまう。

しかも、そのような状況では「やられたらやり返す」人が発生し、そのようなマナーの悪さが次々と伝染する。

 

だから、組織運営は基本的に、「性善説」では回らない

これが、数多くの組織を見てきた、私の結論である。

 

人が増えると、一定数は必ず「やらかす奴」が出現し、それがコミュニティの雰囲気を左右し、組織のパフォーマンスに影響を及ぼすようになる。

彼らは忠告を無視し、問題行動を繰り返す。

だからコミュニティの治安を「マナー」とか「自主性」にゆだねることはやってはならない。

絶対に「ルール」が必要である。

 

そういえば、最近、こんなニュースを見た。

入国後の待機で違反、1日最大300人…自主隔離場所から離れる・位置情報報告せず(読売新聞オンライン)

政府は12日、自民党の外交部会などの合同会議で、海外から帰国後、保健所に位置情報を報告しなかったり、自主隔離の場所から離れたりする人が4月は1日最大約300人いたことを明らかにした。

「自主性」に任せれば、当然の結果だろう、と思う。

 

もちろん、「自主隔離」には大半の人が応じているのだろう。

が、ルールで制約しなければ、バッドマナーは必ず一定の割合で発生する。

 

それをきちんと取り締まらなくては、「正直者がバカを見る」世界はなくならない。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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Photo by Ivan Lapyrin