「面倒な客」に対処はするが、相手はしないアマゾン
Twitterで、「アマゾンの置き配はすごい」という記事が話題になっていた。
アマゾンの「置き配」、じつは「クレーム対応」に“ヤバすぎる秘密”があった…!
当然のことながら荷物を置きっぱなしにすることで、盗まれる、壊れる、雨に濡れてダメになるなどのケースが発生します。アマゾンはそれを前提にしてしまったうえで100%補償したほうが安いじゃないかと考えたわけです。
つまりAmazonの理屈を単純に言うと
「置き配が標準だよ。トラブル起きたら代品送るよ。いらないならとりあえず金は返すよ。」
つまり、トラブルは一定確率で起きる、と言うのが、標準なのだ。
ただ、そのような対応を嫌がる人もいる。
Twitterには、「信用できない」とか、中には「誤配を謝罪せよ」というコメントもあった。
ご不快の念をおかけし申し訳ございません。
配送業者がAmazonになった場合は置き配を標準配送としております。置き配をご希望されない場合は、お手数ですが注文時に「置き配を利用しない」をご選択くださいますようお願いいたします。 https://t.co/sR8gJ6kyzA (https://t.co/nECLKYmwMc) 船田— Amazon Help (@AmazonHelp) June 29, 2021
日本郵便 「置き配」保険導入へ#Yahooニュースhttps://t.co/uxAmMvIM67 受取人が承知していれば置き配は成立する。ただ誤配でも謝罪しないなど、人間の道に反するのはこの制度が成立しない。誤配を謝罪しないアマゾンの配達はおかしい。
— fmds@hm.aitai.ne.jp (@fmdshmaitainej1) June 29, 2021
なるほど。
まあ「客」だから、何を選ぶかは自由である。
ただ、「きめの細かい配送」やら「謝罪」やらは、本質的にすさまじいコストがかかる。
Amazonの対応が嫌なら、きめの細かい配送をしてくれて、誤配に謝罪してくれる、他のECをさっさと使えばいい。
Amazonは、所詮は「無料配送」なのだし、経験的には、Amazonでは誤配はそれほど多いわけでもない。
個人的には、対Amazonと言うよりも、不在の時に何度も再配達をしてもらうのが、運送会社さんに本当に申し訳なかったので、「置き配」は歓迎。
なくなったらAmazonに補償してもらう。
それが合理的だと感じた。
この人と同じ感想だ。
Amazon置き配指定してないのに勝手に置いていってくれるあたりマジ助かるわ〜
— バスキア君 (@aimai3m) June 24, 2021
逆に、私が今までで一番ダメだと思ったのが、某キャリア系のECサイトだ。
今はどうなっているのか知らないが、当時はいつまでたっても商品が届かず、ステータスも不明、サポートに電話しても、「直接お店に問い合わせてください」の一点張り。
「お店からレスポンスがないから、サポートに連絡してるんだろう」と言っても「うちではわかりません」とのこと。
そういう「EC側は意地でも補償しないぞ」といった態度と、「トラブルのたらいまわし」が、一番困るし、時間を無駄にさせられたと感じる。
もう二度と使わない、と思った。
そういう経験をしていると、「素早いトラブル対応」は、とてもありがたい。
知人がAmazonのセールでゲーミングPCを買った時には、という。「理由をちょろっと聞いて、さっさと交換」してくれたという。
Appleも、ストアに故障品を持ち込んだら、爆速で交換に応じてくれた。
これは、素直にとらえると、「良い顧客体験」となる。
だが、裏を見れば、これらはAmazonと同様に「面倒な客の相手をするコストよりも、交換のコストのほうが低い」という話なのだ。
「面倒なヤツの相手してる時間」は、とてももったいない
そしてこの、争わず、「対処」しておくという態度。
これは、大変実効性があり、私生活でも使える。
「愚痴ばかりの同僚」「やっかいな知人」や、「迷惑な親族」たちとの付き合い。
彼らには、Amazonのように「対応はするけど、相手はしない」が有効だ。
実は、「毒親(Toxic Parents)」という言葉の生みの親、スーザン・フォワードは、その原則について述べている。
「毒になる親」と向かい合って話をするために絶対に身につけていなければならないのが、この「自己防衛的にならない対応の仕方」である。
これこそが、「争いのエスカレート」というまったく無意味であるにもかかわらずだれもがくり返す悪循環を断ち切ることのできる唯一の方法なのである。
その対応の例をいくつかあげればつぎのようなものだ。
■「ああ、そうなの」
■「なるほど」
■「それはおもしろい考えだね」
■「あなたがどういう意見を持とうと、もちろんあなたの自由ですよ」
■「あなたが賛成してくれないのは残念ですが」
■「それについてはもう少し考えさせてください」
■「これについてはあなたがもう少し冷静な時に話しましょう」
■「がっかりさせて申し訳ないけど」
■「あなたが傷ついたのは気の毒だけど」
要するにこれらの言い方は、相手に「何も求めない」(=相手にしない)言い方だ。
結局、「面倒なヤツと関わらない」ことが、時間を無駄にせずに済む、唯一の行動様式なのである。
かつて、私が一番「面倒だ」と感じた同僚のコンサルタントは、すでに決定されたルールに対して、
「やりたくないっすねー」
「効果あるんですかねー」
「お客さんのためじゃないですよねー」
と、「自分が納得してないので、やらない」という論理をもって、愚痴る人物だった。
だがこれは会社員の態度としては失格だし、愚痴るくらいなら、決まる前に言え、と皆は内心、思っていた。
だから、周囲のコンサルタントは皆、彼を相手にせず、「あなたがどういう意見を持とうと、もちろんあなたの自由ですよ」という趣旨の受け答えをして、放っておいた。
そして案の定、その人物は成果が出ず、すぐに会社を出ていった。
*
すでに世の中は、コストがかかりすぎる「面倒なヤツ」を処理しつつ、相手にはしない、という流れに傾いている。
とはいえ。
そこに商機を見出す商売もある、というのが、人の世の面白いところだ。
→ ヤマダHD会長「アマゾンさんは勝てませんよ、この業界では」
「相手をしてもらいたかったら、相手を楽しませるか、もしくは余分に金を払う。」のどちらかなのだろう。
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(2024/1/22更新)
【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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