世の中には様々な面白いものがあるが、個人的にいまホットだと思っているジャンルの一つに靴がある。

 

靴が面白いなと思う理由の一つは履き心地が如実に異なるという事だ。

僕はあまりファッションに興味がなく、靴も「どれもそんなに履き心地は大きく変わらんやろ」と思っていたのだが、オールバーズのTree Dasherという靴を履き自分の考えがとんでもなく誤っていた事を認識した。

オールバーズはいわゆるシリコンバレーな企業の一つで、サステナビリティーをかかげてブランディングをしかけている企業である。

僕はこの手のエコ推しみたいなのが胡散臭くて嫌いなのだが、まあ物は試しにとショップに出かけ、試着してみてマジで衝撃をうけた。

 

何が凄いって、とんでもなく地面へのグリップ感が柔らかいのだ。

それまで色々な靴を履き、多少は硬いとか柔らかいとか思う事はあったが、ここまでフワッと地面を捉えるような履き心地を経験した事はなかった。

 

Tree Dasherを履くと、むしろ今までの靴とか硬すぎだろフザケてんのか!と一喝したくなる位には優しい包容感で溢れている事を実感する。

どんな感じかは是非履いてみて体感してほしいのだが、アスファルトがオフトゥンのように柔らかく感じることは請け負おう。

 

こう書くとなんだかオールバーズの回し者のようで嫌なのだが、30日以内ならば無条件で返品可能のようだし、ぜひ一度は試してみる事をオススメする。

ちょっとこれを経験しないままなのは損だ。

 

靴は機能面で楽しむには未だにかなり安上がりなジャンル

世の中には様々な素晴らしいものが満ち溢れているが、靴は機能面に限って言えば随分と安上がりなジャンルである。

 

先程紹介したオールバーズのTree Dasherという靴は一万円程度だ。

靴一足一万円を安いと取るか高いと取るかは人それぞれだろうが、あの唯一無二の履き心地を考えると個人的にはかなり安いように思う。

 

体験は人生を豊かにするものの一つだが、最高峰のものはだいたいとんでもなく高くつく。

例えばワインの最高峰となるとロマネコンティで一本200万円だ。ホテルなら一泊ウン十万はする。

車や自転車となると、数百万円はザラだ。

 

そう考えると、靴は未だに物凄く安上がりなジャンルである。

もちろん革靴やらファッショナブルな方面やらでトンデモなく高くつく領域も一部に存在はするが、こと履き心地という面では領域をキチンと狙い定めればまだ価格差はそこまで激しくない。

ウォーキング・ランニングシューズ界隈だと最高峰でも2万円までが関の山だ。

 

世の中には、このようにキチンと選べばそこまで馬鹿みたいな金額を出さずとも楽しめる最高のものというのは結構ある。

例えば漫画なんかは下手したら世界最高レベルの作品がコンビニで立ち読みできてしまったりするわけで、現代社会においては質の高いモノに触れられるか否かはお金云々というよりも本人の心がけ次第だったりする。

 

現代は実に豊かな社会である。

資産が数億円ある人間であろうが普通のサラリーマンであろうが、口にするものはほぼ同じだし、選択肢にもそう大差はない。

いいものをアッパーな階級が全て独占できるというわけではないというのは、改めて考えてみるとかなり凄い事だろう。

 

そういう意味では、今の時代はかつて無いほどにセンスが問われる時代だともいえよう。

これはこれで「能力主義は正義か?」みたいな話になってしまうのかもしれないが……

 

いい道具を触るのは楽しい

いい道具が素晴らしいのはそれを触ること自体が楽しいという点にある。

 

かつて将棋に興味を持っていた時、昭和の大名人である故・大山康晴十五世名人が書かれた本の中で初心者に向けたアドバイスとして「よい道具を買え」と言っていて妙に感心した事がある。

その真意は以下のような理屈だったように記憶している。

「いい道具を持つと使いたくなる」

「そうやって将棋に触れる機会が増えれば、上達のキッカケになる」

「だから初心者ほどいい道具を買いなさい。それが上達への一番の近道だ」

<参考 『勝負のこころ』>

いい道具を持つと使いたくなるというのは間違いなく事実である。

そういう意味では靴はダイエットとか運動を始めようと思っている人こそ、良いものを買うべきだ。

 

人間、頭でどんなに運動をした方がいいとわかっていても、どうしても億劫になってしまう生き物である。

痩せるとか健康にいいという曖昧な動機では運動へのモチベーションはなかなか高まらないが、歩く事自体が気持ちよいとなれば随分とまた話は変わる。

 

そういう意味では靴も良いものを使うのは当然として、複数種類の履き心地を持つものを持っていると、いい気分転換になる。

先程はオールバーズの靴をオススメさせてもらったが、個人的な推しがもう一つある。

それはメレルのVapor Glove 5だ。

 

まるで地面に脚が吸い付くような履き心地。メレルのVapor Glove 5

オールバーズが驚きの柔らかさという唯一無二の体験をくれたのに対して、このメレルのVapor Glove 5は驚異の薄底で恐ろしく脚が軽くなる。

そして足裏の感覚がとんでもなく研ぎ澄まされる。

かつて武道の達人が「重心がコントロールできるようになると、脚が地面に吸い付くような感覚になる」といっているのを聞いたことがあるが、メレルのVapor Glove 5を履くと「あっ、こういう事か」と心の底から納得できる。

 

この靴はベアフットシューズといって、足先の付け根からの着地を良しとするように設計されたものだ(いわゆる普通の靴は踵からの着地を目的として設計されている)

 

だから初めて履いた人はとても不思議な感覚になると思うが、なれるとこれがもう病みつきになる。

体感的には歩幅が少し短くなり、脚運びのスピードが2倍速ぐらいになる。

「靴が変わるだけで、こんなにも歩き方に違いが出るのか」と驚くこと間違いなしだ。

 

ウォーキングでもいいのだが、このメレルのVapor Glove 5はランニングが素晴らしい。

これを履いて走ると、ふくらはぎと太ももが短時間のランでも物凄く効く。

靴底が薄いのであまりガンガン地面に打ち付けるように走ると膝を壊すので注意が必要だが、優しく接地するように心がければ非常にいい感じのトレーニングになる。

 

こちらも異次元の技術力が集約されているにも関わらず1万円程度で最新のものが買えてしまうのだから、やはり靴はとんでもなく安上がりなジャンルである。

 

脚の加齢は20代から始まるから、できる限り早めに鍛えた方が良い

健脚は健康の源である。

医学をやっていると嫌というほど痛感するが、自分の脚で歩けなくなってしまった人の衰える速度は早い。

 

では脚の加齢はいつから始まるかご存知だろうか?

答えは20代からである。

 

(出典:老年医学. 2010;47:52-57.

 

現代社会はとにかく歩く機会に乏しく、また座ってする作業が多い。

そんなもんだからなのか、意外と上半身の筋肉はそう衰えない。

だが下半身はそうもいかないようだ。

20代から男女ともに結構な速度で筋肉量の低下が始まる。

 

僕がこの図を最初にみたのは数年ほど前だが、まさか20代で老化が始まる部位が自分の中にあるとは思わず相当なショックをうけた。

とはいえイマイチ走り込んだりしようというモチベーションも起きず「どうしたもんかなぁ」と悶々としていたのだが、最近は毎日気分で上に書いた2つの靴を履き分けて、少なくとも強歩をするよう心がけている。

 

実際、運動は脳にいい。

単に脳機能が向上するにとどまらず抗うつ作用すらあるようで、年配の神経科学者らはほぼ全員がランニングをやっているというというのはこの業界にいる人間の公然の秘密となっている。

<参考 脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方>

 

いい道具で肉体をダメージから守りつつ、脳も筋肉も鍛える。

アンチエイジングというと何だか加齢にあがらっているようでみっともなく聞こえる部分もあるが、脚に関してはデータ上からも極力早いスタートを切るほうがよさそうである。

 

いつか一緒に、東京マラソンを走りましょう

最後に個人的な野望を書いて文章をしめよう。

 

つい先日、職場の人とランニングに関する話題で盛り上がった。

その中で驚いた事の一つに東京マラソンの当選率があった。

その人はもう10数年ほど走っているそうなのだけど、毎年応募しているにも関わらず、東京マラソンに一度しか当たった事がないのだという。

 

10数年応募して一度しか当選しないのなら…来年から応募し続けて、一回走れるかどうかである。

今から応募しないと、あのレースには生涯出れそうにもない。

 

人は困難を乗り越える事で一段上のステージへとあがる事ができる。

僕もこれまで色々な困難を乗り越えてきた。

それらは僕をとてもタフにしてくれた。

渦中にいた頃はヒーヒーいっていたが、まあ乗り越えたら皆全ていい思い出だ。

 

そういう意味では42キロのフルマラソンという困難を乗り越える事で自分の心にどんな変化がおきるのかに最近は興味が尽きない。

 

たとえ東京マラソンに当選せずとも来年に一度フルマラソンを完走してみようとは思っているのだが、それはそうとてやはり生まれ育った土地である東京の地を尽力を振り絞って走ってみたいという気持ちはある。

 

そんなわけで…もしよかったらいつか一緒に東京マラソンを走りましょう。

きっと素晴らしい思い出になるでしょうから。

 

 

 

 

 

【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

 

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