求人誌や新聞で「働き方のコラム」を書いていると……

たびたび、このような相談が寄せられます。

「上司が怖い!」「先輩がしつこい!」「同僚が冷たい!」

……こういう職場の人間関係で悩んでいる人は多い。

本屋さんには「人から好かれる方法」なんて本があふれている。

そういった類のセミナーだってバンバンやっている。

 

しかし・・・・どうも、嫌われている人は減っていないようだ。

この社会では、大勢の人に好かれる人こそ「一流」と考える人も多いはず。

 

マーク・ザッカーバーグ氏は、フェイスブックのデータ流出問題についての公聴会にて『完璧な謝罪』を繰り広げたと評判だ。

ザッカーバーグ「完璧すぎる謝罪」の舞台裏(東洋経済Online)

数千万人分のデータ流出というフェイスブックにとって最大の不祥事を受けて開かれた公聴会は、延べ10時間、100人から600の質問を受けるというまさに「千本ノック」状態。この難局をザッカーバーグ氏は、究極の「謝罪力」で乗り切った。

その謝罪は、単に「話すのが上手だった」ということではなく。

『どうすれば好感を持ってもらえるのか?』を熟知しているように見えた。

よほど好感を持ってもらえる立ち振る舞いを練習したのだろう。

人に好かれることでしか得られないチャンスもある。

 

では、ここで話を一流の世界から日本のゴミ溜めへと移します。

私が在籍していたブラック企業では『人に好かれる社員の育成』に力を入れていました。

目の前には、無表情で座る十数名の社員達。

「今から何をしてもいいから、全員を笑わせろ!」

社長がそんな理不尽な指示を出す。

社内ではレクリエーション的に様々なゲームが行われ、表向きはゲームの『敗者への罰』として、この教育は行われます。

この罰ゲーム、指定された人数が笑うまで絶対に終わりません。

出来るまで、何度でも何度でもやることになります。

 

さぁ……アナタならどうします?

目の前には無表情で座る十数名の社員達……

彼らをどうやって笑わせますか?

……実はこのパワハラ紛いの罰ゲーム、様々な意図を含んではいますが……

その本質は「面白いことをして笑わせる」ということではありません。

試されているのは……

『職場での好感度』なのです。

 

よく考えてみてください。素人が突然やらされる一発芸……

そんなものが面白いと思いますか?

確かに一部だけ、本当に面白いネタを繰り広げる猛者もいました。

……しかし、大半の人間の芸はつまらない。

当たり前です。

みんなネタを見て『笑ってあげるかどうか?』を決めているだけなのです。

ある一人の社員が、罰ゲームの為みんなの前でネタを披露した。

しかし・・・誰も笑わない。

なぜか?ネタがつまらないから?確かにそれもある。

しかし……誰にも笑ってもらえない理由は、

「みんなに嫌われているから」

に他なりません。

この時、100%本人も気が付く。自覚する。

(あっ…自分って嫌われているんだ……

それでも必死にネタをやっていれば、ある程度の同情票が買える。……チラホラと、笑ってくれる人も出て来る。

こうして、指定された人数全員が笑い……

罰ゲームが終わった後・・誰もが自分の好感度を噛み締める。

 

……そして考えるようになる。

(もっと人に好かれるには、どうすれば良いのか?)

自分から好かれている人をよく観るようになる。

そして気づく。学ぶ。

(笑っている人が好かれるんだなぁ・・・)

(前向きな人の方が話しかけられやすいんだなぁ・・)

とかね。

こうして……私は自分なりに学んだ『好かれる方法』を、誰に言われずとも、自分から実践するようになった。

 

このブラック手法のユニークなところは、平社員だろうが課長だろうが部長だろうが社長ですら、誰もが『平等に』この罰ゲームを定期的に受けていたところです。

誰もが平等だったからこそ不満も出ない。平等だから恨みっこナシ、笑いたくない時は笑わなかった。

 

それに、あくまで「ゲームの罰」ということにしてあるからこそ、
階級や年齢差も関係なく無礼講の色も強くできた。

ブラック社長が言うには……

この教育方法を導入してから、誰もが自分の好感度を意識し始めたそうだ。

 

すると職場の人間関係が円滑になった。

さらに営業の契約数も増え、クレームの数も劇的に減ったそうだ。

大きな声じゃ言えませんが・・・職場で嫌われている人って、
そもそも「自分が嫌われている」なんて自覚していなかったりする。

きっと「人に好かれる方法」なんて本も読まないのだろう。

そんな人に無理やり「お前は嫌われている!」と自覚させたとしても……

「嫌われる勇気!」とか言い出すだけ。

 

どう気付かせるか?どうやって自分から変わろうと思わせるか?ということが、教育の上で大切なことなのだと思う。

私が知るブラック企業の仕組みは、社内のイジメ、ケンカ、嫌味などの些細なトラブルまでにも常に目を光らせていた。

まともな給料を払えず、休みも少ないブラック企業だからこそ、社内の人間関係に対して、異常なほどの知恵と力を注いでいたのです。

だって人が辞めてしまったら、労働力から搾取できませんからね。

以上、クソブラック企業の『人に好かれる人材の育成方法』でした。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

著者名:ハルオサン

18歳で警察官をクビになってから、社会の闇をさまよい続けた結果、こんなことを書いて生活するようになってしまいました。

『警察官クビになってからブログ』⇒keikubi.co

ツイッター⇒https://twitter.com/keikubi123

Shena Tschofen