西日本の豪雨で、「被災地に千羽鶴を送るのは迷惑」という話を見かけた。
そういえば、災害が起きるたびに、この手の話題があがってくる。
実際に、現場はどう思っているのだろう?と考えていたところ、結論としては「個人からの支援物資は迷惑、役に立ちたいなら金を送れ」ということのようだ。
レスキューストックヤードでは、被災者と顔が見える関係でないのならば個人で自治体に物資を送るよりも義援金などの形でお金を送ったほうがいいと提言しています。物資などを送る際の注意点についてはホームページにまとめています。
http://rsy-nagoya.com/volunteer/sizai.html(NHK web)
大量の支援物資が逆に混乱を招く、というのは納得感のある話だ。
今回の豪雨で被害にあった倉敷市も「個人からの支援物資は受け付けてない」とツイートしている。
倉敷市からのお願いです。現在、倉敷市では個人の方からの救援物資を受け付けていませんが、真備町川辺橋前に沢山の支援物資が置かれており、自衛隊の通行の妨げになり困っています。お気持ちは大変ありがたいのですが、支援物資を川辺橋前に置かないようお願いします。
— 倉敷市 (@Kurashiki_City) 2018年7月8日
しかし、倉敷市のツイートのタイムラインを見ると、それに対しての不満が見受けられる。
「倉敷市が物資の受付場所を設置すればいい」
「水とかインスタント食品くらいは受け入れしたら?」
「市の公式がこの対応は何なの?」
「対応が遅いから皆、何か持って来るんだろ」
晒すことが本意ではないので、リンクは貼らない。
だが、市が「個人の支援物資は送るな」と言っているにもかかわらず、なぜ彼らは不満を持つのだろう。
おそらくそれは「やり方はともかく善意を認めて欲しい」という、一種の甘えから来ているのだろう。
「自分は一生懸命やっている」
「私も支援のため努力している」
「被災地のために貢献している」
彼らは「結果」より「自分の努力・善意」に意識が向いているのだ。
努力を評価して欲しい人がいる。
実は、こういう人たちは企業の中にもたくさんいる。
私は長いこと人事評価をやってきて、企業内でそれなりの給与をもらっているにもかかわらず、「努力を評価して欲しい人たち」というのが相当数いることに驚いた記憶がある。
「頑張ったのだから、認めてください」
「結果が全てではないでしょう」
「プロセスを評価すべき」
まあ、言わんとしていることはわからなくはない。
「結果がすべて」という世界に嫌悪感を覚える人は決して少なくはないのである。
しかし、一歩引いてみると、企業活動が「結果がすべて」であることには疑う余地はない。
「この企業は努力をしているから商品を買おう」という人は極めて稀だ。ほとんどの顧客はサービスや商品の質と、価格にしか興味がない。
そして、顧客からの支持がなければ企業は容赦なく退場させられるし、結果が全てだからこそ、進歩がある。
評価の対象に「努力」は含まれないのである。
そして実は「被災地支援」も同じである。
被災地の人たちが欲しいのは善意ではなく、役に立つ支援だ。
本質的には「支援する人の努力・善意」など、どうでも良い話で、「支援される人の役に立つかどうか」が真剣に問われるのが、被災地支援である。
「善意だから、多少やり方に問題が遭あっても支援を受け入れるべき」
こういう発想も一種の甘えである。
人のためになにかするのであれば「結果」が全て
もちろん、結果ばかりを問うべきではないシーンもある。
例えば子供に「結果がすべて」と、テストの点数ばかりを追求させ、勉強する努力を無視していたのでは、悪影響があるだろう。実際、
「テストで良い点を取ればご褒美をあげる」と
「本を1冊よんだらご褒美をあげる」
という2種類の声かけをした時、子供の学力向上に効果があるのはどちらなのか、という実験は、「努力を評価すべき」という結論となった。
この2種類の実験のうち、子どもたちの学力を上げる効果があったのはどちらでしょうか。
インプットにご褒美を与えると、子どもたちは本を読んだり、宿題をしたりするようになるのでしょうが、かならずしも成績が良くなるとは限りません。
一方、アウトプットにご褒美を与えることは、より直接的に成績をよくすることを目標にしているのですから、直感的にはアウトプットにご褒美を与えるほうがうまくいきそうに思えます。
しかし、結果は逆でした。学力テストの結果が良くなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちだったのです。
つまり、その人に「成長を期待する」のであれば、プロセスを評価すべき、という考え方は間違っていない。
だが、いい大人が仕事や被災地支援で
「頑張ったのだから認めてくれ」
「善意なのだから受け入れるべき」
という発言をするのは、繰り返しになるが、甘えである。
「働くこと」=「他者に貢献すること」は本来、自己満足とは程遠い概念である。
つまり、結果が出て初めて、「自らが満足しているか?」と問う資格が与えられる。
実際は、被災地支援も働くことも、人のために何かするのであれば「結果が全て」と厳しく認識しなければならないのである。。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
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・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
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【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
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