すいません、単なる私の好き嫌いの話なんですが。

 

「それ、役に立つの?」という言葉が嫌いです。

「何に使えるの?」という言葉が嫌いです。

 

割とどんなケースでもオールマイティーにこの言葉が嫌いなんですけど、これらの言葉が「趣味・娯楽」や「コンテンツ」に対して向けられた場合、嫌い度が更にパワーアップして、大体255倍くらい嫌いになります。

 

何が悲しくて趣味や娯楽を「役に立つかどうか」で測らないといけないんだよ、と。

役に立つかどうかで自分の趣味選んでねえよ、と。

娯楽に「実用」なんて物差しを持ち込むんじゃねえよ、と。

 

いや、勿論、「実益を伴った趣味」ってあります。

「楽しんだ結果、趣味以外のフィールドでも活用できる趣味」って、あります。

 

例えば、私は趣味で楽器演奏をしています。主に南米民族音楽、いわゆるフォルクローレの楽器を好んで演奏しておりまして、自分がSEだとかブロガーだとか言う前に「ケーナ吹きです」と自称する程度には、自分のことをケーナ奏者だと思っています。

 

で、アマチュアではありますが、例えばケーナを演奏してお金をもらったこともありますし、演奏を通じて色んな人と知り合ったり、ライブを開いたりライブに呼ばれたり、ケーナを演奏する代わりに結婚式でタダでご馳走を頂いたりということを考えると、私は確かに「ケーナという趣味」で実益を得ています。

なんなら、ケーナを吹くことで肺活量が鍛えられたり運動になったり、という側面もあるのでしょう。

 

筋トレを趣味にしていると、体力がつきます。

読書を趣味にしていると、読解力がつきます。

英会話を趣味にしていると、仕事でも役立ちます。

 

なるほど、「趣味が、結果として役にたつこと」「趣味が、結果として違うフィールドでも活用できること」というのはあるのでしょう。

「趣味が、皆が共通して認める価値に結び付くこと」があるのでしょう。

別に、それを否定したい訳ではないんです。役立てていいし、役に立つ趣味を楽しんでいる人がいていい。何の問題もありません。

 

けれど、私の本音で言うと、「だからどうした」と。「俺はそんな理由でケーナ吹いてねえ」と。

 

私がケーナを吹いているのは、間違いなく「ケーナを吹いていると楽しいから」です。

断じて、「色んな人と知り合えるから」ではありませんし、「ちょっとしたお金が稼げるから」でもありません。結果としてそういうものがついてくるのは全然構わないけれど、それは飽くまで結果であって、最重要なのは「楽しい」ということ、何なら他の理由が何一つなくても俺はケーナという趣味を選ぶ、と思っているんです。

 

頭固いでしょうか?

いや、別に、皆がそういうスタンスであるべきだ、ってことを言ってるわけじゃないんですよ。多分、私のスタンスはそこそこ極端なんだと思います。

 

ただ、趣味や娯楽やコンテンツの最大価値は「楽しいかどうか」「面白いかどうか」であって、そこは絶対に否定されるべきではない、と私は思っています。

 

「楽しい」ということの価値は、ただそれだけで肯定されるべきであって、少なくとも法律や他人の権利を侵害しない限りにおいては、誰一人それを否定してはならない、と思っています。

 

ちょっと厄介なことに、他人の「楽しい」って、自分には理解できないことがしばしばあるんですよ。「それ、何が楽しいの?」ってヤツです。

「何が楽しいのか理解できないコンテンツ」というのは私にだってあります。いわゆる「not for me」というヤツです。

 

ただ、世の中には、どういうわけか「自分には楽しめないもの」にはイコール「価値がない」と考えて、しかも「それを楽しんでいる人」を馬鹿にしにかかる、貶しにかかる、という人が結構な数存在するんです。

 

「実用」「役に立つ」というのは、実質正体不明の言葉なんですが、一見すると「共通の尺度」のように思える言葉です。

お金とか、知力とか、体力とか、普遍的な尺度に紐づけやすい言葉です。

 

だから、「自分には楽しめないもの」にケチをつけたい人たちは、「役に立つかどうか」という物差しを持ち出そうとする。

他人の「楽しい」が自分には理解できないからといって、他人の「楽しい」にケチをつけるだけのために

「それ、時間の無駄じゃない?」とか、

「それ、何の役に立つの?」という質問を投げつけたりするんです。

 

これ、趣味に限った話ではありません。例えば科学技術とか、研究分野なんかの話でも、「自分には価値が理解できない」ものを無理やり自分と同じレベルに引き下ろそうとして、「それ、何の役に立つの?」という言葉を投げかける人はゴロゴロいます。

だから私はこの言葉が嫌いです。

 

で、こと趣味というのは、結構やっている側の心持も脆弱なもので、そういう言葉に傷ついたり、必死に「何の役に立つのか」を考えちゃったりする人もいるんですよ。

 

ただ、私自身は、端的にこう考えるようにしています。

お前は、人生で役に立つこと以外は一切やらないのか、と。

お前の人生は、無駄じゃない時間だけで埋め尽くされているのか、と。

 

よろしい、それならあなたにとって「無駄じゃない」時間だけを、あなたの人生の棚板にひたすら並べ尽くしていけばよい。

けれど、私の人生の棚板は、あなたの尺度など一切必要としていない。

 

例えば私は、ケーナ吹きであると同時にゲーム大好き人間でもあるのですが、ゲームというのは特に、ゲームを楽しめない人たちによって「何の役に立つの?」という言葉を投げつけられやすいジャンルでした。

最近はだいぶマシになった感もありますが、今でもそういう議論もどきを観測する機会はあります。10年前、20年前なんかひどいもんでした。

 

ゲームが「役に立たない」かというと、おそらく「そうとも限らないよ」という話になるのでしょう。

実際に、ある程度一般的な尺度に紐づく形で、「ゲームはこういう役にも立つよ」という話も出来るのでしょう。

例えばストレス解消とか、人間関係の構築とか、もしかすると思考力とか、反射神経とか、決断力とか。そういう分析が色々出来るのかも知れません。

 

けれど私は、そういう議論にはあまり立ち入りたくありません。

ゲームが何の役に立つのか、なんて一切考えなくていい、そんな土俵に乗らなくていいと思っています。

 

何故ならゲームは趣味であり、娯楽であって、「楽しい」の一言だけで十分だから。

ただその一言だけで、「私がその趣味を選ぶ理由」は100%充足しており、それ以外の理由など一切必要としないから。

 

「楽しい」だけで十分だ。

頭が固い、と言われることを承知で、私はそんな風に考えているのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

(Photo:Bernal Saborio)