今から皆さんに、「ワールドトリガーのヒュースが玉狛の味方になるまでの経緯が、滅茶苦茶細かい上に計算され尽くしていて物凄い」という話をします。よろしくお願いします。
皆さん、「ワールドトリガー」って漫画、知ってますか?
2018年まで「週間少年ジャンプ」で連載されて、その後ジャンプスクエアに移籍、
現在でも連載が続いている超面白い漫画でして、およそ全人類が読んで損のない出来だと私は思っているので、未読の方は是非読まれるべきだと考える次第なんですが。
まだ21巻までしか出ていないので簡単についていけて超お得です。お得。
最初にちょっとだけ、未読の方の為に内容紹介をさせてください。
ワールドトリガーという漫画は、一言で言うと、「汎用能力を使ったチームバトル漫画」です。
能力バトル、ってジャンルありますよね。
キャラクターが色んな能力を持っていて、その能力を使って能力者同士戦うヤツ。
能力と能力の相性とか、能力をどう応用して相手を倒すかとか、いろいろ面白いですよね、能力バトル。
ワールドトリガーも、一種の能力バトル漫画ではありまして、各キャラクターは「トリガー」という武器を装備して、そのトリガーに宿った能力を使って戦います。
ただ、この時重要なのが、トリガーには「黒(ブラック)トリガー」という一点ものの能力もあるものの、作中大部分のキャラクターは「ノーマルトリガー」という、量産型の能力しか持たない武器を使って戦うことなんです。
ノーマルトリガーの種類は、そこまで多くありません。
役割別に代表的なものを大きく分けると、近接戦闘をする「アタッカー」と、中距離で飛び道具を使う「シューター/ガンナー」、遠距離から敵を狙撃する「スナイパー」の三種類のみ。
で、各役割の中でも、トリガーはせいぜい数種類しかなかったりします。
(出典:ワールドトリガー4)
能力の種類が少ないと、バトルが面白くないんじゃないかな?と思いますか?
ところがですね、これがまためっっっっっっちゃ面白いんですよ。マジで。
まず、「能力が限定されているからこその戦術と戦術の読み合いとぶつかり合い」が熱い。とにかく熱いんです。
登場人物の大多数は、「量産型の、他の人でも同じことが出来る能力」を使っていて、それでもその中で「その人にしか使えない戦術」とか、「その人なりの工夫」とか、「圧倒的な精度、出力」みたいな要素でちゃんとキャラ分けがされていて、しかもそれにちゃんと納得感がある。
「一点ものの多彩な能力」に頼らないからこそ、本当に「お互い手の内が分かっている状態での読み合い」ってものが発生するんですよ。
将棋をリアルバトルにしたらこんな感じかな、と思う程です。
更に、チームプレイならではの「お互いのフォロー」とか「戦術連携」といったものがあって、めちゃ強い人でも状況によっては簡単に落ちたりする。
予想がつかないのに、ひとつひとつの描写は本当に計算され尽くしているので、「この展開納得いかん」みたいなものが本当に全くないんです。
各キャラクターは「トリオン体」という疑似分身みたいな状態で戦っているので、普通の漫画なら致命傷になるような描写でも、作中の戦闘の枠組みではキャラクターを退場させずに描写出来る、っていうのも重要な強みですよね。
実力者が落ちてもそれは全く敗北を意味せず、むしろ実力者自身が重要な捨て石になっていて、それが全体の勝利を導いたりする。
こんな説得力のあるバトル漫画そうざらにはないと思いますよ、本当に。
この「ロジカルなバトル描写」に加えて、時には上述のようなロジックにあてはまらない本当に一点ものの能力が出てきたり、ギャグ展開もあったり群像劇もあったり小南がどうでもいい嘘に騙されたり、生駒隊は戦闘前にひたすらカレーにまつわる無駄話をしていたりと、まあ何はともあれ死ぬほど面白い漫画だ、というのがまず前提になる話なんです。あと帯島ユカリさんが可愛い。
(出典:ワールドトリガー21)
ということで、読んでない人は騙されたと思って読んでみてください。
で。
ここからは、少々物語のネタバレが入ります。ご承知おきの上お読みください。
***
皆さん、「強敵との共闘展開」って好きですか?私は好きです。
熱いですよね、共闘展開。今までめちゃ強力な敵だったヤツと手を組んで、更に強大な敵と戦う、みたいなアレ。
強敵が仲間になった時の頼もしさといい、手を組むことで新たなシナジーが発生する熱さといい、少年漫画のザ・王道と言っていい展開だと思います。大好き。
ただ、ですね。時々、ほーんの少し思っちゃうのが、「ちょっと仲間になる理由が安易じゃないかな…?」ってことなんですよ。
つまり、ちょっと「共通の超強力な敵」が出てきただけで、ホイホイ葛藤なく仲間になっちゃい過ぎじゃないかな、とか。
ついさっきまで殺し合いやってた相手なのに、そこんとこは簡単に水に流していいのかな、とか。
いや、熱いんですよ?それでも熱いし好きな展開なんです。
協力しないと二人そろってやられちゃうだけ、というのも、説得力としては十分なんです。
ただ、世の中ちょっと、割とあっさり風味に共闘しちゃう元敵役が多くないかな、とか、そういう気はしないでもない。
ところで、ワールドトリガーに「ヒュース」というキャラクターがいます。
この漫画、主人公たちが住んでいる世界の他に、たくさんの別世界があるんですが、まあその別世界から主人公たちの世界に侵攻してきた、超強敵の一人だと思ってください。
初登場が6巻。激戦を繰り広げて、10巻で捕虜になっちゃいまして、その頃から「その内共闘するのかな?」という雰囲気を醸し出しているんですけど、なんとこのヒュース、実際に主人公たちと共闘するのが19巻。
途中経緯はなにやかやあるんですけど、なんとそこまでに物語の半分近くの時間をかけちゃうんですよ。
(出典:ワールドトリガー17)
しかもデレない。仲間になった後も、本当に全くデレない(厳密にいうと遊真と陽太郎に対してのみ本当にちょっとだけデレる)。
「あれ?この人共闘展開のあと性格かわったかな?」って感じのキャラも多い中、主人公の作戦にはダメ出ししまくり、自分の目的にはとことん忠実で、本当にキャラクターが一っっっっ切ブレないんです。
このヒュースが「何故主人公たちと共闘するに至ったのか」っていうのが、本当に物語上、丁寧に丁寧に丁寧にリソースを割り振られ続けて、「ああ、ここまでくればそりゃ共闘するよな…」という、1ミリの反論も許さない見事な納得感の共闘展開なのです。
ざっくりこの積み上げについてご説明しますと、
・ヒュース、侵攻部隊の帰還において行かれる形で主人公たちの捕虜になる
・ヒュース、情報提供一切しないし全く協力しない
・ヒュース、自分の世界の主君が危ないことに気が付く(作中明確には描写されていないが多分)
・ヒュース、なんとかして自分の世界に戻ろうと目論む
・自分の世界に従属している別世界の部隊が侵攻してくる
・その部隊に協力させて帰還しようとするが失敗
・玉狛第二(主人公のチーム)、ランキング上位になって別世界に偵察にいく遠征部隊に入ろうと頑張る
・ヒュースと利害一致
・ヒュース、玉狛第二を遠征部隊に入れる為に協力しようと決める
いや、本当にざっくりですよ?途中色々細かい描写もあれば会話も展開もあるんですけど、それぜーーーーんぶ省いて、重要そうなところだけ抜き出してコレです。
更にこの後、「実はあいつは攻め込んできた敵じゃないのか?という噂が流れる(ヒュースは正体を隠している)」「それをフォローする為にまた別の噂を流す」なんてところまでやっちゃうんですよ。
安易に「敵が味方になる」展開を、本当に本当に許さないんです、この漫画。
ここまで紆余曲折を省略しない、ジグソーパズルのような展開を積み上げに積み上げた末にようやく成立する共闘展開、少年漫画ではちょっとなかなか類を見ないと思われませんか?
私、不勉強なこともあるんですけど、この展開見てすげー感動したんですよ。
言い方は悪いんですけど、「たかが共闘展開一つに、ここまでのリソースを積み上げるのか…!!!!!」って。
ぶっちゃけ、ただヒュースを共闘させたいだけなら、「もっと強力な第三の敵が出てきて、ヒュースもそれに巻き込まれる」でも全然お話自体は成立しますもん。
それに対して、「そんな展開知らないんですけど」と言わんばかりのこの積み上げですよ。
およそ、ここまで説得力のある共闘展開が他にあるだろうか、と。
ワールドトリガーって漫画、一事が万事、「とにかく丁寧にお話を積み上げることで、問答無用の説得力を発生させる」っていう書き方をされていると思うんですが、その代表的な例がこのヒュースとの共闘展開なんじゃないかな、と。
これだけの積み上げがあるからこそ、遊真がにゅっと突き出した拳に、ヒュースが無表情でこつんと拳を当てる、そのほんっっっっの小さなデレが、読者にとって何よりも感慨深いデレになるのだ、と。
私はそう考えてやまないわけです。
まあとにかく、一言で説明すると「ワールドトリガーはとにかく面白いしまだ21巻までしか出てないし生駒さん超いい味出してるし帯島ユカリが可愛いんでみんな読もうね!!!」
ということになりまして、他に言いたいことは特にありません。
よろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Kristine Lewis)