2023年3月3日、グロービスは対話向け大規模言語モデル「ChatGPT」を活用した学習システム、GLOBIS AI Chat Learning(略称GAiChaL、ガイチャル)の開発とその導入についてリリースを行いました。

<参考>グロービス、ChatGPTを使った対話型の経営教育システム「GAiChaL」を世界に先駆けて導入へ

 

今回は、開発を主導したグロービスAI経営教育研究所(略称GAiMERi)の所長 鈴木健一に、GAiChaLとは何か、そして学びの現場にどう実装されていくのかを聞きます。

 

GAiChaLとは?

――年末のChatGPTリリースから、AIについて話題にのぼる機会が増えたと感じます。そんな中で今回リリースされたGAiChaLとはどんなものか、まずは概要を教えて頂けますか。

 

鈴木:GAiChaLは、経営学を学ぶことの出来る、ChatGPTを活用した対話型学習システムです。ChatGPTとは、OpenAIによって開発された自然言語生成モデルですが、これにグロービスの経営教育のノウハウをコンテキストに織り込むことで、質疑応答形式での演習問題を通して対話的に学習することができます。

 

<参考>ChatGPTで体感する、今そこにある未来|GLOBIS知見録

 

グロービス経営大学院では、テクノロジー×イノベーションによる新たな学びを提供する「テクノベート」教育を行うMBAとして、これまでも様々なチャレンジを行ってきました。

2019年から入試の書類選考にAIを試験導入していたり、自社で研究・開発したレポート採点支援システム「GAiDES(GLOBIS AI Document Evaluation System)」、そしてAIラーニングシステム「GAiL(Globis AI Learning)」で特許を取得していたりします。今回のリリースは、こうした取り組みの延長線上となります。

 

――3月1日にChatGPTのAPIが公開されてから2日後に今回のリリースと、かなり急ピッチで準備を進められたのかと思います。

 

実は以前から、ChatGPTのような言語モデルを学びに実装出来ないかという構想は練っていました。そこでまずは、2020年から公開されていた同じくOpenAIの言語モデル、GPT-3のAPIを活用して進めていたんです。

3/1にChatGPTのAPIが公開されたことで、これを切り替えたところ、より実用的なシステムが見えてきた。これは機が熟したな、ということで今回のリリースに至ったわけです。

 

「グロービス流」で答えてくれる器用な先生

――具体的にどのように学びの中で使用するものなのでしょうか。

 

実際にデモ画面を見てみましょう。GAiChaLを開き選択肢の中から学びたいテーマを選ぶと、問題が投げかけられます。

これはリーダーシップ、中でも「動機付け・衛生理論」に関する出題です。この「やる気を出してもらうには」という問題に対して文章で回答するのですが、その場しのぎ的な回答をしてみると「不満は解消されるが、本質的な解決にはつながらない、もう一度考えてみよう」といった答えが戻ってきます。そこで今度はしっかりと意義を伝える、といった回答をしてみると、そうだよね、こういったポイントがあり、それが大切だよね、といった答えが戻ってくる。このやり取りを通じて、学びを深めることができるようになっています。

 

――この対話の中に、グロービスの経営知にまつわる経験値やノウハウが織り込まれているのですね。

 

鈴木:もう少し言えば、GAiChaLは質問の際、ChatGPTに指定テーマに関するグロービスのノウハウや対話の典型パターンなどのコンテキストを渡している、ということです。そしてこのコンテキストの内容はざっくりとしか書かれていなくとも自然に答えることができるのがすごいところですね。

 

こうしたやり取りをさせるには、以前であればすべての展開をシナリオベースでつくって、ツリーを用意して、と膨大なデータを準備しなければなりませんでした。しかしChatGPTを活用すると、そこまでの準備がなくともグロービスのノウハウを与えれば、かなり応用を効かせて答えてくれるのです。

答えがひとつしかないものではなく、いかようにもあり得る概念的な回答をさせる必要があるという点で難易度は高いですが、結果ユニークなものになっていると思います。「グロービス流」を伝えると器用に質問に答えてくれる非常に出来のいい先生、と見ていただければいいのではないでしょうか。

 

対話を通じた学びが、AIで変わっていく

――そんなGAiChaLですが、さっそく3月中旬頃から順次、動画とAIで学びながらオンラインでMBA単位が取得できるプログラム「ナノ単科」に実装予定と伺いました。

 

鈴木:ナノ単科には既に「GAiL」が導入されています。具体的には、ナノ単科のプログラム中の課題で、記述式演習のフィードバックを学習者の回答にあわせ即時に返すということに使われています。現在ナノ単科では日英6科目を提供していますが、この3月はまず日本語の3科目からGAiChaLを導入する予定です。

 

狙いとしては、先ほどお見せしたデモ画面のような質疑応答を履修したプログラムの中のテーマで進めていただき、学習促進、定着化を図ることにあります。加えて、まだ履修していない科目についても触れることができ、これを通じまだ学んでいない他の科目に対して興味を深めて頂く機会になればと考えています。

 

――ナノ単科はオンライン勉強会でクラスメイトとのディスカッションを実施しますが、AIとも対話しながら学ぶ、ということですね。

 

鈴木:グロービスは対話の中からの気づきや学びを重視していますが、その相手はAIにもなりうる。学びそのもののやり方は、AIなどのテクノロジーを通じてこれから劇的に変わっていくと思います。

 

 

(執筆:鈴木 健一)

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

グロービス経営大学院

日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。

ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。

グロービス知見録

Photo by:Jonathan Francisca