仕事をしていると、しばしば

「なぜこんな人が、このポジションなのだろう?」

と、不思議に思うことがあった。

 

例えば、成果をあげられない役員をいつまでも手元においておく社長。

どう考えても平凡なエンジニアを、妙に高く評価し、重要プロジェクトに起用する部門長。

期末での目標未達が明らかなのに、「うちの社員は優秀だから、絶対できる」と計画を見直さないリーダー。

 

 

そしてしばしば、「その人物が、仕事の支障となっている場合、どのように対策するか」という議論になった。

 

ただし、上のような事例に直面したときにも、私の上司は、

「無能であっても、決して彼らの評価を、お客さんに告げてはならない」

と、コンサルタントたちに厳しく言った。

 

これは結構厳しいルールで、クライアントから

「彼をどう思うか?」と聞かれても、

 

「彼は仕事ができない」との評価を、お客さんの前で言わないという事だった。

 

では、「彼をどう思うか?」に対して、どう答えるのかというと、

「彼に期待しているのですね」

「気になっていらっしゃるんですね」

「何か問題なのですか?」

と、評価を避ける表現をしていた。

 

プロジェクトから外してほしいときですら、

「依頼事項をやっていただけないのです。」とか

「進捗が悪いのです」とか

客観的な言い方に徹する必要があった。

 

自社の社員は、ほとんどの場合「優秀に」みえる

しかし一体なぜ、これほど気をつかう必要があるのか。

二つ理由がある。

 

一つは、外部のコンサルタントの「評価」が、人事に影響を与えることを避けること。

どんな事態が生じても、我々は責任を取れないから、軽率な発言は控えるべきだという考え方だ。

 

そしてもう一つは、自分たちの会社の社員は、他社の社員より優秀に見えるから。

だから一般的に、自社の社員が他社から「無能」と言われることには、強い拒否反応をしめす。

「外部の人にはわかんねーよ」と。

 

不合理かもしれない。

ただ、実はどの会社でも、多かれ少なかれ、同じような傾向がある。

 

これには心理学の中で「保有効果」と呼ばれる、自分に所属しているものを高く評価するという、人間の特性が働いている。

ほかにも、

「よく会う人には好意を持ちやすい」という、単純接触効果。

「それが好きな場合は、メリットばかり思い出す。」「嫌いな場合は、リスクばかり思い出す。」という感情ヒューリスティック。

「認識がしやすいとそれだけで「好ましい」と感じられる」という、認知容易性からくる錯誤。

など、さまざまな認知能力の限界によって、人は、客観的な実力よりも、身内が優秀に見えている。

 

上司は直感的に、それに気づいていたからこそ、「お客さんのを人事については何も言わない」を徹底したのだろう。

 

同じような実力であれば、

・他部署の人間よりも、自部署の人間のほうが優秀に見える

・他社の人間よりも、自社の人間のほうが優秀に見える

・自分で雇った人のほうが、他人が雇った人よりも優秀にみえる

 

もちろんこれは、プライベートでも言える。

自分の子供達は、実際よりもとても頭が良いように見えるし、孫が書いた絵は実際よりも遥かにうまくかけているように見える。

 

しかし実際には、「末は博士か大臣か」と、さんざん祖父・祖母から言われていた子どもも、大抵は平凡な会社員になる。

実力と認識は、往々にして一致しない。

 

「失敗の基準」は決めなければならない

しかし、こうした人間の特性が、ときに困った結果をもたらすことがある。

 

例えば、「絶対に成果をあげなければならない状態」であれば、目が曇ってはならない。

余裕があれば無能を放置できるが、危機にあっては、そうも言っていられない。

 

では、どうするか。人間の認知にバグがあるとすれば、「客観的な基準」を決めるしかない。

 

半年間、目標売上を下回ったら、営業の責任者を変える

とか

割り当てられたタスクに対する遅延が、◯%を超えたら、担当を変更する

とか

2年で黒字転換できなければ、社長は更迭する

 

など、好き嫌いや、頑張りと関係なく、適用される基準を作らねばならない、ということだ。

これができない場合、「失敗」を認めることができずに、どんどん事態が悪化する。

 

ヒュースは「目標に期限がない場合、失敗を正しく認識できない」というが、


出典:ワールドトリガー28巻

人材の配置に関しては、さらに「失敗を認める」のは難しい。

 

出典:ワールドトリガー28巻

結果が出ていないにもかかわらず、

「あの人は頑張っている」

「本当は能力がある」

「まだ結果が出ていないだけ」

という判定を先送りすることが良い結果を生むことは少ない。

 

人事については、切るべき時には、きちんと切らなくてはならない。特に責任者レベルの人事は、情をはさまないほうがうまくいく。

だから我々は、経営者に対して

「あの人の能力は低いですね」という事は絶対にないが、「結果が出てないですね」とはしつこく言うようにしていた。

 

「自分たちは優秀」と思うことも必要

とはいえ、自信があるのは悪いことではないし、いい仕事に対して「自分たちは優秀だ」と、多少のうぬぼれは仕方がないだろう。

 

実際、今すぐにやらねばならない仕事が目の前にあるとき、わざわざ「お前は無能だ」なんて告げる必要はない。

その自信が勘違いであっても、「自信があった方が良い」仕事はたくさんある。

 

また、客観的な基準で、感情に配慮せずゴリゴリ評価をすると、どうしても摩擦は大きくなる。

要は「つかいわけ」という話なのだが。

 

とはいえ、

「自分たちの実力を、客観的に、正しく認識している人は殆どおらず、ほとんどは過剰評価している」

という事実は、知っておいて損はないものだと思う。

 

 

 

【お知らせ】
生成AI、実務でどう使う?現場のリアルな声を聞けるチャンスです!
今回は、スタートアップのCTOとして最前線で生成AIを活用している実務家が、導入の現場で得た知見をもとに「成果につながる活用法」をお話しします。

対象は、企業の情報システム部門やDX推進の責任を担う皆さま。
生成AIを「なんとなく便利そう」で終わらせず、自社の業務改善や開発効率向上にどう活かすか──。そのヒントを得たい方に最適な内容です。
ぜひご参加ください!
ウェビナーバナー

ワークワンダースだからこそお伝えできる!4つのポイント
・生成AI導入による開発効率向上の実践的手法
・スタートアップCTOが実際に使用した生成AIツールの紹介
・DX推進責任者が知るべき生成AI活用のポイント
・生成AI導入のメリット・課題と今後の展望

<2025年4月8日実施予定>

生成AI活用の最前線~スタートアップCTOが伝える開発現場のリアル~

生成AIを取り入れることで、どのように開発効率を具体的に向上できるのか、最新トレンドや実践的なTipsを交えて解説します。

【内容】
1. 生成AIを活用した開発効率向上のポイント
2. 現場で実際に導入した生成AIツール・サービス事例
3. 生成AI導入のメリット・課題と今後の展望
4. 質疑応答
日時:
2025/4/8(火) 15:00-16:00(質疑応答15分含む)

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信いたします。
▶ 今すぐウェビナーに申し込む

(2025/4/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」82万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

頭のいい人が話す前に考えていること

頭のいい人が話す前に考えていること

  • 安達 裕哉
  • ダイヤモンド社
  • 価格¥1,650(2025/04/02 07:43時点)
  • 発売日2023/04/19
  • 商品ランキング114位

Photo:Priscilla Du Preez