いつもbooks&appsに好き勝手に寄稿させていただいている、精神科医の熊代亨です。

このbooks&appsは本来、「ビジネスパーソンを励ますwebメディア」なのですね。そこで今日は心を入れ替え、ビジネスなパーソンの参考になるかもしれないことを書かせていただきたいと思います。

 

とはいえ私に書けるビジネスっぽい話題なんてしょっぱい失敗談ぐらいのものですから、ひとつ、ご笑覧いただければと思います。

 

私の投資はセンスゼロ→考えないほうがマシ

しょっぱい失敗談とは、株式をはじめとする投資についての失敗についてです。

 

私は20代の頃に見よう見まねで証券会社に口座を解説し、取引なるものをやってきたのですが、いっこうに上手くなる気配がありません。

なにごとも安い時に買い、高い時に売ればうまくいく、それから手堅い投資信託に積み立てておけばうまくいく、そのあたりが原則だと思うのですが、つい、買ってしまったり、つい、売ってしまったりと、ずいぶん下手なことをやらかしたものです。

 

そうしたなかで最もダメージが大きく、「なんでこんな注文しちゃったんだろう……」と思ったのは、リーマンショック前にまとめて注文した、とある地方企業の株で、たいした考えもなしに注文した後、リーマンショックがやってきてドッカーン! と値下がりして、長い長い塩漬け期間を潜り抜けてもなお、損失を受け入れざるを得ない感じでした。

 

それとは逆の失敗もありました。まずまず順調に来ている投資信託があって、これは良いぞと思っていたのですが、ある日、唐突に利益を確定しようと思って売り注文を出してしまったのでした。

無事に取引が成立し、利益が確定できたわけですが、その後もその投資信託は順調に伸び続けて、コロナ禍による値下がりもものともせず、手の届かないお値段になってしまいました。

 

あのとき、たいした考えもなしに注文していなかったら。

あのとき唐突に手放していなかったら。

 

投資活動には「たられば」は無いと言いますが、自分が買ったものが値下がりし、自分が売ったものが値上がりするのを見るとつい「たられば」を考えてしまいますね。ああ、こういう風に考えている時点で私には投資なるもののセンスがないのでしょう。

 

もし、私のような人間が投資をするとしたら、「下手の考え休むに似たり」を徹底させ、「自分が投資について考えることは、だいたい外れる。

よって自分のことを信じないほうが良い」と考えたほうが良さそうに思われるので、コロナ禍以降はあまり考えず、割とほったらかしにすることにしました。

 

投資について自分のアタマで考えてもロクなことにならない以上、他のことに時間と注意力を費やしたほうが生産性が高くなりますからね。

 

「たいして考えずに買う」「唐突に売る」の背景にあった、もうひとつの問題

こんなわけで、私の投資センスはゼロですが、もうひとつ、私の投資活動に問題が見つかったことを紹介しておこうと思います。

それは、”ろくでもない「買い」「売り」はしばしば当直明けの日に決断している”、というものでした。

 

精神科医だから当直業務は無い、などということはありません。たとえば精神科救急では、夜中から措置入院に関する診察が始まったりすることがあります。そうでなくても、時間外受診というのはそれなり存在するものです。

で、私が投資でやらかすのって、だいたいこの当直が明けた翌日、だったんですよね。

 

さきほど書いた、順調に伸びている投資信託の利益を確定した話もそうで、深夜の当直中にその投資信託の対象国について良くないニュースを観て、「明日あの投資信託を売らなきゃまずいかもしれないぞ」などと考えながら当直室のベッドに入り、けれどもそんなことを考えているせいでぜんぜん眠れなくて、寝不足のまま迎えた朝いちばんに、その投資信託を売却してしまったのでした。後でがっかりしたのは言うまでもありません。

 

これに限らず、自分の売買について調べてみると当直明けにやらかしていることが少なくないことがわかり、私は当直中や当直明けに証券会社にアクセスするのを禁止しました。

もちろんこれはこれで弊害の起こりそうな方法ではありますが、「当直明けの自分は、投資についてセンスがゼロというよりマイナス100ぐらいである」とわかってしまった以上、当直明けの自分自身に取引させるよりは全面的に禁止したほうがマシです。

 

健康な時しか取引しないか、ずっと健康でい続けるべきか

私のこの事例から、もっと広い範囲のアマチュア投資家にも適用できる教訓はあるでしょうか。

アマチュア投資家にも色々な投資傾向の方がいらっしゃって、私と同じく基本的には中~長期的に株や証券を持ちっぱなしする人もいれば、もっと目まぐるしく取引をする人もいるでしょう。

 

私と同じタイプのアマチュア投資家さんには、私の教訓がそのまま適用できるはずです。

つまり「当直明けに証券や株や外貨は取引してはいけない」、ってことですよね。当直業務や夜勤業務があけた時間の取引は危なっかしいと思っておくべきでしょう。寝不足や疲労で判断力が低下している時の自分自身に、お金を動かすような決定をさせてはいけません。

 

ここから、「自分自身の判断力が低下している時には、証券や株や外貨は取引してはいけない」という教訓も導けるでしょう。寝不足や疲労は、当直や夜勤をやっている人だけが陥るものではありません。普段よりずっと激しい業務やスポーツの後、それからコロナウイルス感染症などで発熱している最中なども判断力が低下している、とみるべきです。

そんな時の決断や判断は普段の自分自身より甘いでしょうし、そういう時の甘い判断で失敗するとあとあと後悔する度合いもひどいでしょう。

 

さらにここから「飲酒している時には証券や株や外貨は取引してはいけない」も導けるように思います。

飲酒後の自動車運転は法律で禁止されていますが、証券取引だって本当はそうしたほうが良いのではないでしょうか。昔は証券会社が営業している時間に電話で売り買いしていたので、飲酒している最中の取引はほとんど考えなくて構わなくなりましたが、いまどきはインターネット経由でいつでもどこでも取引ができてしまいます。飲酒していれば判断力は確実に下がっているはず。飲酒している時の自分にそういう決定をさせてはいけません。

 

では、デイトレーダーのように、非常に頻繁に取引をする人はどうあるべきなのでしょうか。

ここまでの延長線上で考えるなら、答えはひとつですよね。頻繁に取引をする人は、たぶん、どんな時も判断力を低下させてはいけないのだと思います。身体的なリスクを伴う活動は極力避けなければならないし、飲酒などすべきではないでしょう。かといって運動不足やストレスの蓄積もきっと良くないですよね。

 

いつでもどこでも冴えた判断力を駆使できるよう自分自身をメンテナンスし、そのメンテナンスした頭脳と身体で取引を続けるのはたいへんストイックなことだと思いますし、そうしたことをやってのけるプロい投資家の人は凄いな、とも思います。

世の中にはデイトレーダーについて悪く言う人も少なくないと聞いていますが、少なくともデイトレーダーというのはストイックな営みだと思いますよ。また、そうでなければきっと口座か身体か精神がもたない世界なのだろうとも想像します。

以上、当直明けに失敗を繰り返してきた教訓にもとづき、私なりに投資の取引について注意したほうが良さそうなことを書いてみました。どうか良い体調&判断力で、良い取引を。

 

 

【お知らせ】地方創生サービスに関するウェビナー開催のご案内


【ウェビナーのご案内】
中堅・中小企業の経営者や人事担当者様向けに仙台を拠点に活躍するベンチャーキャピタル・スパークル株式会社様と共催セミナーを実施します

営業リストが尽きたらどうする?生成AIを使って自社で始めるDX人材育成とweb集客

社員が主導で新規顧客を呼び込む体制づくり ~成功事例をベースにわかりやすく紹介~

<内容>

-スパークル株式会社-

1.企業の課題解決に向けたDX推進人材の採用・育成に関する状況
2.DX推進人材の具体例とスキル要件
3.人材育成の進め方とそのポイント
4.弊社の支援内容の紹介

-ティネクト株式会社-

1.「営業リストが尽きた時に次に取るべき行動とは?」
2.【STEP 1:自社で始める生成AIを使ったWEB集客の基本ステップ】
3.【STEP 2:成功事例で学ぶ生成AIを使った具体的なアプローチ】
4.生成AIを使った自社社員が動ける仕組み作り
5.まとめと次のステップへ


日時: 2024/11/22(金) 10:00-11:30
参加費:無料  
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込みは ティネクトウェビナーページ ご覧ください

(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

 

【プロフィール】

著者:熊代亨

精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。

通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)『認められたい』(ヴィレッジブックス)『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?』『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』(イースト・プレス)など。

twitter:@twit_shirokuma

ブログ:『シロクマの屑籠』

熊代亨のアイコン 3

Photo:Nick Chong