2024年12月2日、今年の「新語・流行語大賞」が発表されました。その中には、X(Twitter)やTikTokで盛り上がったコンテンツも多く、SNSをきっかけに商品やサービスが売れる「SNS売れ」も、珍しいものではなくなりました。

 

「SNS発のヒットを我が社でも!」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、どうやったら起こせるのか分からない…。そんな方々に向けて、SNS売れの仕組みや、発生させるために必要な要素を整理してみました。

 

そもそもSNS売れとは

そもそも、SNS売れとはどんな現象でしょうか。私は「消費者が自発的に投稿を行い、それが拡散されることで売上につながる現象」だと考えています。これは、インフルエンサーによるPR投稿や広告を活用した短期的な売上増加ではなく、消費者が自発的に話題にすることで生まれる現象なのです。

 

SNS売れの構造をマーケティングの4P(Product:商品、Price:価格、Promotion:プロモーション、Place:流通)に当てはめると、以下のように表せます。

まず、消費者が何らかの方法で商品を知り、その商品を手に取ったり購入したりします。その後、他の人におすすめしたり、感想を投稿することでクチコミが発生します。そして、おすすめやSNS上のクチコミをきっかけに商品を知り、手に取ることで新たな購買が生まれます。そんな循環的なサイクルが、SNS売れと呼ばれる現象です。

 

「商品を知る」にはプロモーションや販売場所(Promotion、Place)が重要です。一方、「話題にする」には商品の特徴や価格(Product、Price)がカギとなり、消費者のクチコミを書きたいという動機につながるのです。

 

つまり、SNS売れを目指すなら、「どうやって商品を知ってもらうか」という視点と同じかそれ以上に、「どうすれば消費者が話題にしたくなる商品になるか」という視点が重要です。いくら宣伝に力を入れても、商品自体が「誰かにオススメしたい」「クチコミをしたい」という動機を生まないものであれば、消費者が自発的に話題にすることはありません。

 

SNS売れを目指して自社の投稿をバズらせようとするよりも、消費者が自発的に話題にしたくなるような要素を、商品やサービス自体に組み込むことが必要になるかもしれません。

 

SNS売れの成功要因3つのポイント

では、「誰かにオススメしたくなる商品」とはどのようなものでしょうか。

 

私は「安い」「どこにもない」「カスタマーサービスが優れている」という3つの要素が成功のポイントだと考えています。これらが消費者の期待を上回れば、SNS上で話題になりやすいと言えます。

 

「安い」は、価格の比較が簡単な時代だからこそ重要です。「この品質でこの価格!」という驚きが口コミを促し、購入者が増えることで投稿も増えやすくなります。

 

「どこにもない」は、他にはない特徴を持つ商品やサービス、つまり独自の便益を提供できているかということを指します。これらの要素がクチコミにつながるのは、想像しやすいでしょう。

 

そして、「カスタマーサービス」は特に重要な要素です。なぜなら、「安い」と「どこにもない」という要素を両立させることは非常に難しく、どちらか一方、あるいはどちらも満たせない商品やサービスであっても、カスタマーサービスで消費者の期待を上回ることは可能だからです。

 

例えば、飲食店がSNSで人気になる理由には、料理や価格だけでなく、接客やスタッフの人柄など、カスタマーサービスも影響します。

 

これらは、必ずしもすべてを満たす必要はありません。「安い」だけでも、「どこにもない」だけでも、SNS売れを起こすことは可能です。しかし、カスタマーサービスについては、他の要素と組み合わせることで、より強力なSNS売れにつながりやすいです。

 

もしも、いずれの要素も満たすことができない場合は、SNS売れを目指す戦略がそもそも適切ではない可能性があります。その場合は、SNSでの話題化にこだわるのではなく、別のマーケティング戦略を検討する方が賢明でしょう。

 

「SNS売れ」につながるクチコミ創出のステップ

クチコミを生む商品の特徴に続いて、ユーザーがクチコミを投稿したくなる動機も紹介します。以下のようなものが考えられます。

 

・新しい商品を購入したから
・身近な人からオススメされたから
・プロモーションで興味を持ったから
・インフルエンサーの投稿を見て気になったから
・話題になっているから

 

この中で重要なのは、「話題になっている」という状況を作り出すことです。SNSのタイムライン上で同じ商品に関する投稿を繰り返し見かけると、ユーザーは「よく見かける」「話題になっている」と感じる傾向があります。そして、「自分も買ってみよう」「買ったら投稿しよう」という行動につながりやすくなります。

 

このような連鎖を生むためには、より多くのクチコミが投稿されている状態が好ましいです。「良さそう」程度の短いテキストが書かれているだけでも、数多く投稿されている方が効果的です。

 

また、クチコミの発生は企業でコントロールはできませんが、クチコミの発生に寄与するコミュニケーションを企業側が行なうことはできます。以下の4つを考慮したSNS活用を心がけましょう。

 

①表現欲求を刺激する

自社商品のアレンジレシピを紹介するなど、ユーザーが「私も真似したい」「試した結果を投稿したい」と思えるような情報・アイディアを提供する。

 

②承認欲求を充足する

投稿されたクチコミに「いいね」や返信を行なうなど、投稿したユーザーが認められ、満足感を得られるようなコミュニケーションを行う。

 

③空気感を醸成する

投稿されているクチコミをリポストで紹介するなど、「言及しやすい」「流行っている」という雰囲気を作り出す。

 

④「情報を届けること」に目を向ける

広告を活用し、クチコミを投稿してほしいターゲット層に確実に情報を届ける。

 

どんな商品でも「SNS売れ」するわけではない

ここまで、SNS売れの構造や、発生させるために必要な要素を解説してきました。

 

あなたが取り扱う商品やサービスは「安い」「どこにもない」「カスタマーサービスが優れている」に当てはまりますか? 前述した通り、誰かにオススメしたい・クチコミをしたいという「動機を生む商品」でなければ、「SNS売れ」を起こすことは難しいです。

 

テレビや雑誌で見かける「SNS発のヒット」「〇〇でバズった商品」という言葉にとらわれず、まずは商品やサービスの特性を見極めて、自社に合った戦略を考えることから始めてみてください。

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/6/16更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

増岡 宏紀

株式会社ホットリンク 営業本部長

SNSコンサルタントやプロモーションプランナーとして活動後、現在は営業本部長として事業戦略や営業戦略を推進。これまでにTwitter広告事業やSNSドラマ事業、プロモーション事業の立ち上げを行う。

Photo by:Erik Lucatero