女性にとっては毎月がウンザリな生理。人によっては、起き上がることすら苦痛である。
男性も生理の存在は知っているけれど、どんな現象かを理解するのは難しい。無理のないことだ。「経験しないとわからない」類のものだからである。
もっと話ができれば女性は救われるし、「理解したい」という男性は多い。しかし一方で生理の話題は、タブー視される向きもある。長年の文化でもある。
ではどうすればスムーズに話せるのか。生物学的に女性である筆者が、提案をしてみたいと思う。
生理休暇の取得率と生理のしくみ
女性には月に1度の半休、もしくは1日~2日、女性特有の不調に備える有給を与えても良いのではないかと筆者は思っている。
というのは、厚生労働省の調査によると、平成31年度では、生理休暇を請求した女性労働者の割合は0.9%にとどまる*1。生理休暇をなんとなく取得しづらい空気があるためだ。
一方で、大王製紙が実施したアンケート調査によると、「生理について周囲に言えなくて困った経験が非常にある/ある」と回答している女性は39.1%で、生理用ナプキンの交換について「困ったことが非常にある/ある」と回答した女性は66%にのぼっている*2。
しかし筆者も会社員時代はよく困ったものだ。席を立ちたくても立てない時がある。そのときは「ナプキン大丈夫かな・・・」というのは頭の中の半分を占めていた。
そこで、今改めて生理について説明してみよう。
生理のしくみ
まず、生理のしくみについて簡単に説明したい(図1)。
(図1 生理のしくみと周期 (出所 「月経について教えてください。」日本産婦人科医会) http://www.jaog.or.jp/qa/youth/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E4%B8%8B%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82/
脳下垂体、卵巣の2か所から排出される4種類のホルモンに影響され、卵細胞が成長すると同時に妊娠に備えて子宮内膜が分厚くなっていく。
この間に妊娠が成立しなかった後は、この子宮内膜は丸ごと剥がれ落ちて、血液と共に膣から出てくる、これが生理(月経)のしくみとなっている。
個人差はあるが、25~36日周期でこれが繰り返される。
出血量も個人によって異なり、1回の生理で20ml~140mlが一般的な量と言われている*3。時に内膜が塊になって出てくることもある。
生理痛にも個人差がある。
さほど感じない人もいれば、起き上がるのが辛いほどの腰や下腹部の痛みを感じる人もいる。
これは、子宮内膜を押し出すために子宮を強く収縮させるからである。
プロスタグランジンという物質の働きだが、プロスタグランジンは痛み成分である。よって、プロスタグランジンの分泌量などの個人差で、痛みの程度は決まる。多くは鎮痛剤で緩和するが、「子宮をわしづかみにされている感じ」と筆者は思う。
そして筆者の場合は、これがかなり痛い方である。月によっては起き上がるのがおっくうだし、ある時は腰から太ももまでしびれるような痛みが走ったこともあった。婦人科の受診が要りそうだ。
ナプキンの交換
多くの女性が困るのが、ナプキン交換のタイミング。
後述するが、その時つけているナプキンが限界に近づいているかどうかは感触で分かる。早めに交換しなければ、経血がナプキンの許容範囲を超えて服に血液が漏れ出してしまうということがある。
しかし、職種や時と場合によっては、好きなタイミングで交換できない場面もある。大王製紙のアンケート調査では、66%の女性が「ナプキンを交換したいときにできない、または長時間できなくて困ったことがある」と回答している(図2)。
図2 ナプキン交換で困ったこと(出所「『令和』の生理に対する意識の実態とは」大王製紙) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000001310.html
女性は経血が漏れやしないかとヒヤヒヤしつつ、常にタイミングを窺っているのである。
また、あきらかにそれとわかる生理用品を入れたポーチをバッグから取り出し、トイレに向かう姿もあまり見られたくないと多くの女性が感じている。
できれば人目につかないタイミングでこっそりとバッグから取り出したい。
そのようなことにも気を遣っているのである。
男性が生理を疑似体験できるか?
一方で多くの男性が、こうした女性ホルモンによる不調を「理解したい」と感じている。
こちらはあすか製薬のアンケート調査である。
図2 女性が抱える女性ホルモンによるつらい症状を理解したいとする男性の割合 (出所「生理(月経)をはじめとする女性ホルモンに関する男女の意識調査」あすか製薬 https://www.aska-pharma.co.jp/mint/library/pdf/askapharme_release0928.pdf p4
8割の男性が「理解したい」と回答している。特に20代、30代の男性の理解意欲が強いようだ。
男性が生理を疑似体験?
ところで、あるカップルがYouTubeに投稿した興味深い動画がある。*4
女性が男性に生理を疑似体験させるというものである。
まず、痛み(鈍痛)について。
植木鉢に下腹部を乗せ、うつ伏せになる。男性はかなり痛いようだ。
そして、だるさを再現するために4kgのおもりを腰に巻く。
そのうえで、生理用ナプキンに髭剃り用のジェルを塗ったものを男性が装着する。ナプキンが経血を吸収していくと蒸れるような、常に湿っているような不快感があるからだ。
男性にとっては、座るという動作だけでナプキンに違和感を感じてしまい、「座りたくない」「気持ち悪い」と声が漏れた。
そして学生視聴者を意識して「授業を受けている体」で座り、途中でジェルを追加。途中で落としたペンを拾ってもらう。もう、男性にとってはちょっとした動作でも不快感が強すぎたようだ。「これのせいで気分が落ちるかも」と。
その後、家事、軽い運動。さすがに男性は不快感に耐えきれず悲鳴を上げた。
男性が考えもしないタイミングでジェルを追加する女性の手腕にはうなずいた。多くの女性が経験することだが、とつぜんのタイミングで塊がドロリと出てきたりするのだ。
「不快感だけで気分が沈む」というのが男性の感想だった。
「理解して欲しい」「理解したい」の狭間にあるタブー感
一方で先ほどの大王製紙のアンケート調査によると、生理について周囲に言えないことに対し、約4割の女性が「非常にある/ある」と回答している(図3)。
図3、4 生理での困りごと (出所「『令和』の生理に対する意識の実態とは」大王製紙) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000001310.html
そして興味深いのは、生理で困ったこと、気になっていることをワードクラウドに変換した右側の図4である。
それでなくとも辛いのだが、「漏れる」「モレ」に非常にナーバスになっている様子がわかるだろう。長時間トイレに行けなくなると、これらのワードはもっと大きくなるに違いない。
最近では、生理について女性が堂々としていられるようなナプキンのパッケージデザインや、ナプキンを持ち歩きやすいハンカチ型の袋などが開発されている。しかし、それはあくまで出血するという物理的なものへの対処である。
それ以外に抱える痛み、不快感、倦怠感などは、なかなか会話に上りづらいようだ。
大王製紙のアンケートでは、「生理について、異性と話すことに抵抗がある(男女どちらにも質問)」と言う人が少なくない(図5)。
図5 生理について異性と話すことに抵抗があるか (出所「『令和』の生理に対する意識の実態とは」大王製紙) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000001310.html
理由として以下のようなものが挙がっている。
<女性>
・自分のからだのことを話す必要はないから(10代女性 学生)
・恥ずかしいから(10代女性 学生)
・同性でもオープンに話すべき内容ではないと教えてられてきたから。(30代女性 会社員)
<男性>
・タブーな感じがするから。(10代男性 学生)
・セクハラになるかもしれないから。(30代男性 会社員)
・あまり触れてはいけない話題であると意識的に思ってしまっているため。(30代 会社員)
両者ともに、考えを少し変えていかなければならない時代に来ているだろう。
女性の健康維持のために
毎月の生理の存在について、男女ともになんとなく話すきっかけを失ってしまっている様子が上記アンケート調査の結果からは読み取れる。
「フランクに話しましょうよ」と風潮が沸き起こりつつある。しかし筆者としては、タブー視されてきたこれまでの文化があることを前提に考えれば、ある日突然「さあ話しましょう」と言われても困惑する人のほうが多いのではないかと思う。
全員が全員、そのような切り替えができるとは限らない。
一方で、生理によって起きる不調は時に、子宮の病気の発見にも繋がるという意味で、生理について部下が上司に相談できる環境は大切だとも考える。
そこで、肝心なのは「出だし」なのではないだろうか。
それまで生理の話などしたことがなかった上長にある日突然話題にされても困る。そこで、異動のタイミング、個人面談の際に、「困ったら相談して」という空気作りをしてはどうだろう。
そして、もうひとつコツがあるとすれば、直接的な言葉を使わないことである。
「生理休暇」というのは、名前がまずよろしくない。
冒頭に筆者が述べた、女性には有給休暇を別に与えるべき、というのはこれが理由である。もっと直接的でない言葉になるだけで、利用しやすく感じる女性は増えることだろう。
そして、なぜ有給にするか。
生理用品にお金がかかったり、時折婦人科の受診が必要になったりと、生理に関することだけで女性のみが出費を強いられているものがあるからだ。
「月のモノ」だとか「女性の1か月を考えると」とか、そういったやんわりとした言葉で、何も大きな声で主張せずに済むような環境作りが必要だろう。また、生理に関しては、出血や痛みだけでなく、ストレスや自律神経にも影響があることを知っておきたい。
つまり、生理前から生理中にかけては、本人の意思ではコントロールできない不調が多発するのである。
そして、筆者が思うに、女性用トイレには「生理用品ポーチ置き場」という小さなロッカーを作って欲しいものだ。朝そこに自分のポーチを入れておけば、周囲の目を気にせずに済む。それだけでも精神的に救われるものだ。
—ミテモ株式会社 Deeperより
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【著者プロフィール】
ミテモ株式会社
人・組織・地域のサステナブル・シフトを実現するコラボレーター。
世界の問題・課題・トレンドを掘り下げ、持続可能な社会づくりを追求するためのコンテンツをお届けします。
Twitter:@mitemo
*1「『令和2年度雇用均等基本調査』の結果概要」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r02/07.pdf p26
*2
「『令和』の生理に対する意識の実態とは」大王製紙
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000001310.html
*3
「月経(生理)が長い、経血(出血)の量が多い、月経異常の症状と対策」NHK健康ch
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_14.html
*4
youtube:【生理体験】彼氏に1日ナプキンを付けて日常生活を送らせてみた。