生き方や価値観は人ぞれぞれですが、「一度きりの人生を後悔したくない」という想いは、みなさん共通してあるのではないでしょうか。
本記事では、先行き不透明なVUCA時代といわれる今、キャリアという観点で20代という時期をどう過ごすか、何を意識して取り組むべきかについてご紹介します。
20代は「最高の自己投資期間」
20代のキャリアは、決して一括りにはできません。
組織風土を含む働く環境や、個々人の働く上でのスタンス、その時々の心理フェーズにより、眺めている世界が全く異なります。
例えば、「大手企業でようやく一人前に」という方もいれば、「”3年いればベテラン”の組織で、後輩の育成に悩んでいる」という方もいます。
そして、「仕事が辛く転職を考えている」方もいれば、「なんとしても今の会社を良くしたい!」と意気込む方もいます。
よく「20代でやるべきこと」として何十個もリストアップされるのは、その多様な価値観を網羅しようとした結果なのでしょう。
私は基本的に、それぞれが好きなことをやればいいと思っています。
一方で、それでもあえて「20代でやるべきこと」を考えることは、とても意味があることだと思います。
人生100年時代という長い人生において、20代は「最高の自己投資期間」だからです。
20代でやるべき5つのこと
「最高の自己投資期間」である20代でやるべきことについて、5つご紹介します。
①キャリアの土台を築く
一般的な期待にも、真実が含まれます。
20代では、キャリアの土台となる基礎能力を固めることも重要です。
以前、キャリアコンサルタント時代に、転職マーケットで引く手あまたな20代の方を支援させていただいたことがあります。
戦略コンサルティングファームに勤めていた方で、同業種・同職種への転職が当たり前だった時代に、異業種・異職種からのオファーをたくさん獲得されました。
その方のどこが一番評価されたのか。
特別なスキルではなく、圧倒的に高い「基礎能力」でした。
圧倒的な基礎能力は、強力な差別化要因になるのです。
ポータブルスキルを身につける
では、「基礎能力」とはどんなスキルなのでしょうか。
具体的には、問題解決能力やコミュニケーション能力、ビジネスへの基本的な理解や業務生産性につながるITリテラシーなどです。
目立った実績はなくても、土台である基礎能力の高さがポテンシャルを示す証拠となります。
こうした基礎能力は、環境に関わらず持ち運べる「ポータブルスキル」となり、30代、40代と続くキャリアの変化において身を助けます。
☑具体的なポータブルスキル例は、こちら
②貯蓄より自己投資する
お金に関しては「稼ぐ」「貯める(貯蓄)」「増やす(資産運用)」の3つの視点があります。
人生100年時代、将来を見越しコツコツとお金を「貯める」ことやお金に働いてもらい「増やす」ことも重要ですが、最も重要なのは「稼ぐ」ことだと思います。
理由は、「貯める」「増やす」は、そもそも「稼ぐ」ことを前提とするからです。
そして、安定的に魚を手に入れるには、魚をもらうよりも、魚を釣れる自分になるほうが確実で自由だからです。
数ある投資対象の中で最も確実なリターンが見込めるのは、「稼ぐ」ことができる自分になる自己投資です。
仕事の成果につながる勉強を始める
「稼ぐ力」を得るためには、仕事で成果を出すためのスキルや知識を身につける必要があります。
例えば、
- 自身の専門性に関連のあるセミナーを受講する
- 仕事で役に立つ資格を取得する
- 読書をする
などです。
ここで1点注意しておくべきことは、どのような学びが有効かは、目指すキャリアによって一人一人異なることです。
例えば、「流行っているから」や「とりあえず」でプログラミングスクールに通ったり資格を取ったりするのは避けましょう。
途中で挫折して、結果的に時間や労力を無駄にしてしまった…ということにもなりかねません。
自分の人生にどれくらいリターンがあるかをしっかりと意識しながら、必要な学びは何かを見極めていきましょう。
ちなみに、私が講師を務めているグロービス経営大学院では、20代で入学した卒業生のうち、卒業から5年以上経っている人の年収の平均上昇幅は、2倍でした。
自己投資によって「稼ぐ力」を得たことを実感できるデータといえます。
(参照元:2018年実施の卒業生アンケート)
③大きな失敗をする
20代には、失敗しても「大目に見てもらえる」という大きな特権があります。
私がキャリアカウンセラーをしていた頃、ある企業の人事部長が「20代との面接では必ず、最大の失敗体験を聞く」とおっしゃってました。
「大きな失敗ができるのは、大きな挑戦をした証拠」だからだそうです。
年代問わず、常に挑戦が求められる時代です。
20代の経験は、30代以降の大きな財産となるでしょう。
リスクを取って行動する
ここでの重要なポイントは、失敗自体が目的ではなく、能動的に失敗のリスクを負うチャレンジの機会に身を置くということです。
例えば、
- タフな業務を引き受ける
- 新規プロジェクトに立候補する
- ジョブポスティング(社内公募)を活用して環境を変える
など、手を挙げれば引き寄せられる挑戦の機会は少なくありません。
“特権”のある20代のうちに、ぜひ失敗を恐れず、リスクを取ってどんどん挑戦していってみてください。
④多様性に触れ、世界を広げる
20代に限らず、私たちが生きる世界は狭いものです。
生きている期間の短い20代はなおさらでしょう。
しかし、若いほど「柔軟な吸収力」という武器があります。
自分と異なる人の価値観や考え方に出会ったとき、「私はそうは思わない」で済ますか、「この観点は新しい」「それも一理ある」と異質なものを、自分の世界を広げる材料に変えられるか。
柔軟な人は、後者の反応をし、その積み重ねによって世界を広げていくことができます。
柔軟な吸収力という武器を存分に発揮するためには、昔の仲間や同じ価値観を持つ同僚とばかり付き合うのではなく、新たな出会いも重要です。
クラブ活動やプロボノなど新しいコミュニティに参加する
ぜひ20代のうちに、日常の居心地よい環境から一歩外に踏み出し、多様な人に触れ、世界を広げていってみてください。
例えば社内なら、
- チーム外の人と定期的にランチに行く
- クラブ活動などの非公式コミュニティに参加する
- あるテーマで勉強会を主催する
- 社内イベントに積極的に参加する
などがあります。
また社外なら、
- セミナーや勉強会に参加する
- 地域コミュニティに参加する
- 講座やスクールに通う
- プロボノや副業を始める
などがあります。
多様なバックグラウンドの刺激的な社会人に出会う場として、ビジネススクールを活用する方もいます。
⑤自分自身を知る
20代で「やるべきこと」に絶対解が存在しないように、横並びではなくなったこの先の社会では、人生の多くのことが個別解となるでしょう。
自分を知っているからこそ、自分だけの個別解を迷わず選ぶことができます。
逆に、自分のことを知らない場合は、周囲の考えや意見を鵜呑みにし、身を委ねるしかなくなります。
フレームワークを用いて自己分析をする
自分のことを知る上で、フレームワークを使って考えてみる方法が有効です。
例えば、自分の思考や価値観を紙に書いて、派生するものをつなげていく「マインドマップ」。
「自分は何が好きなのか」「どんな価値観で行動しているのか」といったことを考えることで、思考の整理や新たな発見をすることができます。
また、自分自身を知り、自分らしく生きるためのヒントについては、こちらも併せて読んでみてください。
20代前半で意識したいこと
20代前半ではとくに、「多様性に触れ、世界を広げる」が重要だと思います。
社会人になり3年ほどは、「社内に馴染む」「一人前になる」が最優先という考え方もあります。
ただそれは及第点であり、読者の皆さんにとってはあまりにも当たり前過ぎることではないでしょうか。
どの組織も、新人には新しい視点や斬新なアイデアを期待します。
「多様性に触れ、世界を広げる」ことは、その期待に応えるための基盤を形成します。
身の軽さや行動力を武器に、”社外で得た社内にはない知見”を組織に還元することそのものが、価値発揮につながります。
『社内の常識は、社会の非常識』といわれます。
社内に偏ることなく、社会における自分の市場価値を客観視しながらキャリアを築いていくために、社外とのつながりはより一層重要になると考えます。
20代後半で意識したいこと
20代後半ではとくに、「大きな失敗をする」が重要だと思います。
自転車に乗る練習の体験を思い出すと、成功には失敗が不可欠であることがよく分かります。
そして、挑戦しなければ失敗すらできないことも。
社会人経験が5年前後になると、安定感が出てきます。
それは、成長実感が薄れる時期でもあります。
だからこそ、自分を揺さ振る挑戦の価値が高まるのです。
安定感があることは、信頼が得られていることでもあります。
その信頼を担保に、挑戦の機会を獲得できるのなら、自分を試してみることをおすすめします。
繰り返しますが、20代の経験が30代以降の大きな財産となるはずです。
まとめ
20代への「一般的な期待」を過去の残像とした上で、あえて20代でやるべきことを考えました。
アイデアレベルの「やるべきこと」は、検索すればありがたいことにほかにもたくさん出てきます。
旅に出る、スキルを磨く、本を読む、交友関係を広げる、(消費ではなく)生産に時間を割く、発信する。
盗めるものは盗み、ぜひ自分に合ったアクションをとってみてください。
(執筆:中村 直太)
日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。
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