少し前に、あるお母さんが、子供にこんな事を話していました。

「今、我慢すれば、後で楽しいことが待ってるよ」

 

おそらく、子供が勉強しないことに対する言葉だったのだと思います。

 

この言葉の根底にあるのは、

-苦しいことをしておかないと、楽しいことはない。

そんな考え方かもしれません。

 

子供の話だけではありません。

これは、「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)や「倹約」にも見られる傾向ではないかと思います。

 

いまをできる限り切り詰めて、可能な限り投資に回す。

↓

30代、40代で資産を築いて、FIREする。

↓

するとそこから、ようやく楽しい人生になる。

そんな発想です。

 

「不安を消す」ための人生

私も学生の時、借金を抱えていましたので、その考え方は非常によく理解できます。

というのも、とにかく、将来が不安なんですよね。

 

知人の「ママ友」「パパ友」の中にも、

 

・良い中学・高校に入れないと、良い大学に行けない

・良い大学に入れないと、就職に困る

・大企業に入れないと、お金に困る

・収入を貯蓄や投資に回さないと、老後に貧困になる

 

ということを熱心に語る人がたくさんいます。

そして、その不安を消そうとして、「今は我慢」を自分(または子供など)に言い聞かせるんです。

 

例えば、東京とその近郊では、中学受験をするためには、多くの人は小学校4年生から、塾に通います。

大好きなゲームも、思い出になる家族旅行も、友達との遊びも控えて、受験にコミットする。

 

もちろん、中学生、高校生になっても大学受験のために、塾に通う。

休日は図書館通い、部活も趣味にも没頭せず、来たるべき受験に備える。

 

大学生になっても同じです。

今度は「就職」に備えて、授業はサボらず、就職のために情報収集。

 

「面接で話せるネタ」を作るために、奔走します。

語れるようなネタがある。人と違う「何か」を求めて。

それが充実した学生生活って、言われるんです。

 

就職してからも安心できません。

今度は「老後」のために、長い長い「我慢」が始まります。

 

外食せず、旅行も趣味にも、恋愛にも家族にもお金を使わず、ひたすら「貯蓄」と「投資」。

そして積み上がる貯蓄残高。

 

……と、極端ですが、こんな構成が

「不安を消す」ための人生

の典型です。

 

社会心理学者ヘールト・ホフステードによる国際比較研究では、「不確実性回避(Uncertainty Avoidance)」という指標で各国の不安耐性が測定されています。
日本のスコアは92点(最高100点)で、世界で最も不確実性回避の高い国の一つに分類されます。

・日本:92
・アメリカ:46
・世界平均:64 ResearchGate
・シンガポール:8(最低)

この指標が高い文化では、ルールや構造化された状況を好み、不安を最小化するために様々な対処をする傾向が見られます。

 

こうしたことから、日本人は「不安を消すための人生」を選択することが多いのかもしれません。

 

「「安心」にそんな価値がある?」

私も、そんな感じの人生を考えていました。

老後のための人生。

不安を消すための人生。

 

ところが、私には転機がありました。

 

先輩のコンサルタントと、お客さんの帰りに、「借金を早く返したいし、将来に備えて、ほとんど貯金してます」といった話をしたところ、

「将来っていつ?それって楽しいの?」

と言われたのです。

 

こまりました。

不安を消すための人生において、

「楽しいからする」という発想は、辞書にはありません。

 

また、「老後に困らない」という発想でやっているのです。

そこで言いました。

「今は我慢して老後に備えるのの何が悪いんですか。」

 

すると、先輩は言いました。

「いや、まったく悪くないよ。でも……」

 

「でも?」

「60歳?70歳?いや、40歳でもいい、中年以降の「安心」にそんな価値がある?」

 

ただ、その場では、私はその質問の意味が良くわかりませんでした。

安心に価値があるのは当たり前だと思っていたからです。

 

「将来の安心」に価値はあるか

しかし、後日。

将来ばかり気にして、「今」を有効に使えていないのではないか、「今」を犠牲にしすぎているのではないか、という疑問が浮かびました。

 

友人に贈り物をする。

パートナーと、高級ホテルでお茶をしてみる。

僻地の海外に行ってみる。

高級車を買ってみる。

広い家に住んでみる。

飲み歩いてみる。

子供と遊園地に行ってみる。

会社を興してみる。

習い事をしてみる。

 

そういう選択肢をとれる人生にするには、直ぐに行動を起こさねばなりません。

また、ため込むばかりではなく、お金を使う必要があります。

仕事ばかりしているわけにもいきません。

 

そもそも、40代以上になってからではできないことも数多くあります。

例えば、家のローンを組んだり、結婚して家族を持ち、子供や孫を持ったりするには、生物学的に明確にタイムリミットがあります。

 

漠然とした将来の不安に負けて、「今」にフォーカスしていなかったことで、逃したチャンスがどれほど大きいか。

 

実際、私は若い時に「我慢」を優先したため

「なんで、若いときに、やっておかなかったのだろう」

と、後悔していることがたくさんあります。

 

「今」を積み上げたものが人生

その先輩は、こんな事を言っていました。

「人生って「将来」じゃなくて「今」を中心に考えないと、すげえつまらない人生になるんだよね。お金より圧倒的に貴重なのが、時間だから。」

 

私は聞きました。

「「いま我慢」しても、将来、楽しいことは来ないってことですか?」

「いや、正確に言うと、そういう思考をするひとは「今、我慢」がずっと続く人生になるってこと。」

 

DIE WITH ZEROという本があります。

この書籍は、まさに「人生を楽しくすることのほうが、蓄財するより大事だ」と言い切っているのです。

 

その一節にこんな文章があります。

「私たちは、できる限り人生を充実させるにはどうすればよいか、という問題に取り組んでいる。もう一度繰り返そう。私たちの問題は「できる限り人生を充実させるにはどうすればよいか」だ。

見境なく豊かになることではない。つまり、この本の目的は、富の最大化ではなく、人生の喜びを最大化するための方法を探すことだ。この2つは根本から違う。」

 

確かに我々は、将来の不安をなくすために生きているわけではありません。

40歳、50歳からが人生、なんて寂しすぎる。

 

「不安を消すための人生」

「ガマンを優先する人生」

 

とは、決別しよう。そう思ったきっかけ。

それが「中年以降の「安心」にそんな価値がある?」という質問だったのです。

 

 

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(2026/9/16更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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