「知識の活用」が重要な仕事をしているだろうか?
もしそうであれば、職場の同僚や取引先などの「強い仲間同士のつながり」だけではなく、 ちょっとした知り合いなどの「結びつきは弱いけれど、広範囲におよぶ社外ネットワーク」が、重要な意味を持つ。
例えば、スタンフォード大のマーク・グラノヴェッターは「弱い紐帯(ちゅうたい)の強み」という論文で
職場や友人など、強いつながりよりも、会ったことがあるだけなどの、ちょっとした知り合いなどのほうが、価値ある情報をもたらしてくれる可能性が高い
と、発表している。
また、ハーバード大のニコラス・A・クリスタキスは著書*1の中で、次のように述べてる。
私たちは「弱い絆」によって、友人の友人やあまり知らない人とつながっている。だが、こうした絆であっても 途方も無い価値を持つことがある。 私達を全く知らない人とつなげてくれるのだ。
おかげで、選択の対象となる人の集団は遥かに大きくなる。
彼ら研究者の言うとおり、自らの人脈・ネットワークは開放的であればあるほど、価値がある。
なぜなら「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」*2という言葉通り、知識は全く新しい別種の知識と出会うことで、イノベーションや新しい概念をもたらす可能性が高いからだ。
*1
*2
だが、多くの人は「職場と家の往復、たまに仲の良い友達と会う」という生活をおくる。また「普段は知り合うことのない人に、積極的に会いに行く」という行動を意識的に行う人も少数派である。
さらに転職をするときにも「馴染みのある業界の中で転職する」といったクローズドな行動をしがちである。
これは賢い行動とはいえない。
例えば、「転職で年収はどう変わるか」を調査した所 一番年収が「下がる」のは、同業種・同職種に転職した人。 逆に、一番年収が「上がる」のは、異業種・同職種に専門性を活かして転職した人だった。
(参考:https://doda.jp/guide/manual/1/004.html)
これはつまり
「自分と同じようなスキル・背景を持つ集団の中で移動しても、たいした価値は出せない」
ということである。
逆に言えば 「自分と異質のスキル・背景をもつ集団に移動すると、急に価値を認められる」 ということでもある。人の「市場価値」は一定ではなく、集団の中の希少性によって変わるのだ。
したがって、見てきたとおり「同質性の高い集団」にばかり出入りしていると、いつまでたっても、自分の価値を上げることができない。
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かつて終身雇用が全盛だった頃、「一つの会社に特化したスキル」に最も価値があった。
・どの部門の誰に相談すれば事がうまく運ぶか
・誰が特定の知識について詳しいか
・どの人間が有能で、どの人間が足を引っ張るか
そういった情報が、非常に高い価値を持っていた。
しかし、終身雇用が崩壊し、転職者、フリーランス、一時雇用者といった労働力がますます増加する中、 「スキル」や「人脈」の価値は、社内の価値基準だけでは評価不可能である。
では「社外のネットワーク」はどのように形成すべきだろうか。
よく言われるのが「異業種交流会」あるいは「勉強会への参加」だ。保険会社や、金融機関が主催したり、任意団体が「勉強会」という名目で開催していたりする会合である。
もちろん、こう言った会合に参加するのも悪くはない。
ただ、私はこういった会合よりもっと重要だと思うのが、「webでの発信」を通じたネットワークだ。
例えば、webにブログを掲載する、SNSで有用な情報のシェアを続ける、投稿サイトに作品を載せる。 そのような活動を通じたネットワークは、上に挙げた活動よりもかなり質の高いネットワークを構築できる可能性が高い。
その理由は3つある。
1.情報発信をする人はネットワークのハブになれる可能性が高い
その人にとって、獲得したネットワークの有用性がどれほど高いかを測る指標の一つが、「ハブとなっているか」である。つまりネットワークの中心人物かどうかである。
ネットワークの中心にいるほうが、周辺にいるよりも多くの人とつながることができる可能性が高い。
勉強会も異業種交流会も「自分が主催する、発表する」ことが最もメリットがある。それと同じだ。
2.webへ情報発信をすることで「社会的に離れた人」と出会う可能性が高い
信頼関係のある自分の友だちへ情報発信をしても、おそらくその情報はすでに友達も知っているだろう。逆に、信頼関係のない人達に情報を流すほうが、「知らなかった」「有用である」と感じてもらえる可能性が高い。
できるだけ社会的に遠く離れた人へ情報を届けるには、オープンなネットワークであるwebが最適である。
3.発信することで、自分の持つ知識を明文化できる
ネットワークへの参加をするには、「自分がいかに役に立つのか」「ネットワークの構成メンバーにどのように貢献するか」を 証明することが求められる。
だが、自分がどのような知識を持っているのか、専門は何かと改めて問われると意外に説明するのは難しい。
したがって、これらを明文化して発信することは、自分がネットワークを構築できるのみならず、 外部ネットワークへの招待を受ける可能性も高まる。
こう書いていくと、ブログやらなければダメですか?とか作品を発表する場を持たないとダメですか?と疑問に思う方もいるだろう。
だが、「情報発信」とは、そんな手間のかかることをする必要もないし、思いつめてやらなければいけないものでもない。お金に繋がることをする必要もない。
例えば私の友人に、Twitter上で思い詰めている人に優しい言葉をかけて回る、ということをしている人がいる。「勇気づけられました」とお礼を言われることも多いそうだ。その友人のフォロワーはすでに5000を超える。
また、webの掲示板、ソーシャルブックマークなどで「困っている人に役立つ情報を提供する」というだけでも良い。Amazonに本のレビューを書いても良いし、面白い記事を、ちょっとコメントを付けてシェアするだけでも十分人の役に立つ。
有名なレビュアーやSNS上で面白い記事を取り上げるキュレーターはそれだけで価値がある。
著名なジャーナリストであるアルビン・トフラーは著書*3において、こう述べた。
四肢が麻痺した人が電話で友人に貴重な助言を与えた時、報酬を受け取らなくても、精神科医が一時間百ドルで行う治療と変わらない価値を持つのではないだろうか。
その友人が自殺を思いとどまったとすれば、電話での助言で救った命の価値をどう考えるべきなのだろうか。助言には一時間二百ドルの価値があったのだろうか。
革命的な富は金銭だけではないのだ。
あなたがwebでつぶやいたことが、大きな決意を人に促すかもしれない。何気なくシェアした記事が、誰かのビジネスに繋がるかもしれない。それは「価値を生み出している」と言える。
そして多くの人の役に立てば、自ずとあなたはネットワークの中心に立つことになる。
情報発信とは、そういうものである。
*3
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