
兵士は優れた指揮官を選ぶ権利があると、ピーター・ドラッカーは「非営利組織の経営」の中で述べた。
これは、現代だけの話ではない。実際、古代ローマにおいて、市民は兵士となる義務があったが、自分たちの指揮官となる「執政官」管理職たる「百人隊長」は、自らの投票により決めることができた。
当然、自分たちの生死を決める指揮官であるから、彼らは有能な指揮官を全力で選んだのである。
これは、現代の会社でも同じことが言える。
「誰のもとで仕事をするか」
「誰に人生を預けるか」
それを選ぶことはとても重要なことだ。
しかし、「社員は、有能な社長、管理職を持つ権利がある」との認識は、会社においてはそれほど重要視されてはいない。残念ながら現在の会社において「上司を選択する」ということはほぼ不可能だ。
あなたの会社は、「上司を選べる」という制度があるだろうか?おそらく、Noではないだろうか。
私が過去に在籍した会社においても、「どの上司のもとで働くかを選べるようにしよう」という提案がなされたことがあったが、結局それは経営者によって却下された。
理由は、「上司が人気取りに走り、部下にこびるようになるから」というものだった。
しかし、本当にそうなのだろうか。
それについて、ある会社の話がある。そこは、「自分で所属部門が選べる=上司が選べる」という会社だった。
その会社の経営者は「上司が人気取りをしたりしないのですか?」という質問をされると、こう言う。
「あなたは「部下に媚びる上司」の元で働きたいですか?」
すると、殆どの人は「いえ、できれば部下に媚びる上司ではなく、成果を出す上司、自分の能力を活かしてくれる上司のもとで働きたいです。」と言うそうだ。
経営者は言った。
「その状況では上司は自分の有能さを成果で証明しなければなりません。部下になりたい、という人がいなくなってしまいますからね。当然、部下へのコミュニケーションも怠ることもないです。」
「成果を出していない部門に人気が集まることはないですか?」
「無いですね。成果を出さなければ、ボーナスも出ないですから。」
「なるほど。」
この経営者によれば、「より優れたビジョンを描く上司」のもとに人が集まるという。その結果、上司同士の競争も生まれ、無能な管理職を排除することもできるとのこと。
「誰も部下になりたがらない上司は、事実上の降格です。」
だが、これは「民主的な会社」ではなかった。
スピードが重要な戦場においては民主的な意思決定など、何の役にも立たない。もちろんこの会社においても、「上司の権限は絶対」であり、人事権はその上司が全て握っていた。
したがって、社員は「上司を選ぶ権利」は有するが、「上司に逆らう権利」は持っていなかった。
実際、ローマ軍団内においても同じように、自分たちが決めた指揮官には兵士は「絶対服従」だった。逆らえば死刑になることもあった。
「部下に服従を求める」かわりに、「上司を選ぶ権利」を与えること。
その経営者は、「部下の納得感やモチベーション、意思決定のスピード、成果を重視する風土に対しては、一定の効果がありました」と言い、
「上司を選べる会社にしたら、会社は強くなります」と述べた。
(2026/3/10更新)
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