地方創生という言葉を聞くとゾッとする。
石破内閣が発足し、所信表明演説で「地方創生交付金の倍増」を掲げるのを聞いて、
「すげえ迷惑」
以外の感想がなかった。
「地方創生」を掲げたばら撒き政策なら、第二次安倍内閣がド派手にやりましたよね。
あの当時に担当相を勤めていたならなおのこと、石破総理には過去の検証をしっかりやってもらいたい。
昭和の時代から自民党は選挙対策としてばら撒きをしてきたけれど、ばら撒きで地方の経済が活性化することはありませんし、人口が増えることもありません。今までだって効果なかったでしょ?
お金をもらって活性化した地方って、どこかにある?
少子化が止まった地方自治体が、どこかにあるの?
安倍政権時代にばら撒かれた交付金で地方自治体がやった少子化対策って、前に書きましたけどこんなんですよ。
まさかこんなのをまたやるの?
「雇用を増やす」と言って箱物を作ったところで、増えるのは低賃金で働かされる非正規雇用ばかりじゃないの。
地方へのばら撒き政策で建てた公共施設で働くスタッフは、最初は悪くない条件で自治体に直接雇用されるんです。だけど、そのうちスタッフの人件費を含めた施設の維持管理費が負担になって、行政コストを削減するため、自治体は指定管理者制度で施設の運営を民間の事業者に任せるようになる。
公共施設が指定管理になると、現場スタッフの雇用主は自治体から民間の事業者に変わり、給料と待遇はドーンと下がるんですよね。ドーンと。私が働いた公立美術館ではそうでした。
自治体に雇用されていた時はフルタイムの仕事だったのに、指定管理に変わった途端に労働時間を大幅に減らされて、社会保険にも入れてもらえない。「これでは生活していけない」と、若い独身女性たちは辞めていき、残ったのは「扶養の範囲内で働きたい」主婦ばかり。
それでも人余りの時代には、例え賃金が安くて条件が悪くても、パートタイマーを募集すればいくらでも応募があったのです。
だって、公共施設のスタッフって外聞のいい仕事でしょ?
当時は子育て中の主婦を雇ってくれる職場も少なかったので、働けるだけありがたいと思って、低賃金や悪条件は我慢するしかなかったんですよ。
けれど、そうこうするうち地方の少子高齢化と人口減はガンガン進み、人手不足になり始めると、いくら募集をかけてもスタッフが集まらなくなりました。
もはや貴重な存在となった若者は給料の安い仕事を敬遠するし、結婚しても共働きが主流となった今では、扶養の範囲内でゆるく働きたい主婦も減ったのです。夫婦二馬力でがっつり働かないと生きていけない世の中じゃ、稼げない仕事は主婦からも「ないわ〜」とスルーされるんですよね。
若い子が新しく入ってこない中で、スタッフの平均年齢はどんどん上がっていきます。
私が働きながら個人的にキツイなと思っていたのは、若い女性が着る前提でデザインされていた制服。開館当初(1990年代)は若い女性スタッフを揃えていたため、若い人が着てこそ映えるフレッシュなデザインが採用されたのでしょう。それを今や40代〜60代のスタッフが着せられるという苦行。
見る方もキツイと思っているだろうけど、着てる方だってツライと思ってるんですよ。似合ってないのは分かってるっつの。
いくら「制服を変えてほしい」と訴えても、「新しい制服を作る予算がない」という理由で見送られてばかり。
デザイナーに新しいデザインをお願いするお金がないだけでなく、既存の制服を作り直すお金さえないから、みんな擦り切れるほど洗濯されて、すっかり色褪せた制服を着るしかありません。
もうさ、これなら制服なんてUNIQLOのスーツでいいじゃない。スカーフだけオリジナルで作って、統一したのを着ければいいでしょ。
どの公共施設でも、お金があるのは最初のうちだけ。
建物も制服も、世界的に有名な建築家やデザイナーに手がけてもらって話題を作る。そして、開館式には地元が輩出した国会議員がテープカットに来るんです。そこが最大にして最初で最後のハイライト。
つまり、その施設は完成した時点で政治的な役割をほぼ終えてしまい、その後の管理と運営については何も考えられていないわけ。
だから完成後の予算は削られていきます。だって、もともと貧乏な地方なのだから、潤沢な運営費などあるはずがない。企画展はショボくなる一方だし、せっかく大金をかけて建てた施設なのに、建物の改修さえままならず、年を追うごとにみすぼらしくなっていく。
だいたいね、世界的な建築家がデザインした建物って、デザインのコンセプトや斬新さばかりが重視されていて、後の管理コストのことは全く考えられてませんからね。
コンクリート打ちっぱなしや全面ガラス張りの建物は、外気の影響を受けやすいから、夏は暑くて冬は寒い。冷暖房費がめちゃくちゃかかります。
施設周辺に人工池や噴水なんかを作ってしまうと、もっと大変。定期的に池の水を抜いて清掃しないと、すぐに藻が生えて水が濁り、ドブのようになってしまう。
「景色に緑があると目に優しいよね」なんて、後のことを考えず施設周辺に安易な植樹をすると、やがて想定以上に木が成長してしまい、毎年のように多額の剪定費が必要になります。
地域住民のための文化施設が無駄とは言いたくないけれど、税金で管理運営する施設が増えれば増えるほど、地方自治体の負担が増しているのは事実です。
「それなら、もう箱物づくりはやめよう。後に残るものを作ったり買ったりしてはならぬ。ハードではなくソフトに使え」と言ってばら撒かれた1回使い切りの大金は、有効な使い道がありません。使い道がないので、その場限りの「地域活性化事業」と称したイベントを開催して、派手に無駄づかいするしかないんですよ。
さて、今は秋ですね。秋はイベントシーズンです。毎週のようにそこかしこでイベントやってます。
一体いつからでしょうか。こんなにイベントが増えたのは。
民間が補助金を使わずにやっているイベントなら何の文句もありませんけど、国から交付金をもらった自治体が絡むイベントが乱発されるとなると、話は別。
初回はかかる費用の全額を税金で面倒見てもらえるので、派手な企画をぶち上げるんですけどね。これが続かないんですよ。いや、続かない方がまだマシなんですよ。
最初から1回限りでやめるつもりなら、まだいいの。打ち上げ花火みたいにドカーンとぶち上げて、パァーッと使って、解散できたら傷は浅く済む。
だけど、変に真面目に「地域活性化」ってやつに取り組んじゃって、イベントの実行委員会を立ち上げて、「来年からは自主開催していきましょう!」ってやっちゃうと、やがては自分の首が締まります。商店街なんて、そのせいで何重にも首が締まってますからね。
自分とこの商店街で開催するイベントの費用が組合の持ち出しになるだけでなく、周辺地域の商店街で開催されるイベントにも協賛や寄付を求められ、おかげで毎年毎年、バカにならない額がイベント代に消えていく。
イベントを開催することで、商店街にお客さんが増えればいいですよ。だけど、実際に増えているのは買い物客じゃなくて、ただの通行人ですからね。イベントに来る人はイベントに来ているのであり、商店街で買い物をするために来るわけではないのです。
イベント会場である商店街にどれだけ人が集まろうと、それが各お店の売上にはほとんどつながっていないのが現実。つまり大金を費やして、ただ見せかけの賑わいを演出しているだけなんですよ。
そうした無駄な事業にお金も労力も取られてしまうせいで、本当にやるべきことには手が回らなくなってしまってる。活性化の看板を掲げて始めた事業が、むしろ地域の衰退を早めているんです。
だから、もう国は余計なことをしないで欲しい。
これ以上むなしい仕事を増やさないで。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
【著者プロフィール】
マダムユキ
最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。
Twitter:@flat9_yuki
Photo by :Adismara Putri Pradiri