新人営業パーソンのAさんとBさんの話
とある会社にAさん、Bさんという二人の新入社員がいた。二人は同期で、営業部署に配属された。二人とも同等レベルの大学を卒業し、同じ新入社員研修を受けた。同じ上司の下につき、同じ目標を持ち、同じエリアを担当した。
ほぼ平等の条件で社会人生活をスタートした二人だったが、一年後、二人の成果には大きな差が生まれた。Aさんは同期の中でもトップの成績を収め、稼ぎ頭へと成長していた。一方Bさんは最下位の成績で、二年目に違う部署へ配属となったという。
一体二人は何が違ったのか。
顧客とのコミュニケーション能力の高さか?課題を見つける論理的思考力か?担当業界の知識の豊富さか?
このいずれでもなかった。Aさんは優秀ではあったが、とはいえ1年目の新入社員。能力がずば抜けて高いというわけではなかった。
二人の成果を二分した決定的な違いは「やり切る」ことへの執念だった。
社会人一年目に必要な3つの原則
このエピソードを聞いて、ライフネット生命社長の岩瀬大輔氏の言葉を思い出した。『入社1年目の教科書』(ダイアモンド社)の「はじめに」に書かれている3つの原則だ。岩瀬氏は自分が新入社員の頃、先輩からもらった言葉を引用し、社会人1年目には3つの原則を守ることが重要と話している。
原則1 頼まれたことは、必ずやりきる
原則2 50点で構わないから早く出せ
原則3 つまらない仕事はない
中でも、原則1の「頼まれたことは、必ずやりきる」ことの重要性を以下のように語っている。
社会人になったばかりの人に、仕事に取り組む上で最も大切なアドバイスを送る時、僕は最初にこの話をします。頼まれたことは何があっても絶対やりきる。
(中略)何度も催促しない限り頼んだことをやってくれない新人に、積極的に次の仕事を頼む人はいません。「何があってもやりきるんだ!」という強い意志を持って仕事に臨み、実際にやりきる人だけが信頼されるのです。周囲から信頼に足る人物だと評価されれば、次の仕事が回ってきます。
余談だが、私は前職で新入社員研修の講師をやる際、この言葉をいつも社会人1年生に贈っていた。彼らの多くは「何を当たり前のことを言っているのか」といった表情でポカンとして聞いていた。
しかし、数年も仕事をすれば、この言葉の本当の重みを感じられると思う。私自身、偉そうにこの話をしながら、「頼まれたことを何があってもやりきれているだろうか」と自戒の念を込めずにいられなかった。
「やらない人」は、自分が「やらない人」だと知っている。
「お客さんに送るように言ったメール、もう送った?」「あ、すみません。まだ送ってないです。」
「この書類、明日までに修正お願いしてたんだけど、どこまで進んでる?」「実は他のお客さんから急な依頼があって、まだ手をつけてないんです。」
やらない側はやれない理由を正当に述べているつもりだが、聞く側はそれが言い訳だと感じてしまう。実際、彼ら自身も言い訳であることを誰よりもよくわかっている。しかし、思わず言い訳をしてしまうのだろう。
「やらない」と「できない」には大きな違いがある。「できない」のは単純な能力の問題。どんなに優秀な人材でも、新しいことに挑戦し、結果としてやれない(できない)ということはあるだろう。
ただ大抵の場合、依頼した側は能力が足りないからできないのか、その人が意図的にやらないことを選んだのか、判別がつく。依頼するという行為はそれなりのリスクが伴う。通常は相手が出来ると見込んで、能力が伴う範囲で仕事を依頼しているからだ(よっぽど意地悪な上司があなたを困らせたくて、わざと難解な仕事を頼んでいない限りは)。
「やらないこと」の本当の代償とは
もし身の回りに「やらなかったこと」を怒ってくれる上司がいたら、その存在をありがたく思った方が良い。それはあなたならやれると信頼し、まだ期待していることの証だ。
逆に怖いのは、何も言われないケースだ。「うまく言い逃れが出来た」「怒られなくてラッキー」と思うのは間違いだ。おそらくその上司はあなたにこれ以上期待することはないし、自分を成長させるための仕事も回って来ないだろう。
「やらないこと」の代償は叱責ではない。本当の代償は、社会人としての信用を失ってしまったことにある。一度失ってしまった信用を取り戻すのには、相当の時間と労力が必要だ。
実は、このAさんは私の友人である。毎日夜遅くまで仕事をし、時には土日も犠牲にして働いているのを知っていた。なぜそこまでしてやるのかと聞いたところ「やると自分から言ったからには、約束を守りたい」と言った。
自分との約束を守る。これ以上の真っ当な理由が他にあるだろうか。
(2025/5/8更新)
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2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。
安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
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2025/5/16(金) 15:00-16:00
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−筆者−
大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。