好きなことを仕事にしている人より、割り切って仕事をしている人のほうが、仕事の継続率も年収も幸福度も高い。
……なんて、信じられるだろうか。
「好きなことを仕事にしてる人のほうが幸せで、長く同じ仕事をして成功するに決まってるじゃん!」という反論が四方八方から飛んできそうだ。
でもわたしは、「さもありなん」とむしろ納得してしまう。
「好きなことを仕事にすれば人生ハッピーになるはず!」というのは、不幸のはじまりとすらいえる思い込みなのだ。
天職を見つける近道はむしろ、「好きじゃなくともまずやってみる」なのだから。
好きなことを仕事にしないほうが、幸福度・年収・キャリアが高い
最初に断っておくと、好きなことを仕事にすること自体を否定するわけではない。
わたし自身、「文章を書く」という好きでしょうがないことを仕事にしているから、「嫌いなことより好きなことを仕事にしたほうがいい」派だ。
ただ、「そうすれば幸せになれる」という主張はちょっとちがうんじゃないか、とは思う。
それについて、『科学的な適職』という本のなかで詳しく書かれている。
この本では、「人間の幸福とは関係ない仕事の要素」として、まず第一に「好きを仕事にする」が挙げられている。
つまり、「好きなことを仕事にするかどうかは人間の幸福には関係がない」と言い切っているのだ。
根拠のひとつとして、ミシガン州立大学が行った「好きなことを仕事にする者は本当に幸せか?」というテーマの大規模調査の結果を挙げている。
研究チームは、被験者の「仕事観」を2パターンに分類しました。
●適合派:「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるタイプ。「給料が安くても満足できる仕事をしたい」と答える傾向が強い
●成長派:「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプ。「そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど給料は欲しい」と答える傾向が強い
一見、適合派のほうが幸せになれそうに見えます。自分が情熱を持てる仕事に就けば毎日が楽しく、金目当てに働くよりも人生の満足度は高まりそうな気がするでしょう。
ところが、結果は意外なものでした。適合派の幸福度が高いのは最初だけで、1〜5年の長いスパンで見た場合、両者の幸福度・年収・キャリアなどのレベルは成長派のほうが高かったからです。
(……)
いかに好きな仕事だろうが、現実には、経費の清算や対人トラブルといった大量の面倒が起きるのは当然のことです。
ここで「好きな仕事」を求める気持ちが強いと、そのぶんだけ現実の仕事に対するギャップを感じやすくなり、適合派のなかには「いまの仕事を本当に好きなのだろうか?」といった疑念が生まれます。その結果、最終的な幸福度が下がるわけです。
出典:科学的な適職
いくら好きな仕事でも、嫌いな作業や気が進まないシチュエーションというのは必ず存在する。
成長派の人は「給料のためだし」「まぁ仕事なんてこんなもの」と割り切れるが、好きなことを仕事に派の人は、「こんなはずじゃなかった」「もっと好きになれるものがあるんじゃないか」とやる気を失ってしまうのだ。
好きなことを仕事にしても、好きなことだけやっていればいいわけじゃない。
それが、好きなことを仕事に派の幸福度を下げるらしい。
好きなことを仕事にした人の仕事継続率は意外と低い
また、オックスフォード大学による「好きを仕事にした人ほど長続きしない」という調査結果も紹介されている。
研究チームは被験者の働きぶりをもとに3つのグループに分けました。
●好きを仕事に派:「自分はこの仕事が大好きだ!」と感じながら仕事に取り組むタイプ
●情熱派:「この仕事で社会に貢献するのだ!」と思いながら仕事に取り組むタイプ
●割り切り派:「仕事は仕事」と割り切って日々の業務に取り組むタイプ
その後、全員のスキルと仕事の継続率を確かめたところ、もっとも優秀だったのは「割り切り派」でした。
(……)
このような結果が出た理由は、先に見たミシガン州立大学の研究と同じです。
もし好きな仕事に就けて最初のうちは喜びを感じられたとしても、現実はそこまで甘くありません。
どんなに好きな仕事でも、顧客のクレーム処理やサービス残業のような面倒ごとは必ず発生するものです。
すると、好きなことを仕事にしていた人ほど
「本当はこの仕事が好きではないのかもしれない……」や
「本当はこの仕事に向いていないのかもしれない……」との疑念にとりつかれ、モチベーションが大きく上下するようになります。
結果として、安定したスキルは身につかず、離職率も上がってしまうのです。
「好き」というのは、そもそもとても不安定な感情だ。
好きを仕事に派は、その基盤が揺れた瞬間、モチベーションが下がり成長できなくなってしまう。
それよりも、(言い方は悪いが)仕事にたいした期待をしていない人のほうが、「案外楽しいじゃん」と思えるものなのだ。
理想通りの運命の仕事になんて、なかなか出会えない
この書はこういった調査結果を紹介したあと、「真の天職は『なんとなくやってたら楽しくなってきた』から見つかる」と結んでいる。
そこで紹介されているのが、「グロウス・パッション」だ。
「情熱は自分のなかにすでに存在するのではなく、なにかをやっているうちに生まれてくる」という考え方で、このグロウス・パッションをもっていると、いまは興味がなくとも「もう少し続ければ楽しくなるかも」と考えるので、トラブルに強く、難しい論文を最後まで読み通す確率が高いらしい。
一方で「情熱はもともと自分のなかにあるものだ」と思っている人は、少しでも嫌な面を見ると、「自分には合わない」と思ってやめてしまうとのこと。
つまり、「もともと好きだと確信しているものを仕事にしよう」とすると失敗しやすいから、「やっているうちに好きになれるもの」がいい、ということだ。
これは、恋愛に例えるとわかりやすい。
「自分から好きになった人としか付き合わない!」と言っている人ほど、「あの人とは服の好みが合わない」「いい人だとは思うけどいまいちピンとこない……」と、恋人ができずに悩み続ける。
たとえそれっぽい人と出会っても、自分のイメージと少しでもちがった瞬間、「本当にこの人が運命の人なんだろうか」と考えてしまう。
それに比べ、「とりあえず友だちから」と気軽にデートを重ねる人のほうが、結果的に素敵な恋人を見つけやすい。
最初の期待値が高くないぶん失望することも少ないし、いろんな人と知り合うことで「好きになれる人」と出会う確率も上がる。
仕事もそれと同じで、「自分から好きになった仕事以外はダメ!」と思っていると、「こんな作業をしたいわけじゃない」「思ったより好きじゃなかった」と嫌になりやすい。
「まぁせっかくだし学べるものは学んどくか」「試しにちょっとがんばってみよう」という考えのほうが、「自分に向いてるのかも!」となれるのだ。
「とりあえずやってみる」が天職を見つける近道
最初から自分の理想と合致する仕事を見つけようとするのは、いるかいないかわからない運命の人との出会いを待つのと同じ。
「やめとけ」とまでは言わないけれど、「もうちょっといろんなものに目を向けたほうがいいんじゃ?」と思う。
「好きじゃない仕事はやらない!」「好きなことを仕事にしないなんて人生損してる!」と決めつけていると、出会えるはずだった「好きになれる仕事」に出会えなくなってしまうかもしれない。それこそ人生の損だ。
「好きじゃないことをするなんて時間のムダ」と言う人もいるが、やってみないと好きか嫌いかなんてわからないし、嫌いだと思っていたことも、その魅力を知れば夢中になるかもしれない。
「とりあえずやってみる」が「ムダ」なんてことは、決してない。
みんながみんな、最初から「好き」を自覚しているわけじゃないし、数えきれないほどある仕事のなかから好きなものを選び取れるわけじゃない。
「好き」にこだわりすぎて視野狭窄陥り不幸になるのは本末転倒。
「まずは割り切って仕事して、やっていくうちに好きになれるだろ」くらいで取り組む方が、「好きになれるもの」に出会う可能性が高まる。
そこで仕事を楽しめたらラッキーだし、好きになれなかったら「これは好きじゃないんだな」とまた別のことを試してみればいい。
「好き」という不確実な感情にとらわれすぎたり、白馬の王子さまを待って食わず嫌いしたりするよりは、「とりあえずやってみよう」くらいのほうが、天職に出会えるだろう。
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【著者プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
ハロプロとアニメが好きだけど、
著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)
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(Photo:Jesper Rønn-Jensen)