新型コロナウイルスの変異株の拡大で次の大きな波が懸念される中、東京五輪を開催するかしないか?

我が都道府県に緊急事態宣言を出すか出さないか?

 

これらを「決める」ことは、一般人の想像を超える重く苦しい仕事です。しかし最終的に、リーダーは独りそれを行わねばなりません。きょうはその「決める」ことが何であるかをあらためてながめてみたいと思います。

 

「決」とは堤を切って水を流すこと

「決」の字は、「さんずいへん」に「えぐる」という組み合わせです。これは大雨で川の水が増し、大規模な洪水が起きそうな切迫した状況の中で、堤防の一部を切って水を流し、被害を最小に留めるかどうかを判断することを示しています。

 

堤防の一部を切れば、切った地域の被害は確実に出る。より大きな被害を食い止めるにはやむをえないかもしれない。

しかし、このまま増水がおさまって堤防を切らなくてすむ可能性もある……。「決める」とは、そういった緊張が膨れあがったところで意を固めることです。

 

おおいなる想像が決断の質を決める

人が何かを「決める」とき、そこには3つのステップがあるように思われます。まずは「分析」。

情報を集め、状況を明らかにします。

次に「想像」。取り得る選択肢を考え、それぞれについて利点や欠点、それが及ぼす結果を思い描きます。

そして最後に「覚悟」。

この3ステップにおいて、2番めのいわばシミュレーション的想像力が重要な鍵です。

1番めの情報をうまく生かすのも、3番目の覚悟の深さ・強さを生み出すのも、想像力です。

 

「これを選んだらどういう影響が出るだろう。このやり方だと受けた人の気持ちはどうだろう」

など、どれだけ冷静で、しかし血の通った、そして哲学のある想像ができるか。その質が、決断の質を決めるでしょう。

 

複数価値の葛藤が生じるほど決めることは苦渋になる

私たちは何かを決めようとするとき、価値というものを必ず考えています。

自分の内には、経済的価値や美的価値、道徳的価値などいろいろな価値軸があり、それらが複雑にからまって価値観全体をつくりあげています。

 

決めることが困難になるのは、その物事が複数の価値軸にまたがり、評価が相反するときです。

いわゆる「ジレンマ(葛藤)」 「トレードオフ(こちらを立てれば、あちらが立たず)」の問題です。

例えば、担当製品で天然素材を使うよりプラスチック素材を使うことが安価になるとき、後者に切り替えるのは経済的価値から見れば正しい選択です。

しかし、外見のナチュラル感が失われ安っぽくなるのは美的価値のうえでマイナスです。

また、地球環境を守るという道徳的価値の観点で正しくありません。

 

そうした複数の追求価値の間で葛藤が生じた場合、最善の答えをどこにつかめばよいでしょうか。

それは結局、自分がどの価値軸に肚をくくれるかにかかっています。その決断によって最悪の結果が出たとしても、肚をくくった方向性であれば禍根や後悔はなく、自分のなかでおさまりがつくでしょう。

 

個人が自分の身の回りのことを「決める」ことですら心労です。ましてや集団の利益を代表するリーダーにとって「決める」ことは、さらなる心労であり難事です。集団が大きくなればなるほど、その内部にはたらく力学も複雑になるからです。

 

複雑な力学の中で、リーダーがどの価値軸に肚をくくるか、そしてそこに至った理由をどう説明するか、フォロワーはそこをきちんと見守り促すことが求められます。

(執筆:村山 昇)

 

 

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