「仕事ができる同僚と自分を比べて落ち込んでしまう」
「失敗やミスをすることを過剰に恐れてしまう」
「常に他人の目や評価が気になってしまう」
このように、仕事やプライベートにおいて、他者との違いや自分のダメな部分ばかりが気になってネガティブな気持ちになってしまうことはありませんか?
これらは、「自己肯定感の低さ」が原因かもしれません。
自己肯定感は、仕事のパフォーマンスや人生の満足度を上げるうえで重要な要素の1つです。
本記事では、自己肯定感が高い人と低い人の特徴や、自己肯定感を高めていく方法についてお伝えします。
自己肯定感とは
自己肯定感とは、その言葉の通り「ありのままの自分を肯定する感覚」のことです。
他者と比較することなく、自分自身が「今の自分」を認め尊重することで生まれる感覚であり、物事を前に進めるための原動力となります。
自己肯定感が高い人の特徴
まずはじめに、自己肯定感が高い人にみられる特徴を3つほどご紹介します。
特徴①:主体性がある
「ありのままの自分」に満足しているため、たとえ劣っている部分や苦手なことがあったとしても、「自分はダメな人間だ」と卑下することはありません。
自分の長所に焦点を当て活かすことを考えていきます。
また、他者に対しても相手の良い面へ自然と目を向ける傾向にあり、相手の考えや意思を素直に受け入れ尊重します。
特徴②:自分に自信があり、行動や思考が前向き
物事を肯定的に捉えるため、思考や発言も前向きなものになります。
そして、自身の意志決定にも自信があるため、他者の目や評価に振り回されることなく、自分自身を心のよりどころとして堂々と行動ができます。
特徴③:失敗を恐れない
物事を「まあ大丈夫だろう」「なんとかなるさ」と楽観的に捉えることができるため、新しいことや困難なことに対しても失敗を恐れずチャレンジします。
たとえ失敗したとしても、「また頑張ればいいか」と前向きに考え、失敗も成長の糧にしていくため、結果として成功しやすくなります。
自己肯定感が低い人の特徴
次に、自己肯定感が低い人にはどのような傾向があるかをみていきます。
特徴①:他者と比較する癖がある
自己肯定感が低い人は、過剰に周囲の人と自分を比べてしまうという癖があります。
自己成長につながるという観点で、目標とすべき人がいること自体はけっして悪いことではありません。
考え方や哲学を自身の指針として取り入れることで、行動の質が高まるというメリットがあるからです。
しかし、過剰に他者と比較してしまうと、「何でこの人はできているのに、自分はできないんだ」と自己嫌悪に陥ってしまったり、嫉妬や劣等感で苦しむようになったりと、精神的に不安定な状態になります。
特徴②:過去にトラウマがある
例えば、厳しい家庭で育ち、いつも親から怒られていた人。
優秀な兄弟と比較されながら育ってきた人。
大きな失敗をしたことがある人。
このように、過去の失敗経験や自尊心を傷つけられた経験が原因で、自己肯定感を持てないという人も少なくありません。
「自己肯定感」とは、先述したように「ありのままの自分を肯定する感覚」のことです。
感覚とは、物事や出来事に対する「解釈」で生まれるものです。
なので、自己肯定感が低い人の場合、周囲からみて十分に成果を上げていたとしても、「まだまだ自分は能力不足だ」「〇〇さんの方がすごいから」等々、自分の劣っている部分に目を向け自己否定をしたり、周囲からの評価を素直に受け入れないため、いつまでたっても自己肯定感が育まれないといったことが起こります。
特徴③:承認欲求が強く、他者に依存してしまう
自分で「自分のこと」を認められないために、他者に認めてもらうことで自分の価値を確かめようとする傾向もあります。
そのため、常に他者の目を気にしており、いかに他者から評価されるかが行動基準になります。
また、自分に自信が持てないため、主体性に欠けるという特徴もあります。
意思決定を他者にゆだねることが多く、自分一人で決断しないといけない場面でも「いかに他者から否定されないか」という基準で選択肢を選ぶことが多いです。
自己肯定感が仕事にもたらす影響
自己肯定感の高低は、仕事の姿勢やパフォーマンスにも大きな影響を与えます。
自己肯定感が高いことのメリット
自分の能力や働き方に自信を持ち、結果として仕事で活躍しやすくなります。
長所をきちんと把握しているため、上手に活かすことができ、良い成果につなげられるからです。
自分の短所を上回る長所(例:周囲を巻き込むことが得意、提案書づくりは誰にも負けない等々…)を心から信じています。
そのため、短所についてはくよくよ悩まず、冷静にその短所の埋め合わせを考えることができます。
例えば、得意な人に思い切って任せる、自分が学んでスキルを習得したりする、などの行動をどんどん起こせるのです。
基本的に、エネルギーを不必要に分散させることなく、自分の長所を生かした働き方に集中することができます。
加えて、自己肯定感が高い人は、前向きに短所を補う動きを自分で選択できるので、それが自信や評価につながり、自己肯定感はさらに高まることになります。
自己肯定感が低いとどうなる?
一方で、自己肯定感が低いと、失敗しそうなことはとにかく避けるようになります。
これは、自己肯定感が低い故に、少しのミスで自分の人間性まで否定してしまうためです。
そのため、新しいことになかなか挑戦しにくくなってしまいます。
新しい挑戦の機会を、「自分なんかができるわけない」と反射的に拒否してしまうのです。
「失敗しそう」「評価が下がりそう」「嫌われそう」等々、マイナスの想像で頭がいっぱいになり、結局、自分がやり慣れている仕事を選ぶようになります。
結果として、自分の存在価値を「下げない」ことはできますが、「高める」ことはますます難しくなります。
自己肯定感を低くしてしまう悪習慣
自己肯定感の低い人は、無意識のうちにさらに自己肯定感を低くする行動をとり、負のループに陥っていることが多くみられます。
ここでは、注意すべきポイントを2つほどお伝えします。
完璧主義から脱する
成長意欲が高いことはけっして悪いことではありません。
しかし、「もっと頑張らなくては」「もっとこの部分を直さなければ」と過度に「もっと、もっと」と完璧を追求しすぎてしまうと、今の自分を否定することにつながります。
人間なので、完璧というのはありえません。
自分の足りない部分ばかりに焦点を当て完璧主義を目指すのではなく、良い所も悪い所もある自分を認め、長所をさらに伸ばすにはどうしたらいいか、活かしていくにはどうしたらいいのかについて考えていくようにしましょう。
思い込みに気づく
自己肯定感が低い人は、「〇〇しなくてはいけない」「〇〇しないと嫌われる」といったようなネガティブな思い込みを持っている人が多くいます。
例えば、人に迷惑をかけてはいけない、失敗してはいけない、目立ってはいけない、弱音を吐いてはいけない、などです。
たいていは、育った環境や過去に親や先生に言われたこと、経験したことなどが影響しています。
思い込みは、最終的には手放すことが理想ですが、ファーストステップとしては「思い込みであることに気づく」ことが大事です。
自分では当たり前のものになっていて気付かないことが多いので、これまでの自分の行動を振り返り、どのような基準で物事を判断してきたかを考えてみてください。
そこに「〇〇しなくてはいけないから」といった言葉が出てくるようであれば、それが自身を縛っている思い込みである可能性があります。
自己肯定感を高める方法
自己肯定感を高めていくために、ぜひ日常的に取り入れていほしいことを2つほどご紹介します。
方法①:不安を書き出し、今の自分を認めてあげる
まずは、「今、何が不安なのか?」「どんな点で自信がないのか?」を書き出してみることをおすすめします。
紙に書き出すことで、自分が抱えているぼんやりとした不安を、頭からいったん取り出し、「あぁ、自分は今こんな状態なのか」と、外から眺めることができます。
また、自己肯定感が低いがために、必要以上に悩んでしまっていた場合、それを書き出してみると、「これって、自分をただ過小評価しているだけでは?」と、ふと現実的な見方ができることがあります。
また、不安や悩みを見つめることで、自分を認めてあげるきっかけをつかむこともできます。
例えば、以前の自分なら持っていなかったであろう不安や悩みの場合、「一年前だったら、もっと小さなことで悩んでただろうに。自分も成長したな。結構頑張ってるじゃん。」と、今の自分を認めてあげることができます。
逆に、依然とあまり変わらない悩みだったら「これを解決しようとしている時点で、今までの自分からは既に一皮むけているじゃん。」といったように視点を変えることで前向き捉えることができるかもしれません。
いったん自分を認めてあげると、少しずつ前向きに次のアクションを考える姿勢を持つことができるようになります。
方法②:第三者としてアドバイスを考えてみる
不安を書き出しても、考え方を変えることができない…。
そんなときは、立場を変えて「第三者としてのアドバイス」を考えてみる方法がおすすめです。
親しい友人が、自分と同じくらい自己肯定感が低く、同じ不安や悩みを抱えていると仮定しましょう。
そして、「自分は、彼/彼女にどんなアドバイスをするか?」を想像することで、考え方を変えるヒントを得られるかもしれません。
こうすることで、客観的に状況を見つめることができるようになります。
例えば、「どれだけ頑張っても上司に認めてくれない。いつもダメ出しばかり。もう自分なんて必要ないんじゃないかと思う」と感じている場合。
それと全く同じ悩みを、友人に相談されたと想像してみてください。
すると、「なぜここまでネガティブに考えているんだろう」と、疑問に思うかもしれません。
つまり、この友人は現実を正しく捉えないまま、不必要にネガティブになっているのでは、と感じます。
そして、同じ悩みを持っている自分も、この友人と同じような状態になっていたんだ、ということに気づけるかもしれません。
「アドバイスをする側」になれば、当事者よりも一歩引いて課題を眺めることができます。
そのため、ぜひそのように一歩引いた立場で「どう考えを変えられそうか」を想像してみてください。
「その上司のスタイルかもよ?あなただけでなく他の人に対してもそのように接してるかも」「この間、〇〇さんがあなたのこと褒めてたよ」そんな声かけが頭の中に浮かんできたら、それをそのまま「自分宛のアドバイス」として受け取ってみましょう。
別の角度から現状を眺めることで、次のアクションにつながる糸口が見つかるかもしれません。
まとめ
ビジネスパーソンに必要な自己肯定感についてお伝えしました。
無理をしてでも高めましょう!ということではありません。
今回の話を通して、「自己肯定感が低すぎる状態では前進できない」ということがお伝えできていたらうれしいです。
ぜひ、まずは「現状を正しく見る」ところから始めてみてください。
自己肯定感が下がり続けるループから脱することにつながります。
そして、次々とステップアップのためのアクションを考えられるようなビジネスパーソンに近づけるかもしれません。
(執筆:鈴木 麻希)
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。
ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。
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Photo by Toa Heftiba