「学び」は好き。でも「勉強」は?

「なぜ、学ぶのか」と問われたら、良いことがあるし、何より楽しいからと答えます。ただ、「勉強は、好きですか」と問われたら、好きではありませんと答えるかもしれません。なぜなら、「勉強」という言葉は、何につながるかその目的も今一つはっきりしない中で知識やスキルを覚えることというイメージにつながるからです。少しデフォルメして表現していますが、勉強について、少なからず同様の印象を持たれている方もいるのではないでしょうか。

 

学ぶとは、「汎用化」させること

では、学ぶとはそもそもどういうことなのでしょう。私は、個別の事象を他の事象に適用できるように汎用化させることが学ぶことだと考えています。

 

一つ例をあげてみましょう。

 

テストの問題を問1から順番に解いていった結果、時間がなくなり、解けるはずの問題に手をつけることなく終了してしまった。誰しもが学生時代に経験したことがあるのではないでしょうか。

 

この経験をテストの事だけにしてしまうのは、勿体ないことです。例えば、この経験からの学びとして「全体像を最初に把握し、優先順位をつけて課題に取り組むことが大事」と汎用化させることができます。するとこの学びは、テストだけの話ではなくなります。

 

日々、様々な課題の中で優先順位をつけて仕事を進めなければならない、まさにビジネスにおいて求められることでもあります。つまり、個別の事象(=テスト)を学びに汎用化させることで、他の事象(=仕事)に適用することができているということです。

 

学べる人は、「タイパ」もよくなる

こう考えると、学べる人と学べない人の差というのは、経験を次に活かすことができるかどうかとなります。

 

学べない人は、経験が汎用化されることなく、個別に存在しているため、新たな事象をすべて新たな事象として捉えなければならないということになります。その都度、新たな事象として対応をしなければならないため、労力がかかります。

 

一方、学べる人は、汎用化することによって、新たな事象に対しても、経験を活かして対応をすることができます。省エネで対応することができ、いわゆる「タイパ」がよくなります。

 

一度経験しているため、その精度も上げられる可能性もあります。また、学べることはひとつとは限りません。ひとつの経験から複数の学びを得ることができれば、対応できる範囲も広げられます。 つまり、学べる人は、労力をかけずに精度がよい考察を様々な事象に対して加えることができるのです

 

「勉強」が面白くなるとき

そうなると学ぶために重要となるのは、見聞きした事象をどう汎用化させられるかということになります。

 

汎用化させるためには、まず、見聞きした事象を解釈しなければなりません。ただ、何の予備情報もないとそもそもでどのように解釈すればよいかがわかりません。そこで基本となる「知識」が必要となるのです。今はSNSなどに情報は溢れています。それらの情報を解釈するための知識を持っていなければ、解釈を他人に委ねることになってしまいます。

 

解釈の次は、汎用化です。他の事象にも適応できるように汎用化するためには、個別事象の中から他でも通用する箇所を切り取る「スキル」、個別事象を抽象化して捉え直す「スキル」などが必要となります。

 

このように考えると勉強で習得することが求められていた「知識」や「スキル」は、実は学ぶための基礎となるものであったと考えることができます。

 

最初に「勉強」という言葉は、何につながるかその目的も今一つはっきりしない中で知識やスキルを覚えることと表現しましたが、図示すると以下のようなイメージになります。そこだけが切り出されても面白さはあまりありません。習得する知識・スキルは、「学び」のために必要なモノとなってはじめて習得する面白さが出てきます

 

見えない「つながり」が見えるように…‼

学びを汎用化することとして捉えた場合のメリットは、前述のように、省エネで対応ができ、かつ精度もあがる可能性が高まります。つまり、良いことがある訳です。また、汎用化するということは、抽象度をあげて捉えるということです。それは、一見、違って見える事象を同じ理屈で説明できるということを意味します。

 

つながりがないように見えたものが、実はつながっているかもと考えられることは純粋に驚きにつながります。太陽系の周りに惑星が回っている構造と原子核の周りに電子が回っているという構造、宇宙の大きな世界と原子のミクロの世界が実は同じように捉えることができるというのは驚きではないでしょうか。

 

部署と他部署、自社と他社、業種と異業種、若手とベテラン、一見、異なるように見えるモノも実は同じメカニズムが背後にあった、学ぶということはそんな発見にもつながっていきます。

 

学ぶことは、良いことがあるし、何より楽しいはず!汎用化することを意識し、そのために必要となる知識やスキルの習得のアップデートを心がけましょう。

 

(執筆:岡 重文)

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

グロービス経営大学院

日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。

ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。

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Photo by:Kelly Sikkema