SF小説家、アーサー・C・クラークの小説が好きで、よく読む。

 

とくに、

「幼年期の終り」

「2001年宇宙の旅」

「都市と星」

「宇宙のランデヴー」

 

などは、何度も読み返した。

個人的に、「幼年期の終り」は、安部公房の「第四間氷期」などと合わせて読むのがおすすめ。

 

 

それはそれとして。

つい先日、「SFずきの知人」とちょうど話題となった「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の話や、「火星の人」「三体」などの話になった。

流行り廃れはあるが、個人的には、SFは「ありそうな未来」がテーマになっていると面白い。

それらはある意味では、「今後の科学技術に対する考察」でもあり、理系を志す少年少女たちの燃料でもある。

 

そんな話をしていたときに、「クラークの3法則」の話が出た。

 

アーサー・C・クラークには、よく知られている主張が3つあり、そのなかでも、第三法則は最もよく知られている。

十分に高度な科学技術は、魔法と区別できない。

という主張だ。

 

我々は「科学技術」を扱うことで、魔法のような力を行使できる。

よく知られた事実だ。

 

遠隔地の人間と話をする。

未来を予想する。

容姿を変える。

数万度の火を起こし、稲妻を作り出す。

鉛の弾を超音速で飛ばす。

人間のように話ができるマシンを生み出す。

 

このような話をしていたときに、別の知人が、こんなことを言った。

そういえば「ハリー・ポッター」で描かれている「魔法」って、けっこう科学技術でできちゃうよね。

と。

 

そうなのかな?と思ったが、確かに魔法使いのできることは、「姿現し」などの空間転移以外は、科学技術で再現可能にも見える。

なるほど、たしかにわざわざ「魔法」である必要もないかもしれない。

 

また、彼によれば、ハリー・ポッターの世界における「魔法」の描かれ方は、科学技術にそっくりなのだという。

 

再現性と法則性がある。

体系的に教育される。

運用にはルールと罰則、限界がある

人を傷つける魔法は禁忌とされ、通常は使われない

 

従来の魔法使いは、「おとぎ話」や「TVゲーム」で描かれるように、杖を振れば何でもできたり、戦闘のために魔法を使うシーンがメインで描かれていた。

また、「魔法」とは、単に「個人的な能力」とみなされていた。

 

「魔法を礎にした社会はどのようなものなのか?」について、詳しく描かれることはなかった。

(ファンタジーの世界の住人は、「魔法」があるにもかかわらず、我々と同じような思考をする)

 

しかし、ハリー・ポッターの世界では、魔法はもう少し複雑な描かれ方をしている。

「社会における体系化された技術の一つ」

であり、数学や工学、化学のような扱いだ、というのだ。

 

ただ、そう考えていくと、実は我々の世界でも、学校で、科学の礎たるSTEM、つまり「数学」や「工学」をきちんと習得できないのは、問題なのではないかと思った。

何しろ、ハリー・ポッターの魔法使いの世界では、魔法が使えないのは人権にかかわるくらい、重大なことなのだ。

 

 

「STEM」という言葉がある。

科学、技術、工学、数学の頭文字を取ったもので、国力の根幹を支える、不可欠なものとして認識されている。

科学、技術、工学、数学(STEM)教育と研究は、国家の発展と生産性、経済競争力、そして社会の幸福にとって不可欠なものとして、世界的にますます認識されるようになっています。

世界各国の政府が、学校における理科と数学、そして高等教育におけるSTEM分野の教育と研究を統括するSTEM政策を策定しようとしていることからも明らかなように、STEMへの世界的な転換が見られます。(Research Gate

これらは、いわば現実世界における「魔法教育」のようなものかもしれない。

 

実際、世界における時価総額トップの企業群の創業者はほぼ「STEM」の学位取得者で占められている。

つまり、強大なパワーを操り、マシンをコントロールできる「魔法使い」たちが、大きな力を持っている。

 

一方で、魔法を習得するのは、簡単ではない。

実際、日本においては、「魔法」の習得者は、全体の2〜3割に過ぎない。

2〜3割の「魔法使い」が存在しており、残り7〜8割の「マグル」(ハリー・ポッターの世界では、魔法が使えない大半の人々は「マグル」と言われる)が、存在しているともいえる。

 

*

 

とはいえ、日本も含め、主要国の国家元首は中国を除き、STEM分野の出身者ではない。

政治家の多くは「マグル」であり、マグルの代表でもある。

 

しかし富は魔法使いに集中し、マグルはこれをコントロールできなくなってきている、と感じる人も多いのではないだろうか。

 

ハリー・ポッターシリーズの主人公、魔法使いであるハリーは、自分の養父母であるマグルのおじさんとおばさんに、半ば虐待のような生活を強要されている。

おじさんとおばさんは、大きな力を持つ魔法使いに対して、恐怖を抱いているからだ。

そしてそういう対象は、迫害しても構わない、と思っている。

 

テクノロジーへの不信、そして、科学者への敵視というのは、マグルが魔法使いを恐れるのと、何ら変わりはないのかもしれない。

自分たちのよく知らないパワーは、怖いものだ。

 

実際、ハリー・ポッターの世界では、魔法使いたちは、マグルたちの記憶を改ざんし、記憶に残らないように暮らしている。

マグルたちとの無用な争いを避けるためだ。

 

まあ、与太話としては面白かった。

忘れてほしい。

 

 

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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Photo:Shayna Douglas