少し前に、知人がこんな記事を紹介していた。
20代のころ、自分のずっと上の先輩たちが35歳過ぎくらいにパフォーマンスが落ちていったのを不思議に思っていた。
そして、30歳を超えたとき、いままで一緒に頑張ってきた先輩達が35歳を超えたあたりで突然やる気をなくしていった。
いったい何が起こっているんだ?
35歳にいったいなにがある?
謎は解けないまま、私も37歳になっていた。
すっかり気力が無い。まったく仕事のモチベーションが沸かない。
自分がなってみて謎が解けた。
でも答えは教えな~い。
若手の時は、やる気のないオジサンを見て、自分はああはなるまい、と思っていたが、いざ自分がその立場になると、同じ陥穽にハマってしまう。
そんな話を聞く。
20代のときは
「そんなことって本当にあるの?」
と、誰もが思う。
ある。
むしろ特に若い頃に頑張って働いた人ほど、ハマりやすいと言っても良い。
個人的にも、35歳あたりから、仕事が恐ろしく退屈になった記憶がある。
35歳といえばどんな年だろうか。
社会人になって十数年、仕事はそれなりにできる。頼りにしてくれる後輩や部下もいる。
給料もそれなりに貰っていて、信頼を積み上げているお陰で、社内で好きなこともある程度はできる。
にもかかわらず、私は毎日、仕事と会社が絶望的につまらなかった。
毎日、ドキドキしなくなったのである。
20代は、初めての仕事ばかりで、「いつ大失敗して、クビになるかもわからない」という緊張感があった。
先の見通しは立たず、1年後、2年後自分が何をしているのか、さっぱりわからなかった。
その時は「早く安定したい、将来の見通しを立てたい」と思っていたのだが、いざ安定してみると、そこには全く別の世界があった。
例えば、
うまくいくか、行かないか、その仕事の結果が、ある程度読めてしまう。
上司はいつも同じことを言う。
昔のような「能力の向上」の実感は殆ど無い。
すでに「目指すべき人」は社内にはいない。
そんな具合である。
私の世代であれば、ドラゴンクエストや、ファイナルファンタジーといったRPGに熱中した方も多いだろう。
だが、私は「最後までやりきったゲーム」が異常に少ない。
なぜなら、いつもラストダンジョンになると、やる気を失ってしまうからだ。
序盤はとても面白い。自分が強くなる実感が得られるし、新しい世界が次々に広がっていく。
ところが、中盤を経て、終盤になると、とたんにゲームはつまらなくなる。
作業的なレベル上げ。
探検しつくされた世界。
有り余るお金。
そうだ。
操作するキャラクターは強くなっているはずなのに、そこには「可能性」が無くなっているのである。
キャラクターが育ち、謎がとけ、世界の広がる可能性だ。
「可能性」が無いのに、頑張ってどうする。無駄である。やる気を無くす。
それが、「35歳で落ちるパフォーマンス」の正体だ。
ピーター・ドラッカーは、こんなことを述べている。
今日、中年の危機がよく話題になる。四五歳ともなれば、全盛期に達したことを知る。同じ種類のことを二〇年も続けていれば、仕事はお手のものである。学ぶべきことはさしてない。仕事に心躍ることはない。
私は37歳でこれに気づいたとき、「仕事の設計」を全く変えなければならない、と思った。
今はロールプレイングゲームの終盤である。もうこのゲームをやめたい。
違うゲームを始めなければならない。ゲームクリアに拘る理由なんて、なにもない。
思ったら、行動しなければならない。すぐに上司に「1年後、会社を辞めます」と告げた。
上司は「何故だ」と聞いた。
私は一番上司が引き止めにくいであろう回答をした。「起業します」と。
上司は笑わなかった。「そうか、頑張れ」とだけ言った。
だが、そのときは実は、起業するかどうか決めてはいなかった。1年間の猶予のなかで、新しいゲームを何にしようか、考えようと思っていたのだ。
だが、その後の変化は劇的だった。
「会社を辞める」という決断をし、新しいことをやらなければならない、という課題を与えられた瞬間、私のレベルはまた1に戻った。
新しいゲームが始まったのだ。
毎日が、とても有意義で、楽しいものに戻った。
その後、正式に「起業する」と決めたあと、事業の傍らでブログをやろうと思った。自分で商売をするならば、必ず集客の導線が必要だと思ったからだ。
ブログは初期投資も殆どゼロ、身一つで始めることができる。
お金も人脈もない私には、丁度良い。
「辞めます」と上司に告げてから3ヶ月後、正月に帰省していた妻の実家で、コタツに入りながら初めてのブログの記事を書いた。
それを見て、妻は呆れたように私にいった。
「それがアンタの仕事?」
「……。まあ、そうです。」
「ほんとうに会社辞めて大丈夫なの?」
妻を安心させてあげたかったが、余計なことを言ってもさらに不安にさせるだけだ。
とは言え、私も結果が出るかどうかなど、全くわからない。
それでも「終盤のロールプレイングゲーム」を延々と続けるよりはマシだった。
「不安の中にこそ、楽しさが存在する」と、私は確信していた。
仕事がつまらない、と感じている30代なかばから40代の方には「仕事の再設計」が必要である。
起業、複業、ボランティアへの参加……人生には様々なオプションが存在している。
特に今やっている仕事において「スキルが伸びやなんでいる」「出世の望みがない」「人間関係が固定されている」などの現象が起きている方は、絶対だ。
前述したドラッカーは、続けてこう述べている。
知識社会では、成功が当然のこととされる。だが、全員が成功することはありえない。失敗しないことがせいぜいである。
成功する人がいれば、失敗する人がいる。
そこで、一人ひとりの人間及びその家族にとっては、何かに貢献し、意味あることを行い、ひとかどになることが、決定的に重要な意味をもつ。
第二の人生、パラレル・キャリア、篤志家としての仕事をもつことは、社会においてリーダー的な役割を果たし、敬意を払われ、成功の機会をもつということである。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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日時:
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(Photo:Vinu Thomas)