ある会社で副業についての話が盛り上がっている。
「最近、社員から「副業を認めて下さい」という話がたくさん上がってくるんですよ。」とその経営者はいう。
それを聞いた一人の役員が、
「認めるんですか?」と聞くと
「認めたくないね。なんとかならないかね」と経営者が言う。
役員は「なぜ副業を認めないのですか?」と尋ねた。
「んー、やっぱり本業に影響が出るとイヤというのはあるかな。」
「影響というと?」
「秘密が漏れたり、あとは本業に集中してくれなくなったり、と色いろあるんじゃないか。」
「秘密って、どんなのですか?」
「顧客リストとか、そう言った話だよ。」
「それは、副業を認めるかどうかとはあまり関係なくないですか?名簿を横流しするのは、別に副業に関係なくやる人はやると思いますが……。」
「ま、そりゃそうだが……。キミは一体どっちの味方なんだね。」
「私は客観的に見ているだけです。あと社長、本業に集中、というのは?」
「わかるでしょう。商売が気になって、うちの仕事が疎かになる。」
「だったら、株の取引やFXも禁止しなきゃですね。」
「ああ、あれは気になるな。仕事が手につかなくなる。」
「副業よりも、そっちを禁止したほうがいいんじゃないですか。」
「いや、そりゃマズいだろう。法律的にも」
「何いってんですか社長、副業も法的には禁止できないですよ。」
「あ、そうなの?」
「そうですよ。本業に差し支えないかぎり、あるいはウチの会社に不利益がない限り制限しちゃダメです。」
「……。いや、やっぱりダメだ。社員がなにか問題を起こしたら、ウチの会社のブランドが毀損する」
「じゃあ、飲酒も規制しますか?こないだウチの社員が酔って大声出して、「うるさい」と苦情が入りましたよ。」
「……。」
「っていうか社長、キレイ事ばかり言ってないで、そろそろ腹を割って話しましょうよ。なんで副業がイヤなんですか?」
「いや、絶対禁止って言うわけじゃないが。副業に割く時間があったら、ウチの仕事を頑張って欲しいと思わないのかね。」
「そりゃ私だってそうです。」
「じゃあ、副業はやっぱり……」
「社長、そうするんだったら、給料上げなきゃダメですよ。副業の分。」
「おまえ、一体どっちの味方だ。」
「社長、私は客観的に見ているだけと申し上げました。社員が副業に手を出すのは、給料が安いからです。そうじゃなきゃ、だれが好き好んで、副業なんて面倒なことやるんですか。」
「……。そうかもしれんね。」
「給与に関係なく副業やる社員は、そっちが儲かればすぐ辞めますよ。それは会社で囲えない人材です。諦めて下さい。副業を禁止なんてしたら、ますます反発するだけです。」
「……いや、それは本意ではない。」
「月5万円、全員の給与をあげてやれば、副業なんて、皆考えなくなりますよ。大体、副業で稼げる金額なんて、こんなものです。」
「ううむ…。それでウチの会社にコミットしてくれるなら、安いものか。」
「人件費が年間◯◯くらいあがりますけど。」
「◯◯か……。ぬうう。」
「副業、認めちゃいます?」
「おまえ、本当にどっちの味方だ。」
「だから、(以下同文)」
「それにしても、副業ごときでなんでこんなムカムカしなきゃならんのだ。」
「社長、わたし、さっきから副業に賛成という雰囲気の発言をしていますが、社長の気持ちもわかりますよ。」
「ああ?」
「こんなに社員のためを考えているのに、こんなに社員に尽くしているのに、振り向いてくれない、つれない部下たち。」
「そ、そんなことはないぞ。」
「ウチの会社を好きになってほしいのに、なんで他の仕事なんかに……。悔しいですよね。」
「う、ううう。」
「社長、女の子にモテなかったでしょう。わかりますよ。尽くせば尽くすほど、引かれてしまうあの悔しさ」
「だ、黙れ黙れ!わたしはそんな……。」
「社長、毅然として下さい。堂々とした人物に、皆惹かれるんです。副業禁止なんて、ケツの穴が小さいですよ。本業を面白くして、見返してやりましょう。副業の事なんか、忘れさせてやりましょう。」
「うむむむm。」
「なあ、ウチの仕事はそんなに給料が安くてつまらないかね。」
「そんなことはないと思いますが」と役員は答える。「しかし、もう社員を小さい世界に閉じ込めておくのは限界かと。ウチもそこまで高い給料を払えない、というのもあります。」
「……。」
「大手企業では、副業可に切り替えている会社もかなり出てきています。禁止するよりも、この際、一定のルールを決めてしまうのも手かと。例えば「ウチの競合になるようなビジネスはしない」とか、「ウチの顧客に対する商売はナシ」とか。」
「そうだな。そのへんは守ってもらわんと。」
「そうすれば、むしろ社員から「新しい人脈」や「新規事業のアイデア」が得られるかもしれません。それはそれでアリです。」
「なるほど。」
「では……。副業を可ということにしますか?」
「わかった、ルール作りを進めてくれ。」
「わかりました。」
「……。ところでおまえ、やたらと副業に詳しいな。」
「そ、そうでしょうか?」
「なーにが「客観的」だ。事前調査もバッチリじゃないか。法律まで調べたのか。」
「え、え」
「さてはお前……。やってるな。」
「ま、ま、社長。」
「まったくお前というやつは……。ところでどれくらいやってるんだ。」
「へへへ…。社長、1つご相談なんですが、私のやっている事業に出資しませんかね。」
※この話は、実話を元に若干の脚色しています。
(2025/6/16更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第4回テーマ 地方創生×教育
2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。
地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))
・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps (フェイスブックではシェアしない記事も扱います)
・ブログが本になりました。
(Paul N)