割と最近になって認識したことなんですが、「子どもに対してお金の話を隠蔽したがる大人」というのは、どうもかなりの数いるような気がしています。

 

例えば、知り合いの親御さんとお話していたりとか。

例えば、少し高齢の小学校の先生とお話している時とか。

「お金はどう動くのか」とか、「日常生活を送る時に必要なお金の多寡」とか、その程度の話であっても、「いやー子どもにあんまりお金の生臭い話は…」みたいな感じで、話に出すのを嫌がる方が、少なくとも私の観測範囲だとそこそこの数いらっしゃるんですね。

 

人によっては、「子どもの前でお金の話は絶対しない」なんて人もいます。

なんというか、性の話と同じように、お金の話を軽いタブーのように扱っている親御さん、ちょくちょく見受けられるんです。あまり触れてはいけない話題、触れることが道徳的に忌避される話題。

 

勿論、家庭の方針は家庭それぞれ、子どものありようは子どもそれぞれなので、一般論に落とす気はないんですが。ただ、少なくともしんざきが感じる限りでは、それ、ちょっと違うんじゃないかなあ、と。

お金なしで生きることなんて出来ないのに、子どもの頃にお金のこと教えないでどうするのかな、と。

 

もしかすると、「お金の話」を子どもから隠蔽することによって、色々と良くない影響が出てしまっている部分なんかもあるんじゃないか、という疑念を、しんざきは少し前から持っているのです。

 

例えば、正当な報酬を得ることができず、いわゆる「やり甲斐搾取」で疲弊してしまっている若者、であるとか。

演奏家や絵師など、一見コストが分かりにくい活動をしている人に「無償の活動」を要求してしまう人、であるとか。

漫画制作にどんなコストがかかっているかを想像せずに、海賊版サイトを罪悪感なく利用してしまう層、であるとか。

明らかにリスクとリターンが見合っていない投資に手を出して大損してしまう人、であるとか。

 

いや勿論、それぞれの問題にはそれぞれの原因があるでしょうし、問題を構成している人たちもそれぞれでしょう。お金についての教育がそれら全ての問題を解決する、なんていう気は毛頭ありません。

ただ、それでも、そういった問題の何%かは、「子どもの頃から、お金についてきちんと教える」ことで改善する部分もあるんじゃないかなあ、と、私はそんな風に思っているんです。「いつ頃教えるか」という問題は勿論あるんですけどね。

 

この記事では、具体的にしんざきが子どもに教えたいと思っているお金の話、成長するにしたがって段々伝えたいと思っている内容の中でも、主要なものを書いていってみようと思います。よろしくお願いします。

 

「お金なしでちゃんと継続出来る活動はない」ということ

多分、全ての根っこになるのはこれなんじゃないかなーと思うんです。これをちゃんと認識しているかどうかって、多分全然違ってくるんじゃないかと。お金ってなんで必要なの?ということの根本です。

 

当たり前のことなんですが、現代社会においては、別に商業活動に限らず、人間のやるあらゆる活動に何かしらの形でお金がかかります。

設備費、人件費、食費、交通費、住居費、衣服費、医療費、交際費。世の中には、ありとあらゆる「費」があります。

商業活動は勿論、ただ生活しているだけでも。

 

たとえ一見お金をかけずに生活したり活動したりしているように見える人であっても、その人達は何かしらのインフラに寄って生活しているものですし、つまり誰かが何らかの形でお金を出しているものです。

また、例えば絵を描いたり、音楽を作ったり、プログラムを作ったり、そういった一件「費用」というものが見えにくい活動であっても、何らかの形で必ずお金はかかっているし、お金が必要となるんだ、ということでもあるわけです。

 

これは、「コスト」という考え方の基盤の一つにもなります。勿論、コストというのはお金だけで括れる話でもないんですけどね。

だから、それがどんな活動であろうと、裏にはお金の流れというものがついて回るし、無料で継続出来る活動というものはないんだ、と。

一見「無料」とうたっているものであっても、それはどこかで誰かが費用をもっているんだよ、というのは、ちゃんと認識しておいた方がいいことだと思うんです。

 

これは、例えば本屋の前で、「あの「無料で〇〇が当たる!!」とお客さんを呼び込んでいる人たちは何の為にあんなことをやっているんだろう?」という疑問につながると思いますし、なんなら「ギャンブルを運営している人たちはどうやって儲けているんだろう?」「お金を貸している人はどうやって利益をあげているんだろう?」という疑問にもつながると思います。

大事なのは、疑問を持つことが出来る素養を作ること。そう考えています。

 

また、私は自分の子どもに「webに置いてあるってことは無料なんでしょ?」とか言いつつ違法ダウンロードをするような人になって欲しくないので、そういう行為に対して何らかの疑問を持つことにもつながるんじゃないかなあと。

 

正当な価値に対して適切な報酬を受け取るのは当然のことであること

これも結構大事な話です。

日本は何故か、「サービス」という言葉が「無料」の意味で定着してしまう程に、「きちんとした仕事、きちんとした価値に対してきちんとした対価を払う」という意識が薄い文化圏なので、「価値ある仕事は適切な対価を受けるべきだし、対価を要求することは悪いことでもなんでもない」という意識づけも重要だと思うんですよ。

 

この意識があれば、例えば「このサービスには、どの程度の対価が妥当なんだろう?」ということも、恐らく考えることが出来る。

私は自分の子どもに、コンビニのアルバイト店員に対して無制限のサービスを要求するような人になって欲しくないので、そういった基盤としての意識も伝えていきたいなーと考えるわけです。

 

また、仮にあまりよろしくない会社や使用者の元で働くことになってしまったとしても、「労働の対価はやり甲斐」だなんて言説に、「ん、おかしいぞ」と感じることも出来ると思うんです。

漫画とか音楽とかゲームとか、もしかすると一件お金との関係が分かりにくいものであっても、そこに価値があるのならちゃんと対価を払うべきだ、という考え方も出来る。

 

勿論これ、難しい問題もあって。例えば、以前知人とこの問題について話した時は、「何をやるにもお小遣いを要求するような子になっちゃったりしない?」というような問題提起をされて、議論になったことがありました。

つまり、「お金に意地汚い」という属性に対する恐怖感、みたいなものが、どこかにあるような気はします。これはもしかすると、冒頭で書いた、「お金の話を軽いタブーとして扱う」一つの要因でもあるのかも知れません。

 

ただ、これについては「価値に対する適切な報酬」というのとはまた別の話であって。「なんでもかんでもお金がついて回るわけじゃない」ということと、「正当な価値には適切な報酬」というのは多分矛盾しないと思うんですね。

 

例えばしんざき家では、今「お手伝いお小遣い制」というものを導入していまして、まあ小額ではありますが、例えばゴミ捨てとか、布団の片づけとか、お手伝いをしてくれた時にはお小遣いを出しています。

これは実際、朝忙しい時には結構助かったりしているので、助かる側として当然のことだと思います。

 

一方で、例えば「寝る前にお風呂に入ってちゃんとした時間に寝る」とか「散らかしたおもちゃを片づける」というのは、自分自身の日常生活を維持する上で当然必要なことであって、それでお小遣いをもらえたりはしません。

 

こういうのは細かい話ですが、「お金に意地汚くなるかどうか」というのはそれこそ躾の話であって、お金の話を隠蔽したら解決出来るようなことでもないと思うんです。

なんにせよ、「価値」と「その対価」という概念自体は、恐らく必ず必要なものであって、そこをきちんと把握しているに越したことはない。

現時点では、しんざきはそう考えています。

 

 

上記以外にも、例えば

「大人が一人で日常生活を送る場合、大体いくらくらいのお金が必要になるか」

であるとか、

「会社はどうやって利益をあげているのか」

であるとか、

「金利とは何で、お金を貸す、借りるというのはどういう活動なのか」

みたいなこともいずれは教えてあげたいと思ってはいるんですが。まあ、それはもう暫く先のことかなあと考えています。

 

長々書いて参りました。

いつも書いていることなんですが、子育てに正解ってないと思うんですよ。家庭それぞれ、子どもそれぞれで適したやり方っていうのは多分変わるし、どんな時期、どんな環境でどんなことを伝えればいいのか、ってことも子どもそれぞれです。

 

大事なのは、「何を伝えるのか」を考え続けること、だと思います。思考停止することなく、常に伝えることを考え、取捨選択し続けていれば、多分大事なことは子どものどこかに残るんじゃないかなあ、と。

 

だから私は、子どもに伝えたいことの一環として、「お金の話」について考え、その考えについて書きました。別に一般化する気はさらさらないのですが、当面、少なくともしんざき家ではそういう方針でやっていってみようかなーと。

そんな風に考えている次第です。
今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:Eric Verhaeghe