佐藤優さんと片山社秀さんが「平成」30年間の出来事を対談形式で語っていく『平成史』という本を読みました。
平成史
- 佐藤 優,片山 杜秀
- 小学館
- 価格¥1,423(2025/05/12 17:15時点)
- 発売日2018/04/25
- 商品ランキング843,104位
元号が変わったのは、まだ僕が10代後半の頃で、昭和天皇崩御のニュースを聞いた同級生が、寮の廊下で、「天皇が死んだ!」と大声をあげたのをよく覚えています。
僕は昭和の人間のつもりだったけれど、「平成」の時代を昭和よりもずっと長く生きてきたのですね。
平成元年(1998)に、消費税が3%ではじまり、ベルリンの壁が崩壊しました。
阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件が発生したのが平成7年(1995)。
日韓ワールドカップが開催されたのは平成14年(2002)。
東日本大震災が平成23年(2011)。
30年間もあれば、本当に、いろんなことがありますよね。
この本のなかで、佐藤優さんが「平成になってからの社会の変化」について、こんな話をされているのです。
佐藤優:すでに現在はコンビニ型管理社会になっているといえるかもしれません。
その話で重なってくるのは2016年に社会問題になった電通の女性社員が過労死した事件です。この事件を受けて各社がマニュアルに沿って過労死を防ぐ働き方を定めた。
でも、現実的には電通でも中央官庁でも総合職の新人を9時〜5時で教育できるのかという問題が残されています。もちろん過労死させるまで働かせるなんてありえませんが、平成が終わればまた新たな働き方が摸索されるようになるでしょうね。
私は、新しい働き方も、2016年に世間を騒がせたベッキーのゲス不倫も、良翌2017年に起きたハリウッドのセクハラスキャンダルも日馬富士暴行事件も根っこの部分でつながっていると感じているんです。
たとえば、角界には独自の掟があるでしょう。ハリウッドや芸能界や電通にもローカルルールがあった。ところが平成に入り、掟やローカルルールが許されない社会になってしまった。すべての業界が平準化されてしまった。
僕も過労死するような労働環境はあってはならないと思っています。
しかしながら、その一方で、新人研修医は17時になったらかならず家に帰すように、という通達をみて、「自分たちの頃とは世の中変わったなあ」とも思うのです。
もちろん、全体としては、悪い方向に行っているわけではないでしょう。
一昔前は、「鍛える」という名目で、パワハラまがいのことが行われている事例がたくさんありましたし。
こういう「ローカルルール」が失われた理由のなかで、もっとも大きなものは、インターネットの普及だと思います。
これまでは、みんな、自分の学校、自分の会社、自分の家庭のこと以外のローカルルールの情報は、知り合いと話すことや雑誌などの告発でしか知ることができなかったけれど、ネットは、それを一気に可視化し、大勢の人が共有できるようにしたのです。
閉鎖的な世界での「暗黙の諒解」みたいなものは、ネットによって、それは一般的には「非常識」だと断罪されるようになりました。
それがうちの会社のやり方だから、というのは、通用しなくなったのです。
公共の場でおかしなことをしたら、FacebookやTwitterで見ず知らずの人の手によってみんなに広まってしまうかもしれない。それを「相互監視社会」と呼ぶ人もいれば、「評価経済」と言う人もいます。
あらためて思うのは、現代は「オフレコ」がなくなってしまった、ということなんですよ。
僕が若い頃のラジオの深夜放送って、パーソナリティがけっこう過激な話(社会のことや下ネタなど)をしていても、大人たちはそれを聞いていないか、「まあ、若者向けのラジオだからね」と聞き流していたような気がします。
それが、いまや「あの人がこんな不適切な発言をしていた」とネットでニュースになり、リスナーとして想定していなかった人から叩かれてしまう。
芸能人の不倫にしても、「芸能界というのは、そういう派手な人間関係のショーケースみたいなもの」という意識でみていた人が多かったはずです。
そういう「常識から外れる存在」が、地に足のついた世界に生きている人たちにとって、「ガス抜き」として機能していたところもあったんですよ、たぶん。
また、官僚や商社、医療関係などでは、「そういう仕事を選んだ人間としての責任」として、一生懸命勉強することや社会に奉仕することを求められていたのです。
それが「間違ったエリート意識」を生み出してしまった一方で、勉強する動機にもなっていました。
角界の八百長事件には僕もがっかりしましたが、あらためて考えてみると、あの巨体の力士たちが、毎年15日間×6場所、本当に全力でぶつかっていたら、身がもたないからこそ、ああいう「八百長」が蔓延していったのかもしれません。
実際、八百長問題が発覚してから、怪我で長期休養したり、復帰できずに引退していく力士が増えたような気がします。
「成績が残せなくなったら、潔く引退する」よりも、不振でもなるべく現役を長く続けるほうを選ぶ人が多くなったようにもみえます。
そういうのもまた、「働きかたに対する意識の変化」ではあるのでしょう。
ネットに書き込みをすれば、それが世界中に拡散される可能性があって、一度言葉にしてしまえば、もう「なかったこと」にはできない。
世の中にはさまざまな価値観を持っている人がいて、自分のなかでは「当たり前のこと」でも、「それはおかしい」と感じる人はいるのです。
「まあ、お互いに事情や背景があることだから」と相互理解に繋がれば良いのだけれど、実際は、「それはあなたや、あなたが属する組織のルールであって、社会一般のルールではない」と批判されがちです。
そうなると、「ローカルルールは外部には教えない」というルールが組織に生まれて、また隠蔽体質が強化される、というケースもあります。
トランプ政権とかイギリスのEU離脱のような世界の動きが「グローバル化に対する反動」であるとすれば、日本の社会でも、「ローカルルールがすべて失われてしまうこと」への反発が大きくなってきているように感じるのです。
「ローカルルール」を嫌う人は多いけれど、身内の心臓が止まりそうなときに、担当医が「17時ですから帰ります。あとは当直医の仕事ですので」と告げても何も感じない、という人は、まだ少数派のはず(アメリカではそれが当たり前みたいなのですが)。
「正しくても、自分にとって都合が悪いこと」を受け入れられる人は、本当に少ない。
芸能人の不倫はバッシングされることが多いのですが、人によってそのバッシングの強さは異なるようにみえますし、「そうやってバッシングされるのも芸能人の役割」みたいになってきてもいるのです。
「炎上ブロガー」なんて、ある意味「極論を吐いて叩かれることによって注目を集めるのが仕事」になっています。
次の元号の時代は、おそらく、今よりもさらに「ローカルルール」が存在しにくい世の中になっていくはずです。
それは、はたして、幸せなことなのだろうか?
幸せであろうがなかろうが、その方向に向っていくことに変わりはないのでしょうけど。
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(2025/5/12更新)
【著者プロフィール】
著者:fujipon
読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。
ブログ:琥珀色の戯言 / いつか電池がきれるまで
Twitter:@fujipon2
(Photo:cotaro70s)