どうもしんざきです。最近は、モニターの前で髪の毛をがしがししながらDBクエリをチューニングする仕事で専ら生計を立てています。
モニターを威嚇していると人が近寄ってこなくなるのが最近の悩みです。
四月から新社会人になる皆様、調子はいかがですか?
働く直前ってことで無理して遊んで派手に体調崩したり、学生最後と思って酒飲みまくって急性アルコール中毒になって救急車呼ばれたりといった事態にはくれぐれもお気をつけ頂ければと思います。経験談に基づく老婆心からご忠告申し上げます。
しんざきが、毎年新入社員の方に、まず口をすっぱくしてお願いしていることについて書こうと思います。
会社という組織で仕事をするにあたって、何が重要になるかってそれは圧倒的に「言語化」と「共有」です。間違いありません。
つまり、自分のしていること、自分が抱えている課題、問題、進捗の不調やら何やらを、ある程度整理して「伝えられる内容」に整形すること。
これを言語化と呼びます。
次に、それを適切な立ち位置、適切な能力を持った人に伝えて理解してもらうこと。
これを共有と呼びます。
言葉にしてしまうと、なんか当たり前の話みたいじゃないですか?
出来て当然、みたいに思いませんか?
いや、これが、実はぜーーんぜん当たり前じゃないんですよ。かなり長いこと会社組織で働いていても、この二つがてんで苦手という人は全く珍しくありません。
困った状況を言語化も共有も出来ずに一人で丸抱えしてしまう人、びっくりする程たくさんいます。
むしろ、この二つがきちんと出来るというただそれだけで、その人はある程度以上の信頼感を勝ち取れる、と言ってもいいくらいです。
ちょっと、「言語化」と「共有」について、もうちょっと細かく話してみましょう。
まず一つ目は、「言語化」についての話です。
何かしらのプロジェクトに配属されて、何かしらの仕事を任されていると、その仕事についての状況、進捗具合、課題というものは当然刻一刻と変わっていきます。
やっている内に色んな問題が出てきますし、その問題は自分で片付けられることも、人に頼らないと片付けられないこともあります。
大抵後者の方が多いです。
例えば、技術上どうしても理解出来ない問題が出てきて、何か作ろうにもそこをどうすりゃいいかよく分からん、とか。
資料を読み込んで別の資料を作らないといけないけれど、資料に書いてある内容がさっぱり分からん、とか。
いやまあ上記は分かりやすい例ではあるんですが、まあ仕事やってると、
「なんかうまく出来ない」
「なんかうまくいかない」
なんてことは山ほど出てくるんですよ。
どんなベテランでもそうなんですから、社会に出たばかりのルーキーの方であれば言うに及ばずです。
最初からすらすら仕事が出来る人は、存在しないとまでは言いませんが、まあナルガクルガ希少種くらいの希少中の希少生物でしょう。
そんな時は当然「他の誰か」の手を借りないといけないんですが、これも当たり前のこととして、誰かの手を借りるには「今の自分の状況」を言葉にして伝えないといけません。
助ける側もエスパーではないので、言葉にしてもらわないと何に困っているのかが分かりませんし、ヘルプのしようがありません。
「自分が何をしようとして、何に困っているのか」
「自分の状況にはどんな課題があって、どんな問題が起きているのか」ということを言葉に直すのって、実は想像以上に難しいんですよ。
これ、慣れも必要ですし、ある程度の経験値も必要です。
特にシステム系の仕事にはよくある話なんですが、何かが分からなくて困っている時って、まず「何が分からないのかが分からない」という状況になりがちなんですね。
同様、「何か上手くいっていない」時に、「どこがどう上手くいっていないのか」ということを明確に捉えることは割と難易度高いです。
分からない時、上手くいってない時って精神的に一杯一杯になってしまっていることも多いので、より一層言語化が難しくなるんですね。
一つのコツとしては、自分の状況に対して幾つかの質問を投げて、それに対して一つ一つ回答する形で整理すると、比較的言語化がしやすい傾向があります。
・今している作業、今している仕事の目的は何か?何を達成しないといけないか?
・今の作業の目標達成時期は?それに対して、進捗は遅れているか、進んでいるか?
・現在、どの部分でどうつまづいているか?何をしようとした時に課題にぶつかったか?
・その課題の原因は何だと考えられるか?知識量不足か?単純に作業量が予想より大きくて時間がかかっているのか?環境の問題か?
上の設問は一つの例なんですが、割と応用が利く内容になってはいると思います。
この内の幾つかでも明確にしてもらえれば、手を貸す側はぐぐっと楽になります。
状況把握は問題解決の最初の一歩、しかも絶対に飛ばせない一歩なので、まず第一に「自分が困った状況」について適切に言葉にすること、これが滅茶苦茶重要ってわけなんです。
二つ目は、「共有」の話です。
報連相報連相ってよくいいますけど、組織のキモは「数のパワーが使えること」です。
一人で出来ないことを皆で片付けられるからこそ、組織で仕事をすることに優位性があるわけです。
で、当たり前のこととして、「皆で課題に立ち向かう」為には、課題の内容を知らせないといけません。
上の「言語化」でなんとか言葉には出来たとして、それを適切な人に、必要なタイミングで投げられるでしょうか?
実をいうとこれがまた、なかなか簡単なことじゃないんですよ。
大きな問題として、何よりも「上手く進んでいない、ということは人に言いにくい」というものが挙げられます。
進捗が遅れています。ここが分かりません。ここが出来ません。そういうことって、大筋どんな話でも「言いにくい」んですね。
怒られるんじゃないかとか、能力不足と思われるんじゃないかとか、評価下げられるんじゃないかとか。
その恐怖感はよくわかります。
勿論、「上手くいっていない」という情報にどう接するか、というのは上司の器量の一つでして、中にはあまりいい気持ちで受け取ってくれない人もいることは事実です。
ただ、これについては「マネジメントの責任」というものがありまして、管理職の仕事って半分は「上手くいっていないという情報をキャッチして、それに対して適切に対処すること」なんで、「上手くいっていません」という情報は最も重要なインプットになるんですよ。
プロジェクトをやっていると、「進捗が上手くいかない」「仕事が遅れる」なんてことはぜんっっっぜん普通に起こりえることでして、むしろ全てが順調にいくプロジェクトなんてものは千に一つとかそれくらいの確率でしか発生しません。上手くいく方が珍しいんです。
だから、ある程度ちゃんとしたマネージャーは、「上手くいかない」という状況に対して色んなオプションを用意しています。ただ、それは、勿論「上手くいっていない状況」を適切に把握しないと選択することが出来ません。
状況対処には速さが必要でして、大抵の場合、進捗の不調は対処が遅れれば遅れる程ダメージがでかくなっていきます。
誰かが「仕事が進まない」ということを誰にも相談せずに一人で抱えていればいる程、どんどんリカバリは大変になっていくわけなんです。
つまり、「あなたの上司は、あなたが一番言いにくい情報を、一番に知らないといけない」のです。これは間違いありません。
幸いといいますか、新入社員の間なんてのは一種の無敵モードのようなものでして、皆が「失敗してなんぼ」「上手くいかなくてなんぼ」ということを認識している時期です。
この時期に「遅らせられない仕事」を新入社員に振る上司なんてのはマネージャーとしてちょっと頭おかしいのであって、そこでなんか上手くいかないことがあってもあなたの責任ではありません。
基本、あなたが仕事を遅らせることは皆織り込み済な訳です。「上手くいかなくて当然」なんです。
なので、「勇気をもって、自分の仕事が上手くいっていないことを上司や周囲に共有してください」。
これ、「状況共有の練習」として、これから何年、何十年と重要になることです。だからこそ、今、仕事を始めたての時期に目いっぱい練習しておくべきことなんです。
一つ重要なテクニックとして、「相談しやすい人、相談しやすいタイミングを見つける」ということも早い内に練習しておいた方がいいかと思います。
上司にも話しかけやすい人話しかけにくい人色々いるもんですが、別に上司に限らず、「ちゃんと相談に乗ってくれる人」「状況共有を受け取ってくれる人」というのは大抵職場に複数存在します。
誰に話しかければ状況が改善するのか?誰が適切にアンテナを立ててくれているのか?
そういうことを考えながら職場の人を見渡す経験も、早い内にしておくに越したことはないと思います。
ここまでの話をまとめると、新入社員の方に最初に身に着けて欲しいこと、練習しておいて欲しいことは、
・自分の困った状況を整理して言語化すること
・言語化した内容を、勇気をもって周囲や上司に共有すること
この二点だ、という話になるわけなんです。
昨年も、私自身新入社員の人に接しまして、この二点については本当に何度も何度もお願いしてきました。
その甲斐もあってか、今ではどしどし進捗の遅れを上に共有してくれるようになりまして、私はその対処で順調に死にそうなわけですが、これは組織が上手く回っている証としてとても健全なことです。
ただ「困った問題を自分だけで抱えない」ということが出来る、それだけで、その人は十分、組織人としてやっていけると言ってもいいくらいだと思います。
あなたも是非、「抱えない人」を目指してみてください。
4月からの新社会人の皆様、色々大変なこともあるかと思いますが、皆さんがいくつもの仕事の面白さを見つけ出して、順調な社会人生活を送られることを願って止みません。
お互い無理せず頑張りましょう。
今日書きたいことはそれくらいです。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Always Shooting)