先週の話なんですが、ドワンゴさんに絡んで、三つ程記事を拝読しました。
2019/10/31 を持って8年間勤めてきたドワンゴを退職しました。
ドワンゴ退職エントリの旬は過ぎているよう気もしますし、こんな何年も放置していたブログで今更何をと思わなくもないですが、なんとなく自分の気持ちの整理もかねて適当に綴ってみようと思います。
自分の仕事やチームが好きなので、私は楽しく働いてるよーって伝えたくて書いてみます。
退職エントリを書くのは自由なのかも知れないし、書いた人の率直な気持ちだから全くもちろん良いわけなのですが、私みたいに心の弱いヤツは読んだらめちゃくちゃズーン😢てなっちゃうので。
昨日からのドワンゴ退職エントリからの現職エントリの流れに思うところがあり書かせてきただく。
はじめに断っておくが、私は件の現職エントリで言う所の「営業」(非エンジニアの企画職)にあたる職種である。
その視点からのエントリであり、エンジニアの視点ではないことをまずご了承いただきたい。
ドワンゴを退職した人の退職報告記事と、それに反応して書かれたと思しきカウンター記事ですね。
はてな界隈で話題になっていたので、ご覧になっていた方も多いのではないかと思います。
前者は最終エントリから7年半くらい放置されていたブログなのですが、後者二つは記事が当該記事1つずつのみで、その後も追加の記事が投稿される気配はありません(11/4現在の話)。
わざわざカウンター記事を投稿する為だけに開設されたブログであることが伺えます。凄い愛社精神ですよね。
この記事、退職した人がエンジニアで、それに対するカウンター記事がいずれも非エンジニアの方の記事ということで、ちょっと個人的に興味深い論調が見られたので触れてみたくなりました。まずそれぞれの記事の内容を概観してみます。
***
一つ目の記事は、ドワンゴに8年勤めていたという方の退職報告記事で、結構強い論調で「ニコニコがもうダメ」など、ドワンゴの批判をされています。
印象的な部分を引用してみますと、
業績が上がっていないからコスト削減をしなければならない。だから直接お金を稼ぐことができていないゲームデバイス開発を縮小する。それはわかります。
ですが、手元でできる何を提案してもそれを却下し、何もするなという指示をしておいて、なんの業績も上げていないという評価を下して辞めるのを待つというやり方は果たしてコスト削減なのか。
細かい問題はいくらでもありますが、一つにまとめてしまうと、
専門知識を持っていない中途半端に偉い人が自分に口出しできる部分に口出しをすることで仕事をした気になって本来するべき意思決定をどこまでも先送りする。
部下はそれに振り回され、そういう状態に対抗する手段が存在しない。
そういう組織になってしまったことが問題なんじゃないかと思います。
なるほど。
ここからは、自部門における
「評価プロセスに対する深刻な不信感」
「意思決定プロセスに対する強烈な反感」を読み取ることが出来ます。
まあ、この二つがそろっていれば、それはその組織で働きたくなくなることもむべなるかなとは思えます。
「専門知識を持っていない中途半端に偉い人が自分に口出しできる部分に口出しをすることで仕事をした気になって」辺りは正直身につまされる方も多いだろうなあと思いました。
割と良く見る例であるような気がします。胃が痛い。
続いて、二つ目の記事についてです。
少なくとも私の部署や周りの同僚は、会社がより黒字化して、結果として良いサービスになるようにに仕事に取り組み、売上を立てています。
勿論もっともっとがんばりますが・・・。楽しい環境に甘んじて脳死してるわけじゃないんです、主張のパートです。
正直、エンジニアさん達との交流ほぼ無いのでソチラの事はわからないのですが、私はこんな感じです!
正直昼間からSLACKで雑談ばかりしてる人たちは、何してんだろ…?仕事してるのかな…?と思っちゃうところもあります。SLACKはまだ難しいです;;
正直なところ、この方が書いている内容は特段一つ目の記事に対するカウンターとして動作してはいないというか、全然別の話を個別にしているだけのように見えもするのですが
「非エンジニアの方が、エンジニアの仕事に対してあまり理解をもっていないのだな」
「状況によっては「仕事してんのか」といった印象を持ちがちなんだな」
ということは伺えます。
ここに見られるのは、「エンジニアと非エンジニアの意識の断絶」です。
違う言い方をすると、一つ目の記事との関係性において、それくらいしか読み取れるものがありません。
最後に三つ目の記事ですが、これについてはもうちょっと典型的な部分があるなーと個人的に思いました。
職種が違い、エンジニアには専門技術もあり、業務内容が全く違うので当然である。自分はアプリ開発者志望であったこともありそのあたりには理解があると思っている。
他の退職エントリで皆様がご存知の通り、彼らは彼らで悩み、あがき、ニコニコをよくしようとしていたことは存じている。
だが、身を粉にして自分たち、「営業」がお金を稼ぎ、コンテンツを排出して支える中、ニコニコ本体は改善が行われず、状況は徐々に悪くなっていき鬱屈した感情をどんどん抱えて行くことになった。
ドワンゴのエンジニア諸氏は存じ上げないかもしれないが、実は我々「営業」職も定期的にアプリやシステムの企画を出し、前社長や旧エンジニア上位層に企画提案をしていた。
なお、当時の返答はまとめると概ね以下の通りである。
「我々には余力がなくそのようなことをしている暇はない。」
「企画は前会長氏の考えるものであり我々や諸君らが考えるものではない。」
なるほどなあ。
「身を粉にして自分たち、「営業」がお金を稼ぎ、コンテンツを排出して支える中、ニコニコ本体は改善が行われず」というあたりからは、割と営業さんとしての典型的な意識が見てとれます。
飽くまでお金を稼いでいるのは自分たちである、という意識は営業さんとしての当然のプライドでもあるのでしょう。
一方、ニコニコの改善が行われないことへの言及やら、「エンジニア諸氏は存じ上げないかもしれないが」といった表現からは、自分たちが会社を支えていることに比してのエンジニア部門に対するいら立ちが読みとれます。
つまり、「自分たちはちゃんと仕事してるのにエンジニア部門がちゃんと仕事してない」という含意を読み取れるように思うんですね。
この後者二つの記事について、一つ明確に言えることは
「カウンター記事の体裁をとってはいるが、別にいずれも一つ目の記事を否定する内容にはなっていない」ということです。
一つ目の記事が、飽くまでエンジニアの方の、エンジニア部門から見た会社の意思決定プロセスの問題点について書いているのに対して、二つ目・三つ目の記事は「エンジニア部門の外から見たエンジニア部門への批判的な視点」を基調としています。
繰り返しになりますが、ここから読み取れることは
「非エンジニア部門とエンジニア部門の間に深刻な意識の断絶と相互不理解の兆候がある」
という一点のみです。
一つ目の記事にカウンターをしたければ、少なくともエンジニア部門の内情が分かる方が、「そんなことないよ」と言ってあげられる材料を提示してあげなくてはいけなかったのではないかなあ、と思ったりもしています。
まあ、外野からはドワンゴの内実は分かりませんので、これら三つの記事が妥当なのかどうか(それ以前に本当に社内の人が書いたのかどうかすら)も当然、我々からは分からない訳なのですが
「わざわざカウンター記事として書かれたっぽいのに全くカウンターになってない」
ということ自体興味深い事象ではあります。
もうちょっとこう、「どんな記事を書けばカウンターになるか」をエンジニア視点で適切に判断出来る人はいなかったんでしょうか。
ちょっとここから、話を自分の経験談、及びそこからの一般論にシフトします。
***
「営業部門とエンジニア部門の深刻な意識の断絶」というものは、私も何度か見聞したことがあるのですが、ことに印象が強烈なのは昔働いていたSI会社での話です。
当時私がいた会社は、元々はエンジニア出身の社長が作った会社だったものの、ある時営業出身の社長に代替わりして以降、急速に営業へのリソースを優先し始めました。
このこと自体社内では色んな議論になったのですが、後々問題になったのが
「元々営業畑の専門家で、エンジニアの視点を持たない人が外部から来て要職に採用され始めた」
「結果として、営業部門内部での中間管理職から、エンジニア出身の人材が排斥されてしまった」
ということです。
当初「営業に力を入れたいが、営業の専門家がいなかったので仕方なくエンジニアが営業もやっていた」
というような状況だったところ
「ちゃんと営業の専門家を雇って営業をやらせよう」という方針転換があったことが基点だったように記憶しています。
勿論、これ自体は一つの戦略としておかしい話ではなかったとは思うのですが、少し変化が急激過ぎたかも知れない、とも思います。
ここから何が起きたかというと
「エンジニア経験がある人が、営業部署のマネジメント層に存在しなくなってしまった」
ということ。
営業にシステムの話をしても全く話が通じなくなったことから、現場でも強い違和感を感じ始めました。
この後、職場では更に色々なことが起きました。
・無理な納期・意味がよく分からない仕様変更の案件が頻発するようになった
・かつ、それらの納期や仕様変更に対する現場の声が反映されにくくなっていった
・エンジニア部門に人が回ってこなくなった
・その為、開発はおろか保守運用に対するリソースすら不足し勝ちになっていった
・開発部門のコストも厳しく管理されるようになり、納期や予算を達成できなくなると厳しく詰められるようになった
・結果的に、ますます開発部門の発言力が落ちていった
物凄く典型的な悪循環ですよね。
いや、勿論、コスト管理をきちんと行おうとか、部分的には理解出来るところもあるんです。
ただ、それでも当時は、「腕を縛られて戦ってるのに、不利になるともっと強く腕を縛られるってなんの罰ゲームなんだよ」と思わざるを得なかったことも事実です。
これと前後して、「金を稼いでいるのは営業なのに、開発部門は何をやってるんだ」みたいな声を、私自身実際に、自分の耳で聞くようになりました。
この時起きていたのは、大筋
「営業部門のシステム開発知見不足によって、システムの状況を無視した案件が増える」
「それを弾くべきシステム部門の発言権が落ちているので、案件をブロック出来ず現場が疲弊する」
「また、システム自体の肥大化によって、仕様変更、追加開発時の影響調査だけでも膨大な手間になる」
「リソース不足によって、既存システムの保守や運用が手いっぱいになる」
「自分たちや顧客の要望がシステムになかなか反映されないことに営業部門が強い不満を持つ」
「営業がシステム部門の批判をする頻度が増える」
「営業部門とシステム部門の意識の断絶が進む」
というプロセスだったように思います。今思い出すだけで胃が痛くなるんですが、このプロセス自体は割と、色んな会社で一般的に観られるものだったんじゃないかなあ、というような気もします。
これ自体は、恐らく「営業部門とエンジニア部門の相互不理解が行きつくところまで行ってしまった」ことがその直接的な要因だったのだろうと理解しています。
非エンジニア部門のマネジメント層に、ちょっとでもエンジニアとしての知見があればこんなことにはならなかったんじゃないかと思うんですよね。
しかもこれ、別に営業の会社じゃなくて、SI会社での話ですよ?自分たちの商品について全く知識がない人が、その商品で商売しに行ってたんですよ。
別段「誰が悪い」という話ではなく、企業の両輪が相互不理解のまま突っ走っていればそりゃすっ転ぶよな、というだけの話なんですが、私自身はこのちょっと後に会社を辞めてしまいまして、その後も色々改善しようという試みはあったみたいなのですが、残念ながらもう当該企業はこの世に存在しません。
一種の寓話ですね。
ちなみに、それ以前の一般的な問題としてもう一つ、元来「システム開発のコスト」ってシステム的な知見がない人にとっては理解し辛いという問題もあるんですよね。
テスト工数だとか、影響範囲調査工数だとか、要件の規模とはあまり関係なく一定の工数がかかるんですが、それが非常に理解され辛い。
これについては以前こんな記事を書きました。興味がある方は読んでみてください。
なぜシステム会社の見積りが「ボッタクリ」に見えるのかを、きちんと説明する。
だから、営業側にシステムの知見が完全に欠如していると
「なんでこんだけの要望でこんなに時間がかかるんだよ」とか
「こんな簡単な要件なんだからもっと納期早くしろよ」
みたいな苛立ちを持ってしまいがち、というのは、割と一般的に言える話なのではないかと思います。
以来色んなところで、機会がある度に「非エンジニア部門にも開発経験やエンジニアとしての知見がある人材を配置するべき」という話をしていますし、自分自身色んなところに顔を突っ込んだりもしています。
それで色々面倒ごとを抱え込んだりもしているんですが、まあそれは別の話です。
***
上の話は単なる私の経験談に過ぎないので、これをそのまま他に適用する気はないのですが
「非エンジニア部門とエンジニア部門の相互不理解」という点については、私は割と強く企業のアラートとして受け取るべきだと考えています。
それは、単なる個人レベルの不満の表出というだけの話ではなく、企業の飯のタネの土台が揺らいでいることの証拠である場合があるからです。
なので、冒頭の記事もあまり他人事ではなく、もしも事実に即した記事であるのなら早急に相互理解の為の手を打った方がいいんじゃないかなあ、などと思ったりもするんですが、まあ全てが全くの創作話である可能性もあるので深くは突っ込まないでおきます。
ドワンゴ様始め、皆様のご清栄とご発展を強く祈念しつつ当エントリーを閉じさせて頂きます。よろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Frank Busch)