たまたま医局で流れていたテレビをみて、久々に衝撃を受けた。

 

その番組は複数のラーメン有名店・店主が、即席麺をベースに素人でも自宅で美味しいラーメンが作れる方法を紹介するものだったのだが、うち1軒が5分で鳥白湯スープを作れると謳ったのである。

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鳥白湯……口がベタつく位に濃厚な、あのスープ。

鶏ガラ等を何時間もかけてグツグツ煮ないと作れないものだと思っていた、あの鳥白湯が、5分……!?

 

いったい、どんな衝撃的なテクニックを使うのだろうかと、固唾を呑んで見守っていたのだが、やったことは

 

①鶏皮を、軽く炒めて

②水を加えて

③ブレンダーでグィーン

 

とやるだけだった。

 

おいおいおいおい。

 

マジかよ……。

 

鳥白湯、そんな簡単に、作れちまうのか……。

正直、コロンブスのたまごを目の前で再現されたかのような気持ちになった。

早速、スーパーで鶏皮を買って帰ったのは言うまでもない。

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これ、何でも応用できるんじゃねぇか?

その日から、鳥白湯を使って本当に色々な料理を作った。

例えば鳥白湯カレー。いわゆる、間違いないやつである。

 

鳥白湯カレーを食べてる最中

「ひょっとして、鍋である程度具材を火通しして、肉だけ取り除いて、ブレンダーでグィーンってやれば、具材が煮込んで溶け込んだ風の濃厚カレーとか簡単に作れるんじゃね?」

とハタと気がつき、やってみた。結果はご明察である。

 

「今までなんで気が付かなかったんだろ・・・」

 

美味しくなぁれと、グツグツ煮込んでいた、僕のあの時間はいったいなんだったんだろうか。

なんか今まで、ものすごく人生を無駄にしてきたかのような気持ちになった。

 

自宅でもニボニボできる

「これ、煮干しとかもいけんじゃん。濃厚煮干しラーメン、自宅で作れんじゃね?」

濃厚煮干しラーメンとは、最近東京で流行ってるラーメンの一つである。

引用:上野・さんじの濃厚煮干しラーメン。濃厚煮干しでもピカイチ旨い 。

 

セメント系とも揶揄されるこのラーメンは、シャキっとした生の玉ねぎとパキパキした低加水の細麺と一緒にズズッとやるとクソ旨い。

昔はどうやったら作れるのか皆目見当がつかなかったのだが

 

①煮干しを煮て

②ブレンダーでグィーンとやり

③鳥白湯スープとブレンド

 

すれば余裕でいけた。

 

「ってかこれ、味噌汁にも応用できるじゃん」

 

前から味噌汁で出汁を取り終わったあとの煮干しやかつお節、昆布を捨てるのがどうにもこうにも忍びなく、できればキチンと全てを召し上がりたいと色々画策してはいた。

 

だが、出汁を取り終わったあとのそれらはどうやっても美味しく食べる方法が見つからない。

が、ブレンダーでグィーンすれば味噌汁(濃厚ver)に早変わりするではないかとふと気がつき、ようやく僕は肩の荷が下りたような気持ちになった。

 

ただ・・・味噌汁(濃厚ver)は旨味が強く、確かに美味しいのだが、毎日飲むと飽きる。

味噌汁(濃厚ver)を飲んで、僕は改めて味噌汁(清湯ver)の尊さを思い知らされた。

 

あのシミジミとした奥深い味を出す為に、涙をのんで具材をあえて取り除く事の大切さも理解した。

なんでもかんでもグィーンすればいいってもんじゃないネ。

 

野菜のハシも捨てなくていい、そうブレンダーがあればね

鶏肉やコンソメでグツグツ煮込んだ野菜スープは旨いが、なんていうかイマイチ味にバリエーションがない。

一日目は旨いのだが、二日目になると同じ味で飽きる。

なんかもう一歩、何かが足りないといつも思っていた。

 

それがブレンダーを使えば、野菜ごとにその日のスープを作れるじゃんという事にハタと気がつき、僕は物凄く人生が捗ってきた。

 

白菜や大根といった白い野菜を使って作るブレンダー・シングルスープは、普通に煮たそれらとはまた違った良さがある。

トマトを使った赤のスープも旨い。

お好みでオリーブオイルやバター等を入れたりすると、油が乳化して、また別ベクトルに旨い。

 

野菜だけではない。

たとえば、貝類なんかも少し煮て殻を取り外してからブレンダーでグィーンすれば見事に濃厚スープになる。

僕はスーパーで売ってる貝類はちょっと臭みがあって出汁はともかく身自体はあまり美味しくいただけてなかったのだが、ブレンダーでグィーンすれば美味しく全部頂ける事に気がついてから、食事から修行感が消えた。

 

貝類だと、意外だったのがホタテを濃厚スープにするとめちゃくちゃ味が強い事だった。

焼きや刺し身を食べていた時は気が付かなかったホタテの新しい一面をみたかのような気分である。

 

なんだかブレンダーの回し者みたいになってきたが、これが一台家にあるだけでこんなにも食生活が豊かになるのだから、いやはや、世の中捨てたものではない。

 

車輪の再発明を楽しんでやる

前にある本で車輪の再発明という話を読んだ。

知らない人もいるだろうから簡単に書くと、以下のような話である(以下、架空のたとえ話)

 

 

ある村に素晴らしい数学の才能を持った若者がいた。

彼は小学校卒業後、働きながら連日日夜、数学に取り組み、20歳になった時に

「大発見をした」

と隣村の人に大見得を切り、得意げに話し出した。

 

それは……連立方程式の解き方だった。

 

個人で1から発見したのは確かに凄い。

けど、これは現代なら中学校で習うレベルの事である。

 

この話を聞いて、隣町の人は

「もし彼がきちんとした指導者の元につき、導かれたのなら、才能を無駄にせず、もっと凄い場所に到達できただろうに」

と思ったという。

 

 

現代では、このように他人が既に考えてくれた事はどんどんショートカットしていかないと、どこかで歩みが止まってしまう。

だから「車輪の再発明」をしないよう、自分の力を過信せず「誰かがきっと既に考えて試しているに違いない」と常に疑ってかかる事がとても大切だ。

 

しかし・・・これは厳しいプロの世界における話である。

アマチュアとしての私達にとっては、業績をあげる事なんかよりも楽しむ事こそが1番の喜びであろう。

 

僕はいまになってこう思うのだ。

仮に先のエピソードにでてきた連立方程式の解法を考え抜いた村人Aが、仮によき指導者に導かれて数学を勉強したとして、果たして彼の人生により深い喜びはあったのだろうかと。

 

別に・・・彼は最先端の数学屋をやって、メシを食っていきたいわけではないだろう。

それなら何時間もかけて夢中になって数学に取り組めたというフロー体験と、世紀の大発見をしたというブレイクスルーを味わえた方が、絶対に人生にプラスじゃないかと思うのだ。

 

だから僕は思うのだ。

アマチュアは、アマチュアだからこそ、あえて車輪の再発明をやりなさいと。

 

ホタテをブレンダーで撹拌して濃厚スープを作るといった、プロからみれば100年前に既に通り過ぎた道だって、僕からすれば心躍るオリジナルレシピの開発である。

これをやる事が、医師として忙しく厳しいプロの世界で生き続ける事の、かけがえのない息抜きになっているのだ。

 

小確幸は小学校の理科の実験でカンタンに得られる

村上春樹がかつてエッセイで

「あれもこれもと欲張ったりして、人よりも大きな事をやろうとするから不幸になる」

「そんな大それた事をせず、たとえば我慢して激しく運動した後にきりきり冷えたビールを飲む事をしっかりと楽しむ」

「こんな風に、小さいながらも確かな幸福を生活の中に見出して生きていけば、それなりにいい感じで人生が過ごせるんじゃないだろうか?」

と書いていた。

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彼はこうした小さいけれども確かな幸せの大切さを強調し、小確幸と名付け、凡人こそ小確幸を大切にしろと強調した。

最近、この小さいながらも確かな幸福は、車輪の再発明によって芋のようにゴロゴロ掘り出せる事に僕は気がついた。

 

小学校の理科の実験。

 

あれ、もの凄く楽しくなかっただろうか?

スチールウールが酸素の中で燃える姿にときめいたり、塩酸の中でアルミホイルがシュワシュワ溶ける姿にいいようのない喜びを感じなかっただろうか?

 

最近、思うのだ。

僕の生活には、あの小学校の理科の実験的成分が欠けていたなと。

 

ナナメにかまえて

「こんなん、どうせ意味ないよ」

と達観しすぎていたんじゃないか。そう思うのである。

 

一歩も前に進まなくたっていい

かつて、ハムスターがグルグル回し車を回す姿をみて

 

「自分、一歩も前に進んどらんやん!」

 

と馬鹿にしたくなるような気持ちを持ってしまった事があったが、今の自分は逆にあの一歩も動いてはいないけど、メチャ楽しそうに回し車を回すあの姿に一つの希望を見いだせるのである。

 

いいじゃん、前に進んでなくたって。

だってそれ、明らかに小確幸やってるじゃん。

絶対に馬鹿にしている側より、楽しんでるじゃん、ってね。

 

目をランランとキラキラ輝かせて、スチールウールがパチパチ燃える姿に純粋な喜びを感じている小学生は、見方によっては確かに車輪の再発明をやっているかもしれない。

 

けど、その喜びは少したりとも色褪せるものではない。

 

いいではないか。

一歩も前に進まなくったって。

回し車を回して回して天元突破し、ハムスターの王になればいいではないか。

 

墓穴掘っても掘りぬけて、突き抜けたら俺の勝ちっ!!

 

”ハムスター王”に!!!俺はなるっ!!!!

 

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


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2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
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・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
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・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

 

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

(Photo:slgckgc