ところで私は、昔
「相手に対する賛成意見や良い報告は結論から言うのがいい。けど、反対意見や悪い報告は理由から言いなさい」
と真面目に指導されたことがあります。
先日、安達さんのこんな記事を拝読しました。
「コンサル一年目が学ぶこと」を読んで、コンサル会社の「容赦ない」カルチャーについて思い出した。
で、別に反対とかアンチテーゼというわけではないんですが、特に下記の部分で、色々と昔のことを思い出したんです。
なお「結論から言う」カルチャーは、仕事にたいへん役に立つが、結構な訓練が必要だ。
いや、できる人は何の意識もせずにできてしまうのだが、できない人は何をどう説明しても、なかなかできない。
「ノウハウ」を聞いただけではダメなのだ。
だが、それを毎日、報告のたびにしつこくしつこく言われることで、二年目に入る頃にはそこそこ皆ができるようになる。
「結論から言う」カルチャーの話ですね。
今なら、結論から相手に伝えることの大事さとか、そのメリットってよく分かるんですよ。
マネージャーの仕事って要は判断することなので、まずなによりも「判断する為の情報」が必要で、その情報量が一番端的に詰まっているのが「結論」です。
結論に至るまでの前段って基本的には単なる補足情報なので、それを長々聞いているのは時間の無駄ですし、補足情報を聞くにしてもまず「結論」を把握してから聞いた方がよりポイントを押さえた聞き方が出来ます。
結論がないまま話し続けられるのって、「俺は結局どこにポイントを置いてこの話を聞けばいいのか?」ということが分からないので、聞き終わった後に「これってどういうことだっけ?」ってわざわざ聞き返さなきゃいけなかったりするんですよ。
これもめっちゃ不効率ですよね。
話す側にとっても、まず「この話の結論は何か?」を考えることは
「結局自分は何を言いたい/言わなくてはいけないのか?」
「どうすればその内容を過不足なく伝えることが出来るのか?」
を考えることとイコールなので、必要な情報を必要なだけ、しかも正確に伝えることに繋がります。
結論を先に把握することは、効率的であるだけでなく、正確でもあるんですね。
情報伝達を速く効率的に、かつ正確に。
いいことずくめです。
基本的に、ビジネス上の会話をする上で「結論を先に言え」というのはある程度常識であって、既にくだくだしくそのメリットを説明する必要はない、と言ってしまっても良いでしょう。
実際、上の引用記事でも、安達さんは「結論を先に言う」ことのメリットをいちいち説明されてはいません。
ところが、冒頭書いたんですが、私は一時期、それと160度くらい逆方向のことを教わっていました。
「相手に対する賛成意見や良い報告は結論から言うのがいい。けど、反対意見や悪い報告は理由から言いなさい」
って教わってたんですよ。
「は?」と思われるかも知れません。
ただ、その時はその時で、きちんとした理由があったんです。
つまり、「最初に相手の意見を否定する言葉を投げ掛けてしまうと、その後の言葉を受け入れてもらえなくなる」と。
「あなたの意見に反対です」といきなり核心を突っ込んでしまうと、その時点で相手の感情値がマイナスに触れてしまうので、以降の話を受け入れられにくくなってしまう、というんですね。
例えば、偉い人との会議でこんな会話があったとします。
偉い人:「私は〇〇だからAが正しいと思うのだが、皆はどう思う?」
私:「いえ、Aは正しくありません。その理由は」
偉い人:「(途中から聴いてない)はー?なんだその言い方は!反対するにも言い方ってものがあるだろう!」
私:「あ、いえ、その理由はですね」
偉い人:「(聞いてない)もういい!他に意見があるものは!?」
馬鹿馬鹿しいと思いますか?
私もそう思います。
ただこれですね、実際のところ、確かにこういう会話の展開って全然珍しくなかったんですよ。
最初の段階で、「こいつは自分に対して反対している」というのが、「失礼だ/無礼だ」という認識に直結してしまって、しかもそこから先相手の言葉に対して自分の耳をシャットアウトしてしまう人。
ロジックとは別の部分で「話を聞くか聞かないか」を判断してしまう人。
ただ、こういう人が全く聞く耳をもっていないかというと、必ずしもそういうわけではなく、
偉い人:「私は〇〇だからAが正しいと思うのだが、皆はどう思う?」
私:「ご意見よく分かるのですが、〇〇に対してこれこれこういう理由があり、一方こういう見方もありまして」
偉い人「ふむ」
私:「そこから考えると、必ずしもAは正しくなく、Bを採用するべきだと思うのですが」
偉い人:「なるほどそれはそうだな」
っていう話の進め方をすれば、案外するっと話が通ったりするんですよ。
「結論から話す」カルチャーとは真逆の文化。
まず先に相手の意見に対する受容を表明して、当たり障りのないところから徐々に外堀を埋めていって、最終的に結論にたどり着く話法。
「オブラートに包めカルチャー」ってヤツですよね。
***
いや、今「めんっどくせーーーーー」って思いましたよね?
全く同感です。私もそう思います。
ただまあ、人間が基本的に感情の動物であることもまた、否定は出来ない事実でして。
しかも、その感情を統御する為にはある程度訓練が必要で、偉い人、立場がある人だからといってそれが出来ていると決まったわけでもありません。
むしろ全然統御出来てない人も割といる、というかすごーく多いです。
例えば冒頭で引用した安達さんの上司の方は、
もちろん、上司は「結論から言えるまで」本当に辛抱強く待ってくれるし、
怒ることも決してなかった。
という方であって、つまり「感情を切り離して話を聞く訓練が出来ている人」なんですよ。
こういう人に対しては「結論から言う」話法の効率性が最大限発揮出来ますし、むしろ他の選択肢はないと言ってよいです。
ただ、相手がそういう人でなかった場合、「結論から言う」話法は最適解ではなくなる可能性があります。
これは、いいとか悪いとかいう話ではなく、「そういうケースもある」ということです。
ケースバイケースで、この二つの方針は使い分ける必要があります。
もちろん、コンサル会社の方々は決してコンサル同士でしか会話をしない訳ではなく、感情を制御できない相手とも会話をしなくてはいけないわけで、場合によっては回りくどい、オブラートに包んだ話し方を選択する訓練も受けているでしょう。
ただ
「「結論から言う」カルチャーは、仕事にたいへん役に立つが、結構な訓練が必要だ。」
「「ノウハウ」を聞いただけではダメなのだ。」
というのはまさにその通りで、「結論から話す」カルチャーを身に着ける為には、まずなによりも
「結論から話すことのメリットがきちんと認識されている土壌」及び
「結論から話してもきちんと聞いてもらえる、という心理的安全性」
の双方が備わっている環境にある程度の期間身をおくことが、何よりも重要なんじゃないかなあ、などと、私は思ったのです。
「こう話すと怒られるんじゃないか」という予感に、人は極めて脆弱です。
「防御線を置きたい」という誘惑に、人はあっさり篭絡されてしまいます。
だから、理由から話し始めてしまう。先に外堀を埋めることで、自分を守ろうとしてしまう。
「結論から話せない人」の結構多くが、そういう心理的な習性をもってしまっているんじゃないかなあ、と。
幸い現在は、私はある程度「結論から話すことを尊ぶ」環境に身をおけていますし、おかげでかつて感じた面倒くささを味わう頻度はだいぶ減りました。
今でもゼロになったわけではないですが。
ただ、一般的に言えることとして、
「相手はオブラートに包まなくても話を聞いてくれる人かどうか、という見極め」はとても重要であること。
そしてより重要なこととして、報告を聞く側、相談を受ける側、ようはマネージャーの側としては、
「オブラートに包まない事実を聞いても、それをきちんと受け入れられるし、最後まで話を聞いてあげられる」ということを相手に示し、その土壌を作っていくこと。
これがものすごーく大事なんじゃないかと、そんな風に考える次第なのです。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo by Startaê Team