ちょっと前にTwitterで10代で読んでいないと恥ずかしい必読書というリストが流れてきた。

正直、僕はこの手の本を一冊も読んでいないので、本当に若い頃にこれら高尚な本を読んだほうがいいのかはわからない。

 

ただ10代で何を経験すべきかと問われたら必ずこう答えるようにしている。

コンテンツに感動しなさい。衝撃を受けなさい、と。

それらは間違いなくあなたの人生を方向づける。

 

若い頃にしか経験できないモノは確かにある

若い頃の感受性は実に豊かだ。

例えば恋愛感情なんて、その最たるものだろう。

僕は随分と惚れっぽい性格をしていたので、それこそ大学生頃までは色んな女の子に片思いした。

けど、20代の終わり頃から本当に、全く、人に惚れなくなった。

 

もちろん結婚して身が落ち着いたというのは大きいとは思う。

だが、あんなにもチョロかった自分が女性をみても全くときめかないという事に気がついた時の衝撃はかなりものだった。

たぶん、性ホルモンの分泌量が減弱した事が原因なんじゃないかと思ってるのだけど、僕はたぶんもう二度と若い頃と同じような強度では異性に”惚れない”だろう。

 

あの頃は全く気が付かなかったけど”恋に落ちる”という感情は若さゆえの特権だったのだ。

 

パソコンのモニターの中やイヤホンの中にあった”人生”

恋もそうだが、コンテンツの感受性も年齢とともに凄く変化する。

若い頃に摂取したコンテンツの刺さり度合いは、歳をとってからのそれとは比較にならない。

 

冒頭で出てきた高尚なものが”刺さる”タイプの人もいるだろうが、僕は完全に俗人型だ。

具体的に僕の魂の原風景をあげると、テキストサイトの庵~iori~とパソコンのビジュアルノベルゲーム達、そしてCOCCOの音楽などだ。他にも沢山あるがキリがないので割愛する。

 

庵~iori~のみかんねこさん。ジオシティーズが消えてブログは無くなってしまったが、今はどうされてるのだろうか

 

生まれてはじめてやったビジュアルノベルゲームAIR。文字通り、泣いた。夏の終わりになると、いつもこのゲームを思い出す

 

Mステだったかで土下座シーンをみて圧巻されて興味をもったCOCCO。狂ったように何度も聞いた

 

高校生の頃にこれらから受けた衝撃は今でも忘れられない。

それこそ、自分の人生が”そこ”にあると真剣に思ったし、その衝撃を小賢しさ抜きでダイレクトに摂取しようと努め、そして模倣した。

 

無知というのは時に最高のスパイスとして働く。

歳を積み重ね、老獪さを増した自分は確かにある意味では賢くなったし、若い頃には決して出来なかった知恵の使い方ができるようにはなった。

 

けど、その代償として物事をシンプルにそしてダイレクトに受け取る事ができなくなった。

今でも僕は年に何度かはコンテンツに感動するけど、残念ながら慟哭といえるほどの強い衝動はない。

 

若かった頃は上に書いたようなモノに感動しつつも 「こんな無駄な事をせず、もう少し必死で勉強すべきなんじゃないか」と思っていた。

が、今になってみるとあれこそが本当の義務教育だったのだと確信を持って断言できる。

あんな痺れる体験、大人になったらもう二度とできない。

 

若い頃に定まった方向性を、大人になって深めていく

勘違いして欲しくないのだけど、僕は若い頃の方が感受性が優れていて、大人になってからの感受性が劣っているといいたいわけではない。

 

例え話で説明してみよう。

漫画や小説を読んでいて、物語が最高に白熱してきたとする。

このとき「ここがこの本で一番面白いところだから、ここで読むのをやめよう」となる人は誰一人としていない。

ちゃんと物語の結末までみて、綺麗な読後感を獲得するまでが良い読書体験というものである。

 

感受性も似たようなもので、若い頃のそれと歳をとってからのそれは”役割”がかなり異なる。

それは単純に良し悪しで比較するようなものではない。

思うに、若い頃の感動というのは自分の人生の方向性のようなものである。

私達は自分が何をすべきかなんて全く知ることなくこの世に生まれてくるわけだけど、強い感情というのは何らかの指針として私達のコンパスとなる。

 

例えば作家の橘玲さんは19歳の時に”知が物理的な衝撃”だということを知ったという。

知が物理的な衝撃だということをはじめて知ったのは一九歳の夏だった。

フランスの哲学者ミシェル・フーコーの二度目の来日が一九七八年四月で、東京大学での講演を中心に雑誌『現代思想』六月号でフーコー特集が組まれた。

 

ぼくは発売日に大学の生協でそれを手に入れて、西荻窪のアパートに帰る電車の中で読み出した。

阿佐ヶ谷あたりだと思うけど、いきなりうしろから誰かにどつかれて、思わず振り返った。

でも、そこには誰もいなかった。その衝撃は、頭の中からやってきたのだ。

 

あるいは村上春樹さんは29歳の夏、突如として神宮球場にて小説を書こうと思い立ったという。

『走ることについて語るときに僕の語ること』という本の中で彼はこの時の経験をこう記述する。

小説を書こうと思い立った日時はピンポイントで特定できる。1978年4月1日の午後一時半前後だ。

その日、神宮球場の外野席で一人でビールを飲みながら野球を観戦していた。その回の裏、先頭バッターのデイブ・ヒルトンがレフト線にヒットを打った。

バットが速球をジャストミートする鋭い音が球場に響きわたった。ヒルトンは素速く一塁ベースをまわり、易々と二塁へと到達した。

僕が「そうだ、小説を書いてみよう」と思い立ったのはその瞬間のことだ。

晴れわたった空と、緑色をとり戻したばかりの新しい芝生の感触と、バットの快音をまだ覚えている。

そのとき空から何かが静かに舞い降りてきて、僕はそれをたしかに受け取ったのだ。

 

僕が知る限り優れたコンテンツクリエイターは誰しもがこの手のエピソードをいくつか持っている。

他人からみたら本当に些細でしかない事を通じて、人は時に天啓ともいえる何かを受け取る事がある。

橘玲さんにとってのそれは知が物理的衝動であったという事だ。

それをゆっくりと育んだ結果、彼はベストセラー作家になった。

 

村上春樹さんは当時ピーター・キャットというBARの一店長でしかなかった。

けど、神宮球場にてふと頭に思い浮かんだ小説家になろうという思いつきを大切に育てた結果、彼は世界的に有名な作家となった。

 

どれも最初のキッカケだけを切り取ってしまえば「珍しい体験をしたね」と言われて酒の席で消費されるような小咄でしかない。

けど、彼らはそれをちゃんと大切に扱って、一つの成果として結実させた。

 

僕は思うのだ。

こういう勘違いとしか形容できないものに形を与えて、嘘から出たまこと、瓢箪から駒にするのが人生なんじゃないかって。

若い頃に定まった方向性を、大人になって深めていく。

よい歳の重ね方というものの一つは間違いなくこれである。

 

もらう側からわたす側になる

私達人間は誰もが遺伝子を持っている。

誰かが誰かと恋という勘違いをして遺伝子を残すと、子供が生まれる。

 

人生というのは順番こだ。

誰かが遺伝子のバトンを渡してくれたから、今のあなたがいる。

あなたが誰かにバトンを渡すと、また新しい命が生まれる。

生物というものはそういう風にできている。

 

私達人間は、また誰もが文化を持っている。

人によってはそれは家風であったり、仕事であったり、僕のように俗なコンテンツだったりと色々だ。

 

文化もまた順番こだ。

親を自分で選べないように、何の文化を見出すかは自分では選べない。

文化があなたを選ぶのだ。

それは本当に偶然、ささいなキッカケを通じてあなたのもとに届き、あなたの中を通して誰かのもとに届く。

 

あなたの文化のバトンもきっと何かの形で誰かに届く。

世の中というものはそういう風にできている。

 

もらう側からわたす側へ。

若い頃の人生も、歳をとってからの人生も、どちらも等しく楽しい営みだ。

沢山のよいものを経験し、沢山のよいものを後へと残す。

誰でもその一端に関われるのだから、まったくもって人間社会は面白い。

 

そしてもし、あなたが幸運にも何かの天啓をどこかで受け取ったのならば、それを勘違いで終わらせずにキチンと育て上げて何かにまで高めて欲しいなと思う。

それはきっと物凄く楽しい経験として、あなたの人生の思い出の中に刻み込まれる。

それがきっと人生の意味ってやつの正体なのだ。

 

 

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(2020/8/28更新)

 

 

 

【プロフィール】

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高須賀

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