飲食店の経営者をしている知人と、久しぶりに会ったところ、「タイミー」の話になった。
知らない方のために「タイミーとは何か」を説明すると、タイミーとは「スポットワーク紹介アプリ」のこと。
スキマバイトアプリ:
タイミーは、従来の求人サイトや派遣のような、時間や勤務期間に縛られない、スキマ時間で働くためのアプリです。マッチングサービス:
働きたい人と、働いてほしい企業をマッチングさせることで、企業の人材不足を解消し、働き手にはスキマ時間に気軽に働ける機会を提供します。特徴:
面接・登録なしで、すぐに働くことができる。
勤務終了後、すぐに報酬を受け取ることができる。
企業や店舗のレビューを確認できるため、安心して働ける。
バッジ機能により、スキルアップや高時給の仕事を見つけやすくなる。
(スキマバイトマガジン)
イメージが湧かなければ、「日雇い」を想像すると良いかもしれない。
「スポットワークと、日雇いと何が違うの?」という質問が出そうだが、言い方が違うだけで、多分同じ。
本質的には、企業が日雇い労働者を募集できるサービスと言える。
ただ法で禁止されている「日雇い派遣」については、タイミーは派遣元ではなく、あくまで「マッチング」を提供している紹介サービス。
という立て付けらしい。
まあ、このあたりの法解釈は私の専門外なので、詳しい人同士でやってくれ。
個人的には、「助かっている」という飲食店と、「スポットで働きたい」という労働者がいる限り、別にいいのではと思っている。
嫌なら、使わなきゃいいだけだ。
もちろん労使の話だから、様々なトラブルもあるのだろう。
こんなふうに。
昨日からタイミーやり始めた会社だけど面白そうな内容だったから行ってみたらとんでもないことになっててヤバい
アタシ、今日9000円以上もらえるはずだったのに早上がりとかいう嘘でもらえないらしいです。
現場着いたらそもそも2時間半削られた時間ですねとかいわれては?ってなっています。 pic.twitter.com/c1g5FdyOP7— しまお (@twinangelbeats) May 21, 2025
とはいえ、こうした評価が公にされれば、皆がその企業を避けるようになるから、悪質な企業は排除され、改善は進むだろう。
そういう意味では、評価が企業内で秘密にされている「正社員」よりも、スポットワーカーと企業側両方に、オープンな相互評価をさせているから、わりと「公平」な関係が築かれているのではないかと思う。
*
前置きが長くなった。
ただ、今日書きたいのは、タイミーのサービスについてではない。
「タイミー」で働きに来る人の「質」についてだ。
上で触れた知人は、タイミーをよく利用すると述べていたが、「すごいいい人と、ダメ人材の差が激しい」という。
もちろん、面接も経歴書の確認もなく、「いきなり」職場に来て働いてもらうわけだから、それは当たり前だろう。
ただ、どれくらいの差があるのか気になったので、聞いてみた。
「「いい人」ってのは、どれくらいい人なの?」
「社員よりもいいくらい。すごい優秀。雇いたいけど、こういう人たちは、あえてスポットワーカーを選んでいる理由がある。バンドマンとか、演劇やってるとか。」
「なるほど……じゃ、ダメな人は?」
「それがね。なかなか一言で言うのが難しいんだけど、要は「とにかく変化に弱い」。」
「???……たとえば?」
「お客さんが少なくて、皿洗いが止まった時、「じゃ、つくえ拭いて」って、頼んだ瞬間、不機嫌になる。」
タイミーの募集にはたいてい、
「洗い場スタッフ募集 主な業務は、洗い場、簡単な仕込み、手が空いたら他の業務をお願いすることもあります」
など、手が空いたら別の仕事やって、と書かれている。
洗う皿が無くなったら「つくえ拭いて」くらいは、飲食店では業務の範疇だろう。
だが、そうした「変更」に対して、強い抵抗を示すのだそうだ。
「あとは「マニュアルに書いてないですよね……」とか言って、急に手が止まったり。なんか急に反抗的になったりするんだよね。あと「そのやり方じゃダメ」って指摘すると、もう心ここにあらず、っていう状態になる。」
「なるほどね……」
「全く改善ができない人、ずーっと、ひたすら同じ作業しかやりたがらない人がいて、全体的に、「暗い感じ」の人に多いんだよね。」
「そういう人って、どれくらいの割合でいるの?」
「10人に一人くらいかな。本当にまずいのは。」
「ふーん。結構多いね。」
「タイミー使うなら、柔軟性とか、改善とか、そういうことを前提にしちゃいけないって、改めて思うよ。ハズレが来ても、まあ、それなりに役に立つように仕事を設計することだね。」
*
「変化に弱い」というのは、とにかく現代社会ではツラいだろうな、と思う。
つい300年前までは、ほとんどの人が、毎日畑仕事、大して変わり映えもしない生活を送っていただろうが、今は皆が便利を求めるせいで、企業は競争を余儀なくされ、そういう贅沢は許されなくなった。
タイミーに登録している人は、約1000万人いるという。
そのうちの、10人に一人が、「そういう人」なら、少なくとも100万人は、上のような人が存在しているということだ。
とはいえ、経営者の彼は、彼らに同情的だった。
「たぶん自信がないせいだと思う。ちょっと人から言われると、「自分にはできない」って、すぐに思ってしまうんだろう。」
「そうなんだ。」
「彼らに活躍できる仕事を作ってあげたいのは、やまやまなんだけど……「皿洗いの手が空いたら机拭いて」とか「そのやり方だと汚れが取れないよ」っていう程度で、仕事を投げ出してしまう人だと、もうどうしようもなくてね……」
彼はそう言うと、ため息をついた。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
安達裕哉
生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」82万部(https://amzn.to/49Tivyi)|
◯Twitter:安達裕哉
◯Facebook:安達裕哉
◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)
頭のいい人が話す前に考えていること
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Photo:Aurelien Thomas