社員のモチベーションをどうやって上げるか、日々苦労している経営者、管理職は多い。

その証拠に、書店のビジネス書を見れば「社員のやる気」や、「動機付け」というテーマで埋まり、セミナーは悩んだ管理職でいっぱいである。

 

だが、仕事において本当にモチベーションが重要なのか、といえば、そう思わない人も多い。

 

私が以前、「管理職研修」を営業した時、ある専門サービス業の経営者はこう言った。

「社員のモチベーションなど気にする必要は全くない。管理職研修など不要。」

いきなり全否定された私は、その理由を聞いた。

 

彼は言った。

「モチベーションは外から与えるものではなく、その人が自ら生み出すものだからだ。」

経営者は続けて言った。

「養うべきは、モチベーションではなく、プロ意識だ。これは徹底的に教育する必要がある。」

 

また、ある時私は保険の代理店に訪問した。その会社は社員は10名程度、ほとんどが「おばちゃん」だった。

彼女たちにモチベーションと呼ぶべきものは見当たらなかった。なにせほぼ毎日「仕事するの嫌やわ−」と言っているのだ。

だが、彼女たちは実によく働いていた。その代理店の成績、顧客満足度は、全国でも有数のレベルであった。

その代理店のおばちゃんの一人は言った。

「仕事は嫌だけど、お金をもらってるんだから、きちんとしなきゃ。」

 

 

モチベーションは本質的に不安定である。なぜなら様々な要因によって影響を受けるからだ。例えば

パートナーと喧嘩した。

歯が痛い。

友人関係がうまく行っていない。

親の体調がすぐれない

そういった、日常の出来事から大きく影響を受けてしまう。モチベーションは気まぐれであり、プライベートの状況に左右されやすい。

だが、顧客はあなたのプライベートの状況など斟酌しない。顧客にとってはサービスのレベルが全てだからだ。

 

だが、プロ意識は異なる。やる気を言い訳にしない。プライベートの状況にかかわらずクオリティの高いものを仕上げようとする。納期に間に合わせようとする。

「会社員も給料をもらって働いている以上、プロとして行動すべきだ」と、管理職研修は不要と断言した経営者は語った。

「アルバイトですら、プロ意識を持って働く人々がいる。社員は言うに及ばずだ」

 

 

結局のところ、モチベーションは外部から与えることは不可能だ。しかし、プロ意識は教育によって高めることが可能であるという。

 

件の経営者に「プロ意識はどのように教育するのですか?」と聞くと、彼はこう言った。

「必要なのは、まずプロとしてのあるべき姿・規律などの行動規範。第二によく考えられた目標。そして最後にそれらを体現する模範的人物。これらが必要なことの全てであり、どれが欠けてもプロ意識は生まれない。」

確かに、 納得である。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

 

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(Photo:Arentas)