Google、Apple、Adobe、intel、CISCO・・・米国テクノロジー企業群を発端として、ビジネスシーンにおけるマインドフルネスの導入が急速に広がりました。
一方、昨今では「マインドフルネスは仕事のモチベーションを下げる」、「マインドフルネスは仕事に良い影響を与えない」といった“否定の声”も徐々に出始めています。
マインドフルネスは、ビジネスシーンで使える?使えない?
賛否両論入り乱れてきただけに、マインドフルネスがビジネスシーンにおいて有効なのかどうか、非常にわかりづらくなってきました。
ここでは、私が「ビジネスにおける成功」を目的に置いて、マインドフルネスに取り組んだ際の実体験を、一つのケーススタディとしてお伝えしていこうと思います。
とりわけ「マインドフルネスが従業員(個人および組織)のモチベーションに与える影響」という観点で、マインドフルネスとモチベーションの関係性を深掘りしていきたいと思います。
私がマインドフルネスを始めた理由
私がマインドフルネスに取り組み始めたのは、社員数60名ほどの会社で部長職に就き、それから暫くの時間が経過した頃の事です。
もともと、私は職人気質の強い営業マンで、他人への興味が薄いタイプの人間でした。
そのためか、私の部署は≪人が辞める→売上が下がる→忙しくなる→また人が辞める→また売上が下がる→もっと忙しくなる≫という負のスパイラルに、見事にはまってしまいました・・・。
次第に人が辞め、仕事は忙しくなる一方。ついには自分自身も心が折れる寸前まで追い込まれてしまいました。
そんな時、「世界的な企業の経営者は、もっともっと忙しいはずなのに、どうやってチベーションを上げているんだろう??」という疑問が、ふと頭をよぎりました。
そして、目に留まったのが、「スティーブ・ジョブズが取り組む【禅】」をテーマとした記事でした。[1]
その記事をきっかけに「禅」や「マインドフルネス」といったキーワードで、情報を読み漁るようになりました。
・モチベーションが上がる
・集中力が高まる
・ストレス耐性が強まる
・創造力が高まる
・コミュニケーション能力が上がる
すると、上記のようにマインドフルネスをもてはやす言葉が、いくつも目に入ってきました。
何でも叶える魔法の杖のように書かれているので「何だこりゃ胡散臭い」と、興醒めをした事を記憶しています。
ただ、当時は藁をも掴む思いで、「スティーブ・ジョブズがやっているから・・」という理由にすがりつき、自分を動機付けながら、半信半疑でマインドフルネスに取り組んでみる事にしました。
私のマインドフルネス手法 7STEP
まずは、人から教わりながら、本を読みながら、マインドフルネスのやり方を色々と勉強しました。
それらの経験を通じて、現時点で(一旦)固定化された私のマインドフルネス手法は、以下の通りです。[2][3][4]
(手法については様々なサイトで紹介されているので、ここでは簡単な紹介にとどめます)
①夜寝る前、もしくは朝起きた後、20分ほどマインドフルネスの時間を取る。
②まず、ソファーに深く腰掛けるか、布団に横になる。
③②の状態で、でゆったりと鼻で呼吸をする。
④息を吐きながら、全身を隅々までリラックスさせるように力を抜いていく。
⑤特に、顔・頭・肩周りは、深く弛緩する。
⑥呼吸に全ての意識を集中する。
⑦何か考え事が浮かんできたら、それを受け流し、あらためて呼吸だけに意識を向ける
以上、7つのステップを、20分間繰り返します。
マインドフルネスは筋トレに似ていると言われます。
各所で紹介されているやり方には、それぞれ微妙な違いが有ったりしますが、筋トレにも様々なやり方があるように、細かいやり方の違いは気にする必要がないと思います。
大事なポイントは、
・呼吸に全ての意識を集中する
・全身をリラックスさせる
という二点です。
マインドフルネスが脳に与える影響と科学的メカニズム
では、マインドフルネスを科学的に見た時に「どのような作用機序」が発生しているのでしょうか。
極めて簡素化して説明すると、以下の通りです。
①マインドフルネスによって、脳内にある海馬の灰白質密度が高まる。同時に扁桃体の灰白質密度が低下する。
②海馬は、記憶や考察を司る機能を持っている。扁桃体は、不安やストレスを司る機能を持っている。
③そのため、マインドフルネスに取り組む事で、記憶力や創造力が高まり、ストレスが低減するという結果につながる。
これは、ハーバードメディカルスクールの研究生をはじめとした合同研究チームによる調査結果から得られた結論です。[5]
マインドフルネスにおける、どのプロセス(呼吸?姿勢?考えない事?)が灰白質の変化を呼び起こしているのかは未だ明らかになっていないようですが、マインドフルネスによって脳内に変化が起きたのは明らかな事実(MRIでデータが検出された)だったようです。
ビジネスシーンにおいて、マインドフルネスが【個人】に与える影響(私の経験から)
では、このような脳内の変化は、ビジネスシーンにどのような影響を与えるのでしょうか。
まず、組織全体ではなく、個人の側面からご紹介いたします。
主観となってしまいますが、私がマインドフルネスに取り組む事で、体感値として感じられた効果は以下の通りです。
・集中力が高まる→×
・ストレス耐性が強まる→○
・創造力が高まる→△
・コミュニケーション能力が上がる→×
ストレス耐性は○、創造力は△としていますが、それぞれの評価理由は以下の通りです。
ストレス耐性
後述する「モチベーション」と連動する話になってきますが、正確にはストレス耐性が強まったというよりも「焦りを感じづらくなった=冷静さを身につけた」という表現をする方が適切かもしれません。
つい先日も、趣味である早朝サーフィンをしている最中に、サーフボードが頭にぶつかり額がばっくりと切れてしまう事故に遭いましたが、焦ること無く冷静に対処できたので、大事に至る事はありませんでした(周囲の人たちは血だらけの私を見て、焦っていました・・すみません・・・)。
創造力
「アイデア出しで行き詰まった時、マインドフルネスを行ったら、すんなりアイデアが出てきた」という体験があります。
しかし、これはごく稀な事で、同じようにやったのに、全くダメな時がほとんどです。そのため、△としました。
他のテーマについては、直接的な変化を感じなかったため、×としました。
では、この記事で主題としている【モチベーション】は、どうだったでしょうか。
結論から言うと、モチベーションは上がりませんでした。
しかし・・・マインドフルネスを通じて、冷静さが身につく事で【モチベーションを一定に保つ能力】が身につきました。
目先の事に一喜一憂しない性格に変わった事を実感しています。
それまでの私は、まさに「拙速」というキーワードが似合う人間で、周囲からもそのような評価を受けていました。
「遅巧は拙速にしかず」が座右の銘だった私なので、当然の事かもしれません。
創業間もないスタートアップでの経歴が長く、短期決戦を求められる機会が多かった事も、そのような性格を形成する一つの要因になっていたのかもしれません。
しかし、そこそこ成熟した企業の管理職が、そのような考え方をしていては、組織の業績は安定しません。
そんな管理職であった私が、マインドフルネスを通じて「冷静さ」を手に入れました。
「期末に打ち込む逆転ホームラン」は無くなりましたが、反面、常に一定のパフォーマンスを発揮し続ける状態を作り上げる事が出来ました。
ビジネスシーンにおいて、マインドフルネスが【組織】に与える影響(私の経験から)
先ほど述べた個人の変化により、私が組織長を務める部署では、明らかな変化が起こりました。
それは、売上を示すグラフの形です。
以前は「先月150%達成なのに、今月の達成率はわずか30%・・・」という風に、グラフがガクンガクンと乱高下していました。
しかし、マインドフルネスに取り組んで以降は、「多少の上下はあれども、直線に近いグラフ」を描くようになりました。
通期で見た時、売上の総量はそれほど変わりませんが、グラフが示す形が明らかに違ってきたのです。
すると、業務量が安定し、メンバーの負担が減りました。
何より、思いつきと勢いだけで物事を進める組織長(私の事・・)のキャラクターが変わった事で、メンバーのストレスは大いに軽減したものと思います(反省・・・)。
これが中長期的な売上の伸びにつながったのです。
これらの事象が、マインドフルネスによる直接的な効果だったのかどうか、立証する事はできません。
しかし、確実に言えるのは、マインドフルネスに取り組む事および取り組むための情報を収集する過程で、自分自身の思考が「短期型」から「長期型」へと変わり、また、長期施策の成果を焦らずじっくり待てる心の余裕を持つに至る事が出来た、という事です。
ビジネスシーンにおいてマインドフルネスを導入する際に注意すべき点(私の経験から)
結論として、「マインドフルネスは、従業員の“モチベーションを向上させない”。」「マインドフルネスは、従業員の“モチベーションを一定に保つ”効果がある。」と言えるのではないでしょうか。
そうなると、ビジネスにおけるマインドフルネスの導入については、少し注意が必要になるのかもしれません。
実際に、行動科学者のチームが行った研究で、マインドフルネスは「平穏な感覚を増大させる」ため、目の前のプロジェクトやタスクに対して「よし、やってやろう!!」と挑んでいく感覚は減少してしまうのだそうです。[6]
そうなると、創業間もないスタートアップや、入社から日が浅い若手社員にとって、マインドフルネスは逆効果になるのかもしれません。
マインドフルネスは脳みその筋力トレーニング
この記事の中でも申し上げました通り、マインドフルネスは、脳みその筋トレのようなものです。
脳科学の進歩により、「脳は変幻自在な可塑性を持つ」という事が明らかになってきています。
つまり、マインドフルネスは、「脳が持つ可塑性を利用して、自分自身の情動を自由にコントロールできるようにするためのトレーニングである」と言い換える事も出来ます。
どのように自分の情動や従業員の情動をコントロールしたいのか?
その答えによって、マインドフルネスの導入是非が見えてくるのではないでしょうか。
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【著者プロフィール】
株式会社識学
人間の意識構造に着目した独自の組織マネジメント理論「識学」を活用した組織コンサルティング会社。同社が運営するメディアでは、マネジメント、リーダーシップをはじめ、組織運営に関する様々なコラムをお届けしています。
webサイト:識学総研
Photo by Sean Stratton on Unsplash
参照
[1] PRESIDENT Online 肥田 美佐子 「スティーブ・ジョブズと禅」
[2]リスタ!「世界のエリートが実践するマインドフルネス瞑想法(入門編)」
[3]Smartlog 「マインドフルネス瞑想の方法と効果は?グーグルが実践する研修に迫る」
[4]HealingPlaza 「マインドフルネス瞑想の方法と効果は?グーグルが実践する研修に迫る」
[5]吉田昌生 「脳パフォーマンスがあがるマインドフルネス瞑想法」主婦の友社(2017)