米子松蔭高校主将のSNS上での「交渉」
コロナ禍は依然として治まる気配を見せない状況ではありますが、2020年は中止された夏の全国高校野球が2021年は開催されました。
今年の予選では、鳥取県の米子松蔭高校が、関係者に新型コロナ感染者が出たとの理由でいったん出場辞退、1回戦で不戦敗となりながら、その後不戦敗が取り消され出場が可能になる、という事態が話題となりました。
報道によれば、同校では予選1回戦の前日に学校関係者1名の新型コロナ感染が確認され、当日朝の学校内の検査では部員には感染が確認されなかったものの、試合開始までに保健所が濃厚接触に関する確認と書類提出をできず、やむなく出場辞退となったとのことです。
ところが、辞退翌日に同校野球部の主将がSNS上で出場を模索できないか訴え、それに同情する声が多く集まったことから、広く世間にニュースとして知られることとなりました。
結果として、同高校長から県高野連への嘆願書提出、県高野連による不戦敗の取り消しへとつながっていったのです。
参考)コロナで「不戦敗」米子松蔭、一転出場へ…「必死に練習した」主将の訴え実る|読売新聞 2021.7.20
ビジネスにおける「交渉」で重要な3つのポイント
本稿では、当該経緯の詳細な実態を取材・分析するものではありませんが、報道されている範囲からの考察として、ビジネスにおける「交渉」を考える際に教訓となるポイントをまとめてみたいと思います。
1.交渉で解決できるという意識を持つ
ビジネスにおいても、「いちど決まったことだから」「〇〇さんが言っているから」などの理由で、あるべき姿ではないけれど何となく受け入れざるを得ない、とやり過ごしている事柄は多いのではないでしょうか。
しかし今回の件は、しかるべく声を上げ交渉に持ち込むことによって、一見もう決まってしまったようなことでも望ましい解決に動かせるのだ、ということを示しました。
特にリーダー的役割の人にとっては、組織を代表する立場として、言うべきことはしっかり主張し、交渉を通じてより良い解決を探っていく、という姿勢が求められることをまざまざと示したと言えます。
交渉術のテキスト(『無理せずに勝てる交渉術』G・リチャード・シェル著、パンローリング)などでも、目標を高く設定すること(相手や状況に引きずられて控えめになり過ぎないこと)の重要性はよく指摘されています。
2.交渉可能な要素は何かを具体的に見極める
今回の件では、元々「関係者に感染者が出たら即出場不可」というルールでは無く、時間が迫った中での判断であり撤回の余地があった点や、後日の再試合を相手校が了承してくれた点が、解決に大きく寄与しました。
大ざっぱに「感染者が出たのは事実だから辞退はやむを得ない」「いちど不戦敗として試合の決着がついたのだからもう引き返せない」と思い込んでいては、解決の糸口は掴めなかったのです。
交渉術でよく使われるたとえ話に「オレンジを取り合う姉妹」があります。
姉妹が一つのオレンジを取り合ってラチが開かないのですが、よくよく聞いてみると一方は「マーマレードを作りたくて皮が欲しかった」、もう一方は「オレンジを食べたくて身が欲しかった」。そのため二人とも不満なく分け合うことができた、というものです。
抽象的にはお互い同じものを争っているようでも、さまざまな角度から具体的に分けて考えてみると、実は違う要素に重きを置いていることがあります。それを発見できれば、交渉を妥結に導くことができるのです。
3.交渉の舞台設定を変える有効性を知る
「舞台設定を変える」とは、今回の例で言えば、部員、学校の先生、県高野連による話し合いから、SNSでの発信によって世論の関心を喚起し、正式な嘆願書という形で県高野連に再考を促したことを指します。
ある当事者間、ある場面での交渉では不利な事柄も、別の第三者の声を援用したり、TPOを変えたりすることでガラッと情勢が変わることがあります。
この「舞台設定を変える」ことは、むしろ日常的な交渉ごとだとごく自然に使っているテクニックなのですが、ビジネスシーンだと得てして、交渉相手の地位・役職や意思決定のプロセスが明確なだけに忘れがちかもしれません。
ビジネスにおいても日常においても、交渉は身近で役に立つスキルです。
これを機会に、セオリーをいま一度確認してみてはいかがでしょうか。
参考)『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』(グロービス著 ダイヤモンド社)
(執筆:大島 一樹)
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奥田 真輔 氏
システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。
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(2026/01/19更新)
【著者プロフィール】
日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。
ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。
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