前回は、ビジネスにおける「読書の効用」についてお伝えしてきました。今回は、新入社員の皆さんに特にオススメしたいビジネス書をご紹介します。
私自身、20代に1500冊以上の本を読んできました。その中で「新卒1年目で読んでおいてよかった、もしくは読んでおきたかった本」を5冊ピックアップしてみました。
『コンサル一年目が学ぶこと』
「結論から話す」「考え方から考える」「3日かけて100点より3時間で60点を目指す」など、業界や職種問わず重要なベーシックスキルが網羅されている本です。
例えば、「結論から話す」はあらゆるビジネス書に一丁目一番地のスキルとして紹介されていますし、多くの方が「何を当たり前のことを」と思うかもしれません。
しかし、いつも結論から話せる人は、そう多くはありません。当たり前のことを高いレベルで行える人は、それだけで重宝されるのです。
私がコンサル一年目のときに教わった言葉があります。
「ABCを大切に」
A(当たり前を)B(バカにせず)C(ちゃんとやる)の略です。
本書には「ABCのスキル」が網羅されています。ぜひ手元に置いて1日数分でもいいので読み返し、1日1%の改善を積んでみてください。1年後には、自分でもハッキリと認識できるくらいの手ごたえを感じているはずです。
『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果をあげる方法』
2冊目は、私に仕事の学び方を教えてくれた本です。
本書のメッセージは「仕事はコツで覚えましょう」の一言に集約されます。
コツとは「ここさえ押さえておけば、誰だって70点は取れるであろう、本質的かつ具体的なポイント」のこと。このコツという概念について、筆者は跳び箱を例にわかりやすく教えてくれます。
ふつうの先生だと、たとえば「助走スピードが足りないから飛べないんだ。もっと遠く勢いをつけて走ってこい」とか「踏み切る位置はここだ、ここ!」などと、必要なポイントを一つひとつ挙げて教えるだろう。そして、その子ができないポイントを飛ぶごとに指摘しながら、ともかく何度か繰り返しやらせて飛べるようになるのを待つのが常だ。
(中略)
やはり、跳び箱をうまく飛べるようになるのにも、それなりのコツがあった。
答えは、まず両腕で体重を支える感覚を覚えさせる、これに尽きるというのだ。
だから、何度も何度も実際に跳び箱を飛ばせる必要はない。一回やらせてみて飛べなかった子には、たとえば床の上で体重を支える感覚を教える。具体的には、床に座らせ、両脚のあいだに両手をつかせて、両腕で身体をちょっと浮かせてみろ、といえばいい。
『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果をあげる方法』23ページ
「両腕で体重を支える感覚を覚える」
たった1つのアドバイスで、誰でもあっという間に跳び箱が飛べるようになる。これが、コツの威力です。
では、どうすれば、仕事をコツで覚えることができるのか。そのヒントが、本書には散りばめられています。
※紙の本が市場にあまり流通しておらず価格が高騰しているため、電子書籍で一読されることをオススメします。
『自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND』
しかし「どうやって自分の頭で考えればよいか」を教わる機会は、それほど多くはありません。
そんな時に頼りになるのが本書です。
本書は「赤の国に住むピンキーという中学生の魚が、緑の国にサッカー留学しに行く物語」です。物語の中でピンキーは「そもそも何のために留学に行くのか?」「留学先はどのような基準を定めて選ぶべきか?」「言葉の通じない留学先でどう生活していけばよいか?」といった問いについて、試行錯誤しながらも答えを出していきます。 この物語を通して「自分の頭で考えるとはどういうことか?」を学ぶことができます。
『問題解決の全体観』
仕事は「問題解決」の連続です。そして、社会人になった方の多くが「問題解決」の本なり動画なりを目にすることになるでしょう。
しかし、いざ本を探してみようとAmazonの検索欄に「問題解決」と入力すると、何と10000件以上の候補がヒットします。いったいどの本を読めばいいのやら、さっぱりわかりません。私自身、誇張なしで100冊以上の問題解決本を読みました(半分以上は趣味で読んでいます)。
その中で、とっておきの本をご紹介しましょう。それが『問題解決の全体観』です。
本書を読むと、タイトル通り「問題解決の全体観」を把握できます。しかも、解像度高く。
巷の問題解決本を開くと、「MECE」「ロジックツリー」「フレームワーク」「仮説志向」「空・雨・傘」などの思考ツールの使い方が解説されています。
例えば「空・雨・傘」という思考ツールがあります。これは、以下のように、状況→解釈→行動と思考を進める技術を指します。
- 空=状況:空を見上げると、西の空が暗く曇っている
- 雨=解釈:どうやら雨が降ってきそうだ
- 傘=行動:傘を持って出かけよう
ほとんどの本には「空・雨・傘」についてこれ以上は解説されていません。しかし、本書の解説は全く違いました。
- 「空・雨・傘」にも、与えられた仕事の段取りを考える「段取りの空・雨・傘」と、与えられた仕事の意図と期待されているアウトプットまで考える「意味合いの空・雨・傘」がある。この別次元の「空・雨・傘」を意識できているかどうかで、成果に大きな差が出る
- 「空・雨・傘」に何パターンも広がりを持たせるためには、「それ」と「それ以外」に分けていくとよい。
詳しい解説は本書に譲りますが、このようにひとつとっても非常に奥行きのある説明がなされています。「空・雨・傘」以外には、ロジックツリーについても骨の髄までしゃぶりつくすように解説されているため、問題解決への理解が人一倍深まるはずです。
本書は、私が新入社員のときに手に取り、今も定期的に読み直す一冊です。どうしてもオススメしたく、ご紹介いたしました。
『苦しかったときの話をしようか』
社会人になり、仕事の現場に出てみると、「弱みを克服しなさい」と言われることもあるかもしれません。
「強みを伸ばすべきか、弱みを克服すべきか」
この悩みには、多くの方が直面することになるでしょう。そんなときにオススメしたいのが本書です。
本書のメッセージを私なりに要約すると、以下の通りです。
- 学校では教えてくれないが、実は人間は、みんな違って、極めて不平等である。そんな我々は、「欲」を本質とし、「競争」を構造とする「資本主義」の世界の中で生きている。
- だからこそ、「周りとの違い=ユニークな特徴=強み」にいち早く気付き、強みを「稼げる職能」にまで育て上げることが大事。自分がナスビかキュウリなのかに早く気付き、ナスビならナスビとして育っていくことに集中すべきである。ナスビはキュウリにはなれないのだから。
弱みに投資しても他人より優れた強みになるわけではない。であれば、徹底的に強みに投資すべき。このような力強い方向性を示してくれます。 ちなみに本書は元々、筆者の娘さんに向けて書かれた手紙だったそうです。その手紙がビジネス書になったわけですが、まるで自分に向けて書かれたかの如く、読み手の心に染みわたってくる一冊です。
読書と実践を繰り返し、しなやかな人生を!
最後に、ここまでご紹介してきた5冊をはじめとした本を読みながら、日々の仕事を1%ずつ改善していくなかで気づいたことをお伝えしたく思います。
それは、「読書と実践を繰り返すと、融通無碍(ゆうずうむげ)な状態になれる」ということです。
融通無碍とは、主に仏教用語として使われる言葉で、物事が自由自在に流れ、障害や制約がない状態を指します。どんな球が飛んできても「どこからでもこい」と構えていられる姿勢と表現できるかもしれません。
新入社員になって早い段階で研鑽を積んでおいて、融通無碍レベルを高めておく。そうすれば、あとは元々掲げていた夢に邁進していくのもよし、早めに仕事を切り上げてプライベートを充実させてもよし、面白そうな仕事の誘いに乗っかってみるのもよし。
融通無碍レベルを上げておけると、選択肢に恵まれた人生をしなやかに過ごしていけるはずです。
私もまだまだ修行の身。粛々と読書と実践を繰り返しながら、融通無碍レベルを上げていければと思います。
(執筆:本山 裕輔)
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