自己肯定感の高い人は、自己中心的でナルシスト?
「自己肯定感を追い求めてはいけない」―――こう主張したとしたら、多くの人は、首をかしげるでしょう。実際、自己肯定感が高い人は、メンタルが強く、幸せであり、健康であることが知られています。逆に、自己肯定感が低いままでは、不安を感じやすく、落ち込みがちで、場合によっては抑うつ症状を発症することもあります。
これらは多くのデータで示されてきているとおり、疑いのない事実です。このような研究結果を踏まえて、アメリカでは、多くの学校が、学生の自己肯定感を高めるための大規模プログラムを導入し、ひとつのムーブメントとなりました。
ところが、自己肯定感には、上記のすばらしいメリットだけでなく、重大な副作用を伴うことが、ロイ・バウメイスターなどの心理学者によって次々と明らかにされたのです。
自己肯定感の高い人は、横柄で、自己中心的な人間になりやすいことが明らかにされました。また、自己肯定感が高い人は、自分のやっていることに酔いしれるナルシスト的な傾向を示すことも指摘されました。さらに、これらの傾向が暴力や攻撃的な言動にまでつながるとまで言われています。
自己評価を下げたくないときに副作用が起きる
なぜこのような副作用が起きるかを説明しましょう。
まず、自己肯定感を高めたい人は、自分への評価が傷つくことを恐れるようになります。そうすると、このような人が、仕事で失敗をしたときに、どのような反応に出るか。自分の評価を傷つけたくないので、自分のことは脇において、環境や周りのせいにするのです。
自己肯定感を追い求めることの副作用が起きる場合
- 自己肯定感を高めたい
- 自分の評価を下げるのが怖い
- 失敗を他者のせいにして、自己肯定感を維持する
読者の中には、上記で使っている自己肯定感は本来の意味ではない、と主張される方もいるかもしれません。
たしかに、本来的には自己肯定感は、どんな状況でも、自分の価値を認め、自分を肯定できること、といえます。「本来の自己肯定感」を高めることができたら、自分の価値が脅かされることはないので、上記のような副作用は伴わないでしょう。
ところが、この「本来の自己肯定感」はなかなか高めるのが難しい。
やはり、人間であれば、失敗したり、恥ずかしい思いをしたら、落ち込むものです。そのようなときに、自分の価値をちゃんと認めるのは難しいのです。
「かりそめの自己肯定感」を追求する人の脆弱なメンタル
そういうわけで、多くの人が、自分はすごいと思い込みたいので、むりやり現実の見方を歪めて、「かりそめの自己肯定感」を高める方向に走ってしまうのです。自分のことを顧みず、周りの人のせいにし、彼らを責め立てるというのはまさにその典型例です。
親、先生や上司にという立場にいる方も、この「かりそめの自己肯定感」の向上に加担している可能性があります。
たとえば、子供、学生、部下の「かりそめの自己肯定感」を傷つけるのを恐れ、過剰に褒めてみたり、ネガティブなフィードバックを控えたりするようになります。このような状況はあまり健全とは言えないでしょう。
「かりそめの自己肯定感」から得られる自信や安心、そして成功は、結局、かりそめなものでしかありません。誰もほめる人がいなくなり、どうにもこうにも逃げられないほどのネガティブな局面が訪れた時、「かりそめの自己肯定感」を追求してきた人のメンタルは当然のことながら、地に落ちてしまいます。
「かりそめの自己肯定感」を追求する人のメンタルは意外にも脆弱です。これが自己肯定感を追い求める人の不幸の結末です。
自己肯定感を高めようと頑張ることは逆効果
では、「かりそめの自己肯定感」の向上に逃げずに、どんな状況でも自分を肯定できる、「本来の自己肯定感」はどうしたら高められるのか。それは無理なのでしょうか。
いいえ、そのようなことはありません。その道筋を与えてくれるのが、心理学者であるクリスティン・ネフが提唱するセルフ・コンパッションです。
セルフ・コンパッションとは、簡単に言えば、親しい友人にやさしく接するように、自分にもやさしく接することです。自分へやさしい思いやりを向けることをセルフ・コンパッションといいます。
ネフの研究によれば、セルフ・コンパッションの高い人は、自己肯定感の高い人と同様のメリットがありつつ、自己肯定感に伴う副作用がないことがわかりました。
一見、自分にやさしくしてしまうと、それこそ、自分の欠点や弱点を歪めて見てしまうのではないかと思われるかもしれません。面白いことに、事実はその逆です。自分にやさしい人ほど、自分の弱点を直視する勇気を持てます。
このことをしっかりと理解する必要があります。自分の弱みや欠点を認めるのはつらいことです。だからこそ、やさしいまなざしで自分に接することで、ありのままの自分を受け入れることができるようになるのです。
自分に対してやさしく接することは、自分を甘やかし、弱みをそのまま放置するということではなりません。
実際、ある研究では、セルフ・コンパッションの高い人は、自分の弱みをむしろ受け入れ、自己を改善するモチベーションが高いことが知られているのです。
状況に左右されないどっしりとした自分を育みたい。誰もが、「本来的な自己肯定感」を高めたいと願っています。ところが、いつの間にか「かりそめの自己肯定感」を追い求め、知らないうちに自己中心的な人間になっているとしたら大変悲しいことです。
しかし、今、述べてきたように、ここから抜け出す考え方と方法があります。
まず、「かりそめの自己肯定感」を追い求める副作用を理解することです。そして、自分を肯定しようと頑張るのではなく、自分にやさしく接すること、すなわちセルフ・コンパションを通じて、結果的に「本来の自己肯定感」を育てる道を歩めばよいのです。
(執筆:芦澤 公二)
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現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
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(2026/01/19更新)
【著者プロフィール】
日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。
ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。
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