数年前、友人の娘さんご夫婦の間にお孫さんが生まれた。以降、その成長のエピソードをよく聞かせてもらっている。

わたしには子どもを産む予定はほぼないので、小さな子どものリアルな成長過程は聞いていて本当に楽しい。

 

赤ちゃんはどんなふうに言葉とかを覚えていくんだろう?だとか、

保育園とかに通い始めて一気に世界が広がる頃に、どんな刺激を受けて、人間関係なんかはどんなふうに学んでいくんだろう?だとか。

 

地元に帰った時に従兄弟の子どもと接して一緒に遊んで、「ああ、変わってきたなあ」と思うことはあるが、それは必ずしも「日々」を反映したものではない。

だから、そのお孫ちゃんの日々の細かいエピソードは、とても興味深いのだ。

 

そしてお孫ちゃんを産んだ娘さんのこともよく知っているが、母親の豪快な性格を受け継いだのかなんなのか。このお孫ちゃんのエピソードは爆笑モノに溢れている。

 

一方で、お孫ちゃんの振る舞いや、彼が大人に浴びせる質問には、めちゃくちゃ考えさせられるものがある。

感覚から発せられるゆえ、深すぎるのだ。

めっちゃ感性の鋭い、賢い子だと思う。

このお孫ちゃん=彼からわたしは学ばせてもらっている。

 

「令和のうんこ座り」はこれだ!

「うんこ座り」といったら、みなさんどんな格好を想像するだろう?

だいたい和式便所とか、あるいは野グソできばってるとき、みたいな光景が思いつくんじゃなかろうか。

 

つまり、お尻を地面に可能な限り近いところに近づける。両手は便がつかないように衣服をたくし上げた状態を維持するのに使われる。

よって全てを支えるには太ももの筋肉が試される。

 

しかし、先日友人と話していて、

「『令和のうんこ座り』っていう面白すぎる写真が娘から送られてきたのよ〜!」

ということで、LINEで写真を転送してくれたものを見た。

 

とにかくひょうきんなエピソードを多数残しているお孫ちゃん。

友人が爆笑するくらいだから、何かがクソ面白いのかもしれないのだろうが、わたしは一瞬「?」となった。

 

ちっちゃい子どもの「うんこ座り」の写真なんて、見た瞬間笑うものなんじゃないか?

しかし、私は全てに気づいて笑うまでに、だいぶ時間を要してしまったのである。

つまり、ネタがわかるまで時間がかかってしまったのである(もちろん本人はネタでやっているわけではないのだろうが)。

しかし、ネタに気づくと、趣深くて仕方がない。

 

「あ、この写真見て、わたしひとつ賢くなったわ」

「これが『令和』という新時代なのか!」

とすら思い、爆笑と同時に、心の中でめちゃくちゃ拍手した。

 

では、その写真についてここで描写していこう(さすがに掲載はできないし)。

まず、彼(お孫ちゃん)の様子は、最初は

「え、お腹痛くてかがんでるの?」

というふうにしか見えない。

 

昔のうんこ座りに比べれば、ケツの位置が圧倒的に高いのだ。

なんせ、膝は90度くらいしか曲がっていない。野グソは無理な角度だ。

なので、

「お腹痛いの?」

というふうにしか見えなかった。

 

しかし。

それが令和の子どもが描く、ありのままの「うんこ座り」なのだ。

 

いまや和式便所など、遭遇する方が少ないのがいまの子どもだ。

そう、90度くらいの膝の曲がり具合というのは、洋式便所の角度なのだ。

若干内股なのはお孫ちゃんの個性かもしれないが、いまや男性も座って小便をする人は少なくない。

そりゃ、内股気味になる人もいることだろう。

 

そして両手の使い方も「令和」だった。

左の手のひらを開き、彼の目線はそこに集中している。右手は人差し指を立てている。

はて、これは何を表現しているのだろうか?

 

実は、昭和生まれの人もやっていることである。

そう、便座に腰掛け、スマホを見ているのだ。

膝を90度程度に折り曲げて洋式便所に座り、若干前屈みでスマホを見ながら用を足す。

まさに令和の光景である。

 

それを4歳の子供が「うんこ座り」として認識・再現しているのである。

そりゃびっくりするだろ。この解釈力というか表現力というか、やばくないか?

 

昭和生まれにはかなりの衝撃である。でもいまや、自分たちも、ときに無意識にやっているのだ。

飲みすぎて腹痛がおさまらない朝なんかには、多くの人が経験しているのではないだろうか。

 

昔の話になるがわたしの父も勤め人だった頃は朝トイレにこもる時間が長く、その間に漫画を読んでいたものだ。

その漫画が、いまはスマホというわけだ。

他人事ではない風景だけに、彼の表現力に、えげつなさすら感じた。

 

3歳のときに周囲を惑わせた「鋭い質問」

さて、友人からお孫ちゃんのエピソードをたくさん聞かせてもらって、なかでもいちばん印象に残っているものがある。

1年くらい前、お孫ちゃんが3歳のときのことだ。

なかば相談のような形で聞かせてもらった話である。「さやかちゃんならどう答える?」と。

 

友人は私のことを「頭がいい人」と思ってくれているのだが、しかしこればかりは無理な相談だった。

というのは、ある時そのお孫ちゃんが、

「虫眼鏡はあるのに、なんで魚眼鏡はないの?」

という質問を発したのだ。

 

さて、この質問に答えられる大人はいるだろうか?

それも、「3歳の子どもが納得する答え」だ。

恥ずかしながら、わたしはその答えを持ち合わせていない。

もちろんいろいろ調べたが、ネット上に3歳児が納得する答えなんてあるわけがない。

 

せいぜい「虫眼鏡」という名前の由来がわかる程度だろう。

虫のような小さいものを見る眼鏡という話だ。

 

カメラには「魚眼レンズ」というものがあるが、それは理屈が違う。

いずれにせよ、この質問には答えられないままでいる。

誤魔化しても質問の無限ループに陥ることが目に見えているからだ。

 

言語を習得していることが真の賢さなのか?

さて、わたしがだいぶ前から感じていたことがある。

大人になればなるほど、言葉の使い方はうまくなっていく。

角を立てないためだとかそういう方向での言い回し、失礼のないメールの書き方。

そんなことで、さらに語彙も増えていく。

 

語彙が増えるのは良いことだ。

しかしそれが「上級コミュニケーションの作法」であるかのように無機質に伝授されていくことには違和感がある。

 

最近SNS上で「社会人になったらこれ覚えとけ!」と、要は日常会話とビジネス文書、あるいは電話ではこう言い方を変えるべき、という一覧表がよく投稿されているのを見る。

それがバズったりするのを不思議な目で見ている。

 

まあ、そりゃあ、社会人になれば最低限のマナーはある。

学生気分では困る。

「こないだはエモい話あざっした〜」

とか書かれた日にゃあ困る。

 

でも、ビジネスマナーとしてのメールの書き方、みたいなのが、単なる「暗記モノ」に堕してしまっているとしたら、それって案外、深刻なことなんじゃないだろうか。

 

言葉を発するというのは、人類が唯一得た表現方法といわれている。

しかし「言葉狩り」もそうだが、最近その運用がとち狂っているんじゃないか?とちょっと思ったのだ。

 

「魚眼鏡」というワード。

そんなにおかしい言葉だろうか?

聞かされた瞬間、「そんな日本語ねーよ」と反応してしまうだろうか?

 

わたしはならなかった。

「そんなもん造語やないか」

となるだろうか?

 

いや、というか、造語というのにはそもそも、本来の意味がある。

「さかな」と「めがね」。

3歳児でも知っている、この2つの単語が組み合わさっただけの言葉。

 

しかし、その「魚眼鏡」という言葉が大人をこうも悩ませ、このお孫ちゃんに「賢い発想をする子だ!」という念を抱かせるのである。

 

「ここはこういう言葉を使わなきゃいけないんだよ」と指導しているみなさん。

「なぜですか?」と正面から問われて、新入社員が納得する答えを返せるだろうか?

単なる「昔からそうだから」「とりあえず記憶しとけ。」

もしそうであるならば、わたしにはブルシットジョブの匂いさえする。

 

そんな指導をする人間も、所詮ちっぽけだったりするでしょ?

もっと言えば、動物の世界。

彼らのコミュニケーションは非常にシンプルだ。

 

例えば鳥。

彼らは鳴き声で相手を認識するが、その鳴き声にそんなに多くのパターンがあるわけではないとわたしたちは感じているだろう。

 

もちろん、人間とは認識できる周波数の範囲が違うのかな、とは思うが、そんなもんじゃない。

鳥がひとつの鳴き声で伝える情報は自分の存在や個性だけではなく、声を聞いた相手は鳴き声の持ち主の健康状態も把握できる、という話を聞いたことがある。

 

ずいぶん合理的だし、人間とどっちがコミュ力高いんだろうか。

 

ハチやアリの組織力も凄まじいものである。

嗅覚のようなものが桁違いというのはあるのだろうが、しかし彼らは人間なんかに比べてはるかな小さな脳で様々な情報を受け取り、処理し、自分の行動に反映している。

そうして巨大組織まで作り上げるのだ。

 

海外に出てみ?どんな偉そうな人だって突然ちっぽけな存在になることがある。

言葉がわからないとき、ジェスチャーも交えてなんとかしようとするじゃないか。

そこには恥もクソもマナーもない。

単語を間違えてるとかそんなこと、忘却の彼方だ。

 

「言葉狩り」なんて、脳をほとんど動かさなくてもできる。

体調を崩しがちなわたしにとっては、そんなことに勤しむ労力が羨ましいくらいだ。

 

 

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【プロフィール】

著者:清水 沙矢香

北九州市出身。京都大学理学部卒業後、TBSでおもに報道記者として社会部・経済部で勤務、その後フリー。
かたわらでサックスプレイヤー。バンドや自ら率いるユニット、ソロなどで活動。ほかには酒と横浜DeNAベイスターズが好き。

Twitter:@M6Sayaka

Facebook:https://www.facebook.com/shimizu.sayaka/

Photo:Markus Winkler